効率的な共焦点レーザ顕微鏡用4波長レーザエンジン

ティム・パスッチ・コルバーグ、コンステンティン・バーングルバー

FDDLテクノロジーを用いた直接変調 561nmレーザがもたらす優れたパフォーマンス

レーザ光源はバイオフォトニクス分野の測定技術において非常に重要な役割を果たしている。特に最先端の顕微鏡技術においては高度なパフォーマンスがレーザ光源に求められる。ほかの種類の光源と比較して、レーザは高い輝度、小さな発散角、また単色性が高いため共焦点顕微鏡に理想的な光源と言える。
 自由度の高い顕微鏡装置のセットアップは多種類の蛍光標識試薬の励起を実現するためにさまざまな色のレーザ波長を必要とする。従来からアルゴンイオンまたはクリプトンイオンのようなガスレーザ、ならびに色素レーザは
共焦点顕微鏡法において長い期間にわたり広く使用されている。これらのレーザはアプリケーションが求める波長、ビーム品質、出力レベルを提供することが可能である。
 長年にわたりガスレーザまたは色素レーザと類似の仕様をもつ半導体レーザおよびDPSS(半導体レーザ励起全固体レーザ)が市販されている。これらのレーザは通常、ガスレーザまたは色素レーザと比較して小型で、かつ装置の維持が容易である。加えて低価格であり電力消費が少ない・水冷が不要・長寿命などの優位点をもつ。結果として半導体レーザおよびDPSSレーザはガスレーザまたは色素レーザのようなクラシックなレーザシステムからの置き換えが進む傾向にある。
 1つの筐体から複数のレーザ波長を得るという要求を満たすためにマルチレーザエンジン(またはレーザコンバイナ)が開発され市場に導入されている。これにより1つのデバイスに複数のレーザカラーを集約し、光源を交換することなく異なる蛍光体を柔軟に励起することが可能となる。いくつかのモデルは6〜8波長のレーザカラーを統合しているがほとんどのケースではマルチレーザエンジンには4種類のレーザ波長を内蔵している。最適な波長の組
合せでこれらの4つの色を選択することで最も一般的な共焦点レーザ顕微鏡アプリケーションと蛍光標識試薬をサポートすることが可能となる。
 最も典型的な顕微鏡アプリケーションでは興味深いいくつかの「波長領域」が存在する。これらの領域ではさまざまなポピュラーな蛍光標識試薬がその吸収特性を最大化する。すなわちこれらの特定の波長領域における光は最も一般的な蛍光標識試薬を用いる顕微鏡研究に非常に有効に作用する。可視光領域における最も重要な波長領域は405、488、561、および640nm近傍に存在する。これらの波長領域は偶然に存在したのではなく、主に既存のア
ルゴンイオンおよびクリプトンイオンレーザにおいて利用可能な波長に効率的に作用する蛍光標識試薬の開発の歴史の結果である。これらの波長で高品質の光を提供するレーザ光源は多くの多波長レーザ顕微鏡ユーザーにとって
非常に有用となる。
 近年まで重要な波長の1つである561nmは標準的な半導体レーザ技術によって直接的に入手することができなかった。この波長を実現する実用的な唯一の方法はDPSSレーザであり、顕微鏡用途にとりいくつかの欠点があった。DPSSレーザは高速に変調(オン/オフ)することが困難である。走査型の共焦点顕微鏡のようなアプリケーションを実現するためにDPSSレーザはAOMまたはAOTF(音響光学変調器または音響光学可変フィルタ)のような外部の変調器を必要とする。これらの追加モジュールは高速な変調を可能にするが大きな欠点は消光比が制限されていることである。すなわちオフ状態は実際には「オフ」ではなく非常に低いパワーが依然点灯している状態となる。いくつかの高度な顕微鏡アプリケーションにおいては完全な消灯、すなわち完全なゼロ光子の状態を必要とする。この完全な消灯は個々のレーザ光源間のクロストークを低減し、不要な光ブリーチングを低減するために必須となる。また他の顕微鏡アプリケーションにおいてはさらに広帯域の変調周波数が必要となり、音響光学素子では技術的に不可能な高速でのレーザのオン/オフが要求される場面がある。
 また高速なスイッチング技術は一般に、ラスタースキャニングシステムのフライバック(原点回帰)時間中にレーザをオフ状態にして光ブリーチングを低減するためにも必要となる。さらにこの機能はFRAP(Fluorescence Reco very After Photo­bleaching)またはCLEM(Controlled Light Exposure Micro scopy)のような最先端の顕微鏡技術においても有用であり波長および強度変調の迅速なスイッチングを必要とする技術である。
 またレーザの外部に追加される光学素子は伝搬されるレーザビームの品質に悪影響を及ぼすことがある。これは顕微鏡への光信号を劣化、破損したりまたいくつかの技術を不可能にする可能性がある。上述したようにAOM/AOTFは変調消光比が制限されておりレーザビームが偏光された状態でも漏れ信号の原因となりえる。従ってこの状態では実際には「ゼロ光子の完全消灯」の条件を満たすことは不可能である。さらに、複雑な顕微鏡セットアップにおけるさまざまな動的部品は故障する可能性があるためサービスとメンテナンスの維持コストだけでなく装置全体の大幅なダウンタイムを発生させる恐れがある。AOM(またはAOTF)が強度変調目的に使用される場合、入
射するレーザは絶え間なく連続的に動作されなければならない。これにより実際に顕微鏡観察を行わない「オフ時間」の間にもレーザ光源が依然として動作している状態となり不必要な作動時間および維持費用を発生させる。ま
たこの不要な連続動作はレーザエンジンの信頼できる動作のために本来的に除去(冷却)されなければならない不要な熱をもたらす。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/05/ft3_toptica.pdf