共焦点画像強調のためのデコンボリューション革命
先進アルゴリズムとハードウエア向上の組み合わせにより、光学共焦点顕微鏡のデコンボリューションの評価が高まっている。
画像デコンボリューションとは、ブラー除去やコントラスト・分解能改善のために設計された画像処理技術である。歴史的に見て、その応用は広視野画像の強調に限られ、共焦点顕微鏡では不要と考えられてきた。デコンボリューションされたデータは解釈が難しく、ときには信頼に欠けるとされた。しかしながら現在では、デコンボリューションはパワフルで多用途な研究ツールと認識されており、しばしば共焦点プロトコールの一部となっている。メジャーな顕微鏡メーカーのすべてが、共焦点画像の分解能向上のためのデコンボリューションの使用を推進している。
ただ、デコンボリューションを有効に活用するためには、手法と、関連するアーティファクトに注意を向ける必要がある。
デコンボリューションと分解能
顕微鏡においてデコンボリューションは、アルゴリズムの使用を参照してシグナルノイズ比(SNR)と分解能を向上させる(この文脈における「分解能」とは2つの対象物がお互いに存在し、個々の存在として光学的に識別できる最小距離に関連する)。通常、焦点外の光を元の位置に再割り当てすることで実行する。
顕微鏡画像の分解能は通常、小さい対象物(50 ~ 100nmの蛍光ビーズなど)の3次元強度測定である点拡がり関数(PSF)の半値全幅(FWHM)として測定される。デコンボリューション処理の効率を評価するために、元の画像またはデコンボリューションした画像におけるPSFのFWHM測定を使うことは可能だ。対象物は数学的に割り出され、分解能変化を決定するための古典的な手法であるレイリー基準に基づいて分類される。ところが、PSFにおけるFWHM測定はデコンボリューション効率の評価を完全に説明できるわけではない。
共焦点顕微鏡システムの分解能は、しばしばFWHMによって定義されるが、特に処理された画像に関してFWHMは分解能とは異なる。FWHMが定義するように観測可能な像においてブラーを軽減できるが、分解能は向上しないかもしれない。デコンボリューション用の特定の手法やアルゴリズムに使われるパラメータは、計測可能なFWHMと全画像分解能の両方に影響を与える。細胞の画像でよく描かれるようなもつれたフィラメントではなく、ビーズのように小さく明確に定義された対象物なら、いくつかの手法はよりよく実行する。
研究の場では、デコンボリューションは2つの目的で使われる。画像品質を向上させるためと、ブラーで見えないデータを解決するためだ。しかし、もしデコンボリューションが常に分解能を向上したのなら、それは必要なのだろうか。
顕微鏡システムが作る画像には、描写された対象物そのものと、描写するPSFの両方があるため、対象物の周囲にはブラーが描写されるだろう。光学的・電子的システムのノイズはブラーに寄与し、さらにコントラストを下げる。デコンボリューションは数学的に「コンボリューション」、すなわちシステムノイズによるPSFと実際の対象物の混合を元に戻す。こうして、描写する対象物を元に復元する。
ここで画像処理の根本的な問題が浮上する。元の画像は本質的なのだろうか。もしくは、デコンボリューションされた画像は標本をよりよく描写するのだろうか。コンボリューションを考えれば、処理された画像は、元画像より実際の対象物を詳細に描写していると主張できる。ディテールの付加と画像品質の向上は、デコンボリューションが今や多くのイメージング様式で当たり前となっている理由だ。
先進的なデコンボリューションアルゴリズムと最近のイメージングシステムにおける感受性の向上によって、科学者は以前よりはるかに良い顕微鏡画像を取得できる。近年、デコンボリューションは長時間の画像処理に関連する障壁を克服している。オリンパス社のcellSensソフトウエアはGPUベースのデコンボリューションを実装しており、7倍高速な処理を実現している。現在の画像復元アルゴリズムはアーティファクトの発生も低くしており、デコンボリューションした画像は10年前より信頼できて標本を描写できるものとしている。その結果、よりよく見えるだけでなく、現象や構造をより正確に描写する。
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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/05/036bio.pdf