光散乱による障壁の克服を目指す3D生体モニタリングプロジェクト

米国立科学財団(NSF)のコンピュータ・情報科学・情報工学局(CISE)が最大レベル(1000万ドル)の資金提供を実施した新プロジェクトの目的は、皮膚直下の「生きた生物学」を可視化できるin vivo(生体内)の3Dイメージングである。
 このプロジェクトを牽引するのは米ライス大(Rice University)だ。およそ100種類の異なる健康状態の評価のために、現在求められる生検や血液検査の必要性の排除を目指す。これを成し遂げるために学際的なチームは、「ウェアラブル端末、ポイントオブケア、臨床診断、救急車、手術室などで使えるミニチュアな光ベースの顕微鏡」を製作しようとしていると、このグラントの研究責任者である同大のアシュトス・セイバーウォール教授(Ashutosh Sabharwal)は述べる。このグラントには、ライス大、米カーネギーメロン大(Carnegie Mellon)、米ハーバード大(Harvard)、MIT、米コーネル大(Cornell)からの11人の共同研究者が参加している。

スキャッタログラフィ

このチームの大きな目標は、軟組織における光散乱を克服することだ。軟組織は、光学技術をしばらくの間、医療イメージングの周辺機器として遠ざけていた。チームは、散乱光の光路をリバースエンジニアリングするために、数学的なアルゴリズム、カメラ設計、イメージングセンサを組み合わせて活用することを計画している。
 ライス大の共同研究者であるアショック・ヴィーララガヴァン准教授(Ashok Veeraraghavan)は、このプロジェクトに自身の計算描画の専門知識を提供する考えだ。ヴィーララガヴァン准教授は、FlatScope(レンズなし、広視野、指先サイズのフラットな蛍光顕微鏡で、数mm3ボリュームでμm解像度を作る)の先駆的な開発を支援してきた。彼は、地球科学者が地球深部を描画するために地震波を利用するリバースエンジニアリング技術のタイプを使う計画を描いた。しかし、「われわれの研究はいくつかの点でさらに複雑である。なぜなら、わずか数mmの組織で起きる光散乱の量は、ほかの問題をはるかに凌ぐからだ」と彼は述べる。FlatScopeでは、センサデータのシングルフレームから高解像度の3D画像を再構築するために、専門のアルゴリズムが使われている(1)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/07/wnbio_scatterography.pdf