有機ELに続く次世代のディスプレイ、マイクロLEDディスプレイの製造を促進するエキシマレーザ技術

ラルフ・デルムダール

高速微細加工を可能にする出力と精度。

マイクロLED技術をベースにした新しいディスプレイは、高い彩度と、広い視野角、高速な応答時間、高輝度、低消費電力といった、多くメリットをもたらすと期待されている。しかし、マイクロLEDディスプレイを製造するための技術や装置は、市場拡大には未だ少し遠い状態にあり、その製造問題は主に、スループット、歩留まり、生産性に関連している。
 マイクロLEDディスプレイは、屋外用超大型LEDディスプレイのミニチュア版と考えることができる。実際、マイクロLEDディスプレイは、大型ディスプレイに使われるLEDと比べて厚みやサイズが約100分の1しかない、非常に小さなLEDのアレイで構成されている。既存の液晶ディスプレイ(LCD)や有機EL(OLED)技術と比べると、マイクロLEDディスプレイは消費電力が低く、前者の10%、後者の50%しか電力を消費しない。そのため、マイクロLEDディスプレイの短期的将来の適用先は、増加傾向にあるスマートウォッチに必要なウェアラブルディスプレイや、ソニーの新しい超高精細(UHD:Ultra High Definition)壁掛けディスプレイのような、対角が65インチ以上の大型テレビが想定されている。
 LCDとOLEDの市場分野で活躍する多くのディスプレイメーカーが、現在さまざまなレーザ加工を利用して、極薄かつ軽量で、かつてないほどの性能とピクセル解像度を備えた、リジッドまたはフレキシブルなディスプレイを製造している。そのレーザ加工の手法としては、基板や有機薄膜の穴あけおよび切断、ピクセルやタッチスクリーン構造の微細なパターニング、エキシマレーザによるアニーリングや基板分離のためのリフトオフのほか、溶接やマーキングなどがある。
 エキシマレーザは、波長が最も短く、出力が最も高いという、他にはない性質を併せ持つことから、LCDとOLEDの両方の分野でモバイルディスプレイ製造の技術イノベーションの最先端を担っている。波長308nmのエキシマレーザによるラインビーム光学システムが、高解像度のモバイルディスプレイに必要な、低温ポリシリコン(LTPS:Low Temperature Polysilicon)薄膜の製造に用いられている。また、フレキシブルOLEDの製造ラインにおいては、従来のリジッドなディスプレイからガラス基板を安全に分離するためにも使用されている。

エキシマレーザリフトオフによるマイクロLED薄膜の製造

同様に、マイクロLEDディスプレイの加工にも、エキシマレーザ技術を適用することによるメリットがある。マイクロLEDは、 それよりも大 きなLEDと同様に、サファイアウエハ上に窒化ガリウム(GaN)薄膜を成長させることによって製造される。デバイスの高さを抑えて、デバイスの効率を高めるために、GaNベースのマイクロLED層は、導電性キャリア材料の上に転写される。先ほどの308nmよりもさらに短い248nmという短波長のレーザリフトオフ(LLO:Laser Lift-Off)によって、GaN中間層が最上部から10nmの深さにわたって分解されることにより、一般的に厚さ0.8μmのサファイアウエハが剥離される(図 1)。

図 1 

図 1 エキシマレーザリフトオフの原理。波長248nmのビームは、GaNによって吸収される。サファイア基板は基本的に、エキシマレーザビームを透過させる。1J/cm2以下のレーザフルーエンスで、GaN中間層は金属ガリウムと窒素ガスに分解され、サファイアウエハが剥離される。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2019/01/lfwj1901ft_microLED.pdf