半導体レーザシステムをあらゆる出力でも低温に維持する

ジョン・ウォレス

半導体レーザが最適に機能するのは低温時だ。異なるレーザ出力に対して、それぞれ最適となる冷却アプローチは異なる。

高出力レーザのほぼすべては、温度仕様内で動作させるために積極的に冷却しなければならない。一方、多くの低出力レーザは、いくつかのヒートシンクまたは自然発生するエアフローのどちらかによって、自然に冷却される。
半導体レーザ(LD)は特殊であり、その小さなサイズが意味するものは、低出力エミッタでも熟慮された冷却構造が必要であるということだ。
 すべてのLDには、熱伝導するマウント、通常は金属にマウントされた、アクティブに放射する半導体チップがある。その結果、すべてのLDはその中心で伝導的に冷却される。最も低出力のLD(そして多くのパルスLD)では、それ自身の伝導的冷却(小型デバイスではしばしば、対流による空冷がある)で十分である。出力がやや上がると、LDに熱電冷却器(TEC)の追加が必要になるだろう。材料加工で使われるダイオードバーやダイオードアレイで作られるような、最大級の高出力に対しては、水冷が必須である。
 LDに必要な冷却のタイプや複雑性は、アプリケーションに大きく依存する。例に挙げると、電気通信のLDには安定性のために組込み型TECが必要になるかもしれないし、ビーム干渉検知に使われる低出力LDには特別必要なものはない。LDの冷却が十分でないと、ビーム質の低下、中心波長からの過剰なシフト、そして最悪の場合にはLDの壊滅的な不具合をもたらしうる。
 現在の多くのLDと冷却装置の製造者が生産するLD冷却ハードウエアの多様性はいうまでもない。短い記事では、利用可能な製品のごく一部しか紹介できないという事実もある。それでも本稿では、利用できるサンプルをわずかだが紹介したい。

熱電冷却

前述したように、最も低出力のLD(数mW以下)では、熱的に絶縁された環境にある場合を除いて、冷却について特に考える必要はない。レーザ出力が数十から数百mWになると、特にビーム質の高い制御が求められるとき、冷却が重要になる。この場合は、ヒートシンク設計がよい。10Wオーダーで放射する小型ダイオード源の冷却には、TECが小型で効率よく、可動部がない冷却となりうる(オプションとし
て小型ファンがある)。
 米ソーラボ社(Thorlabs)は、異なるピン配列と、光学出力が2Wまでの単放射ダイオードを対象にしたTECLDマウントのシリーズ(LDM21)を製造する。これらは電気的に制御され、出力ビームのコリメーションのオプションが付いた完全マウントである。より高出力なTECバージョン(LDM56)は8WまでのLD出力に対応し、要望に応じて曲面マウントに取り付けできる。この会社のTEC LDマウントのすべては、標準的なネジ付きポスト、そして平行光学系のようなネジ付き光学部品とも互換性がある。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/05/pp_laser_cooling.pdf