ハイパフォーマンス、ロープロファイルの顕微鏡法
超小型対物レンズと極薄フィルタによって、進歩したフィールドポータブルな顕微鏡法システムが可能となっており、多くの応用が期待されている。
近年の技術進歩によって、遠隔操作の可能性がさらに進展している。例を挙げると、小型の実験機器によって、医師は医療施設から離れていても患者をスクリーニング、診断できる。また、携帯型環境モニターによって、野外に
おける予防・治療応答を加速させる情報が得られる。顕微鏡は歴史的に見て巨大で壊れやすく、ずれに弱かったが、最先端の設計や製造技術によって、今では高パフォーマンスなポータブル顕微鏡法システムが可能となっている。小型化された光学対物レンズと極薄フィルタによって、システムのサイズと重量を大きく減らすことができる。設計者は医療や環境モニタリング応用向けに、高性能でフィールドポータブルな装置を作ることができるようになっている(図 1)。
ポータブル装置では、正確性と迅速な応答の両方が重要だ。水の品質モニタリングを例に考えよう。水源の安全性に疑問があるときに使うのは危険だが、水供給のアクセス遮断は甚大な被害をもたらす。顕微鏡法は正確性を保証するが,適切な装備で研究所に送るサンプルをフィールド収集することが一般的に必要であり、レスポンスタイムの遅れにつながる。そのため、化学的、生物学的な不純物の特性を迅速で正確に評価することは、非常に意味の
あるものだろう。
類似する状況が、マラリア診断のような臨床応用にある。この疾患は、蚊が媒介する寄生虫が原因であり、赤血球の形態学的変化を誘導する。赤血球をイメージングすることで正確に診断できるが、研究室の顕微鏡を遠く離れ
た熱帯地域に運ぶことは現実的ではない。代替手段としてサンプルを研究室に返送する方法があるものの、これもまた決定的な診断の遅れとなる。
このような生体医学における応用以外に、顕微鏡による検査は製造業で非常に有益なものとなっている。しかし、スペースに限りがある製造ラインでは、割れや散乱のような欠点のあるものを拡大させて取り入れることは、しばしば問題外である。幸いなことに、ロープロファイルで精度が高く、耐久性もあるシステムを次第に設計できるようになっている。
大きなものが小さなパッケージでやってくる
近年の超小型顕微鏡対物レンズは、大きさや重量と関係する応用において、高拡大率と高パフォーマンスをもたらす(図 2)。直径25mm、厚さ11mm(25セント硬貨を積み重ねた程度)という小型のフォームファクタは、直径4 ~7mmのレンズ素子と直径わずか8 ~ 15mmの前部要素によって実現され、短い焦点距離、シャープな曲率半径、小さいf値をもつ。対物レンズの構造を簡略化することでさらに小型化できるが、焦点は固定され、絞り環は小さく、絞り値は調節できないものになるだろう。
このような対物レンズは、像面が平面ではなくなる傾向にあるため、視野の中心軸で分解能やコントラストが向上するものの、エッジでは視野湾曲のため、コントラストが5 ~ 10%低下するだろう。しかしながら、非平面であることの利点もある。これらの対物レンズは、巨大でフルサイズのイメージセンサ上でイメージを解像できる。これは、細胞検出や顕微鏡の欠陥分析などの多くの応用で有効である(ただし、回折限界以上を要求する応用には適さない)。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/05/bioft_portable_microscopy.pdf