ペロブスカイトPVの商用展開促進にコラボレーションが有効

デイビッド・フォルガーチ

新製品開発プロセスにおける業界パートナーやクライアントとの関わりが、ペロブスカイトPV技術を研究室から商用および産業アプリケーションに展開する上で直接的な利益になる。

10年足らずで、ペロブスカイト太陽光発電は、科学界による単なる誇大広告的な技術から、商用実装のための強力な候補になった。近年、数十のスタートアップ企業が現れ、この技術を研究室から現実的なアプリケーションにしようという目標を共有している。
 さまざまな企業が、太陽電池製造に使用する方法、ビジネスモデルの両方で、多様なアプローチを研究している。これらの要素間には固有の関係が存在する。選択された方法は、可能性のある材料、デバイス構造、性能、CAPEXやOPEXに関わるコストに直接影響するからである。
 これらのパラメータの組合せが、所定の技術がPV市場浸透の最高の可能性がどこにあるかを決める。市場は、現状では中国メーカーが供給するローコスト結晶シリコン電池が優位を占めている。これは、供給過剰、価格押し下げによるもので、すでにヨーロッパの多くのPV企業を破産に押しやっている。
 近年、初代シリコンPV製品の価格下落が、テルル化カドミウム(CdTe)や銅・インジウム・ガリウム・セレン化合物材料(CIGS)太陽電池ベースの商用薄膜PVデバイスの市場シェア低下の原因となっている(1)。かくして、現場は非常に競争的であり、新興のPVに関心を持つほとんどの投資家は、そのような背景からリスク嫌いである。したがって、ペロブスカイトのスタートアップは、技術の商用化を対処する方途を決めるにあたっては、こうした要素を頭に入れておくことで重要である。

シリコンを打ち負かすか対等か

スイス連邦材料試験研究所(EMPA)のフランク・ニュエッシュ博士(Frank Nüesch)は、スイス、ベルンで開催されたペロブスカイト関係者の会議で、そのようなビジネスエコシステムでペロブスカイトPVの市場導入で採るべき可能な3つのアプローチに言及した。「シリコンと結びつくか、併存するか、シリコンを打ち負かすか、いずれかである」(2)。
 技術的な視点からは、最後の選択肢は、新規の製品には非常に厳しいものである。ペロブスカイト太陽電池の効率は、実験室スケールで商用確定した他の薄膜PV電池を凌駕する点まで急上昇したが、まだ完全に理解されていない材料物理学の基本的な点が極めて多い。
 恐らく、最も重要な点はペロブスカイト太陽電池の寿命予測の理解である、この点はほとんどの結晶シリコン太陽モジュールプロバイダーが提供する25年保証の産業基準に太刀打ちしなければならない。さらに、第一世代PVの確立された供給と価値連鎖は、新興技術を競争的に不利にする。
 これにより、2つの実現可能な選択肢が残る。1つは、ペロブスカイト材料によってもたらされる利点を既存のシリコン技術と組み合わせ、多接合(タンデム)構造を造ること(3)。シリコン太陽電池を基板に使用すると、ペロブスカイトデバイスをその上に直接成長させることができる。そうすることで理論的に最大効率の太陽電池が実現し、所定の表面へのそのような導入によって取り込めるエネルギーが増える。
 太陽電池製造に直接関わるコストがわずかであり、一般的な屋根あるいは実用規模の導入の総費用の一部が、着実に下降していることを考えると、ハイブリッドオプションは特に興味深い。英オックスフォード・フォトボルテイクス社(Oxford Photovoltaics)は、このアプローチを追求することを決定している。これにより同社は、確立された技術に効果的に便乗することができる。
 その考えは簡単そうに聞こえるが、ハイブリッドルートを市場に出す前に対処すべき大きな課題がある。モノリシックタンデム太陽電池では、PVデバイス全体を構成する2つのサブセルは、性能がほぼ均等でなければならない。そうでなければ、総出力は、弱いほうの値に抑えられることになる。
 そのようなタンデム太陽電池の設計と製造の最適化には、複雑な計算法と優れたエンジニアリングが必要になる。しかし実際、オックスフォード・フォトボルテイクス社のペロブスカイト/シリコンタンデム太陽電池は、先頃、単一接合太陽電池の効率世界記録26.7%を上回り、27.3%の効率を達成した(4)。この初の性能は傑出している、とはいえ、実試験では、稼働寿命全体でそれがどのように推移するかを見ることになる。
 これまでのところ、ペロブスカイト太陽電池は、シリコンベースのシステムよりも寿命が短い、したがって、全体的な太陽電池スタックの安定性へ向けて、モノリシックタンデムアプローチの期待が極めて高い。ペロブスカイトサブセルの時間経過に伴う劣化が導入全体の性能を制約し、ペロブスカイト/シリコンタンデムアプローチの商用参入を先送りにすることが考えられる。
 他方のオプションは、シリコン太陽電池の性能が十分に発揮されない市場セグメントを狙うことである。結晶シリコンは、間接バンドギャップ材料である、これは入力フォトンがフォノンと相互作用して吸収されるという意味である。この要件のために、フォトンが微光条件で収集される可能性は、直接バンドギャップ材料と比べるとケタ違いに少ない。
 また、シリコン太陽電池の最適厚さは100μm程度であり、これはペロブスカイトPVの最適厚さ300 ~ 1000nmと比べるとケタ違いに大きい(5)。ペロブスカイトの柔軟性と大幅に強化された吸収特性により、そのような超薄膜は微光条件での性能は良好である、これらは結晶シリコンと比較して優れた2つの特徴である。これらの特徴を一定のアプリケーションで利用することは、したがってペロブスカイトに必要とされる市場での競争優位性を付与できる。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/01/lfwj1901ft_photovoltaics.pdf