高輝度LED、狙いは新興の自動車照明アプリケーション

ジィ・バードワジ、オレグ・シェキン

現在、輝度2億ニットに近づきつつある蛍光体変換LEDの目標アプリケーションは 、低コストで集中照明を供給することにとどまらず 、情報を伝達する動的ピクセル照明も可能である 。

レーザダイオードは、最初、スポット照明範囲の拡大として、自動車、軍および監視アプリケーションで採用された。しかしデジタル照明の普及がますます進むにつれて、集中照明だけでなく、情報を伝達するアプリケーションの需要が増加している。結果として、既存および新興アプリケーション向けにローコストLED技術の輝度向上が新たな焦点になっている。
  数年前、生産されている最高輝度の蛍光体変換LED(pcLED)光源は、最高1億nits(MNitsは100万nitsまたはメガnits、1nit=1cd/m2)だった。現在、自動車ヘッドライトに導入されている商品の性能は、100MNits(図1)を上回り、市場に出てくる最新の光源は200MNitsに近づいている。
 輝度向上を促進するアプリケーションは、自動車ハイビーム距離拡張およびヘッドライト前景プロジェクションである。ハイビームレンジ拡張(HBRE)では>500MNitsが求められているが、一方前景プロジェクション(FGP)オーバーレイでは、100 ~ 200MNitsが必要である。pcLEDがこのような輝度要件を達成するとしても、より低いコスト、高効率、自動車動作温度で長寿命を提供する量産品が必要になる。ハイパワーレーザダイオードの安全上の問題がない高輝度LEDは、材料とパッケージングの進歩によりこうした目標を達成する可能性がある。

図1

図1 蛍光体変換発光ダイオード(pcLED)とレーザの輝度 vs.ルーメン出力を示している 。

アプリケーションによる輝度目標

製品pcLEDは現在、輝度範囲は最高200MNitsである。これは最大の市場セグメントニーズを完全に満たしている。一般照明、ディスプレイバックライト、自動車の車内および外部フロント、信号およびリア照明がこのセグメントに含まれる。
 自動車ヘッドライトのデジタル化を可能にしたのはLEDである、その結果、先進的ドライビングビーム(ADB)のようなまったく新しい機能が実現した。ADBでは、輝度数MNitsのピクセルLEDアレイが、道路に画像を結び、センサからのフィードバック(道路上あるいは近くの車輌、サイン、歩行者や他の障害物)に基づいて、個々のピクセルがスイッチを切ったり減光したりして、一連の機能を実現する。これに含まれる機能は、他の道路ユーザーへのギラつき低減、歩行者、サインおよび障害物を目立たせる能力、道路のカーブに車が近づいたときの動的ビームの操作である(図2)。
 安全運転を拡大するために、pcLEDは、道路だけでなく、車線区分線あるいは警告など、FGPオーバーレイ情報も提供できる。FGPには、2つの明確なアプリケーションがある。1)100MNitsを必要とするダイレクトLEDイメージング、および2)MEMSマイクロミラーアレイのLED照明、例えば100万ピクセル程度のテキサス・インスツルメンツ社のデジタル・マイクロミラー・デバイス(TI DMD)―これは200MNits程度を必要とする(1)。
 HBREアプリケーションは、高速ハイウエイドライビングをより重視している。ハイウェイの直線道路において車輌は法的限界である600mまでしか前方を照らすことができないが、細いスポットビームを生み出すために>500MNitsを必要とする。
 性能目標として、要求の全範囲を満たすには、100、200、さらには500MNitsを達成するLEDが必要になる。つまり1mm(遠距離ではランバー 2シアン放射パターンを、近距離では発光面にわたる均一輝度を想定)の発光領域(LEA)に最大1750lm/ダイとなる。1A/mm2で350lmのクラス最高のハイパワー LEDのベースライン性能であるなら、LEAルーメンで5倍増が必要になる。

図2

図2 ピクセルLEDは、ハイビームのギラつきを低減(a)し(画像提供:ダイムラーベンツ社)、警告サインなどの前景プロジェクション(FGP)オーバーレイ情報(b)を提供できる。(画像提供:ルミレッズ社)また、ハイビーム照射の範囲を拡大(c)できる。(画像提供:BMW社)

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/01/lfwj1901ft_non-laser.pdf