次世代ホログラフィを実現する“すべての波長”

ウルリッヒ・エイスマン、ティム・パシュコルバーグ、ハラルド・ロスマイアー

半導体レーザに関する技術は日々目覚ましい発展を続けている。技術仕様と性能が継続的に進化するにつれてこれら半導体レーザはホログラフィ用途で使用されてきた従来型のレーザ光源に取って代わりつつある。本稿ではホログラフィ技術に焦点をあてつつ最新世代の直接発振半導体レーザおよび周波数変換半導体レーザの今日の可能性の概要について説明する。

DennisGáborが1940年代の終わりに電子顕微鏡の解像度を改善しようと奮闘していたとき、彼は恐らく自身の仕事が後世にどのような影響を与えるのか知らなかったであろう。その過程において彼は物体の完全な3次元画像を表示することを可能にするホログラフィック法を発見した。発展を続けたホログラフィ技術はレーザが発明されるとともに大学の研究室を離れ、数多くの産業向けアプリケーションにおいて数十億ドル規模の事業へと生まれ変わった歴史をもつ。
 今日におけるホログラフィの実用化は主にクレジットカード、銀行紙幣、パスポート、医療ホログラフィなど、よく知られたセキュリティホログラムの分野で顕著である。透過型または反射型の回折格子のような光学部品はレーザまたは分光計において多数のメリットと用途を見出す。分布帰還型(DFB)および分布ブラッグ反射型(DBR)半導体レーザまたはファイバブラッググレーティングなどこれらの構成技術要素を応用したマイクロインテグレーションは過去から一般的に行われてきた。近い将来には拡張現実(AR)装置の消費者市場導入により、この分野の著しい成長が予想される。
 光学ホログラフィの基本的な原理は当初に発明されて以来大きく変化していない(図1)。ビームスプリッタを用いてレーザビームを2つの光軸に分割することで物体に照射する照明ビームと、記録媒体(典型的には写真用プレート)に照射する参照ビームとして直接的に供給される。参照光は物体によって反射された照明光と干渉し、その干渉パターンは感光基板に記録される。この手順の後、基板を照明して物体の3次元画像を生成することができる。
 1960年代に発明されて以来、レーザ技術の分野は目覚ましい進歩を続けてきた。ガスレーザはホログラフィ用に広く使用されているがこれらの光源に代わる新しい世代のワットクラスの半導体レーザが利用できるようになった。半導体レーザの主な利点は、ほぼすべての波長での利用が可能であることがあげられる。標準的な半導体レーザは赤外線(IR)から可視光(VIS)まで幅広い波長レンジをカバーしている。またこの波長レンジは周波数変換技術(1)を採用することによって、紫外(UV)波長をはるかに超えて拡張することが可能である。これらはトプティカ社の波長可変半導体レーザの出力パワースペクトルを示す図2により詳細に示されている。発振可能なレンジは深紫外DUV(190nm)から中赤外MIR(3500nm)の波長範囲に達し、数Wまでの出力レベルを有する。これには、表1に示された通り450nm、530nm、650nmの可視「RGB」波長が含まれている。非常に高出力が要求されるアプリケーションではTA半導体ゲインチップを光ファイバ増幅器の替わりに用いることが可能である。最も顕著な例として波長589nmで22Wの出力を提供するトプティカ社のSodiumStarレーザがあり、今日における最高クラス望遠鏡用の人工ガイド星アプリケーションに用いられている(2)。
 干渉パターンの解像度は最先端の電子デバイスで使用される、より小さなリソグラフィ構造体を形成するために重要である。これには従来よりも短いレーザ波長が必須となる。 深紫外波長領域にアクセスするためにガスレーザはホログラフィおよび(インコヒーレント)リソグラフィに広く用いられるいくつかの「一般的な」波長を有している。上記で指摘された通り、半導体レーザは表1に示されるこれらの波長のすべてで利用可能である。装置ハンドリングの容易さ、優れたビームパラメータ、および低い運用コストのため以前はガスレーザが主流だったアプリケーションへの道が半導体レーザに大きく開かれる可能性を有している。たとえば407nmで発光するクリプトンイオンレーザはわずか数年間で405nm半導体レーザへの置き換えが劇的に進められている。これには直接発振の半導体レーザを使用するか、ワットクラスの高出力が必要な場合には強力で安定的な狭線幅IRレーザを第二高調波発生することによって実現される。さらに紫外波長領域は別の段階の周波数変換技術を用いることによって利用可能となる。広く用いられている266nmUV波長はトプティカ社の画期的なTop Wave製品シリーズによって提供され、ほぼ回折限界のビーム品質(M2 <1.2、典型値)および300mWのコヒーレントな出力を提供することが可能である。
 ある特定の光半導体デバイスの製造プロセスでは材料内部に格子状ホログラフィック構造を生成する必要がある。この製造プロセスには通常、244nmに周波数変換されたガスレーザまたは半導体レーザが使用される。5倍波発生されたパルスNd:YAGレーザにおける一般的な213nmの波長は、以下に示すすべての機能を含む高出力CW動作半導体レーザで置換えることができる。より短波長を志向する先端 的で重要な技術的進歩は周波数倍化媒体としてのKBBF結晶の登場によりさらに加速する。この技術によりエキシマ レーザの代わりに半導体レーザを用いて(3)、波長193nmにおけるホログラフィプロセスを可能にし、コヒーレンス長は数百mのオーダーを実現する。
 DLC proはトプティカ社の半導体レーザを安定的に制御するためのキーとなる重要な要素である。リモートアクセスおよびリモート制御のような典型的なデジタル機能が付加されたこと以 外にも基本的な制御エレクトロニクス 性能が大幅に改善することによりコヒーレンス長を伸長し、強度ノイズ(RIN)を大幅に減少することを実現した(4)。さらに下記のインテリジェントな機能が実装されている。

図 1

図 1 ホログラムを作成するにはレーザビームを2つの光軸に分割する。照明ビームは対象物体を照射する。物体からの反射光(物体光)は写真板に入射し、レーザ光の第2の部分(参照光)と干渉してその干渉パターンを記録する。

図2

図2 トプティカ社の半導体レーザは190nm〜3500nmに達する超広帯域波長範囲をカバーしている。低出力光源(DL)は、光増幅器(TA)により高出力化され第二高調波(SHG)または第四高調波(FHG)を発生する。

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出典元
http://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/09/p34-36_38_ft_toptica.pdf