2017年度出荷額はわずかにプラス成長の見込み

井上 憲人

光産業技術振興協会(光協会)は光産業動向調査委員会を設置して調査を実施し、2017年度の調査結果をまとめた。今回の調査結果の注目点は、2016年度実績でレーザ ・光加工分野が前年度に続き好調であること、また光伝送用部品も同様に 2016年度も好調維持している点である。2016年度の情報記録分野、ディスプレイ、太陽光発電分野は、前年度に続き市場の下降が止まらない状態。ただし、2017年度見込みでは、これらの分野もやや好転が見られるとされている。以下では、出荷額に重点を置いて見ていく。

調査結果の概要

 アンケート調査は2017年10月に263社に対してアンケート調査票を発送し、2017年12月から2018年2月に回収を実施。107社から回答を得た。
 太陽光発電分野および固体照明分野のデータについては、それぞれ太陽光発電協会(JPEA)および日本照明工業会(JLMA)のご協力を得た。
 2016年度実績、2017年度見込み、2018年度予測について光協会は、次のように説明している。
 2016年度全出荷額(実績)は14兆2620億円(成長率▲15.5%)。2016年度国内生産額(実績)は 7兆7966億円(成長率▲12.4%)、いずれも2ケタのマイナス成長。
 2017年度全出荷額(見込み)は14兆4327億円(成長率+1.2%)。2017年度国内生産額(見込み)は7兆7168億円(成長率▲1.0%)。出荷額は、わずかにプラス成長、生産額はマイナス成長とはいえ、ほぼ横ばいと言ってよい見込み。
 2018年度予測は、出荷額、生産額ともやや増加となっている。プラス成長に貢献するのは、レーザ・光加工分野と情報通信分野の光伝送用部品。逆にマイナス成長から抜けられない分野は、太陽光発電分野。
 この分野の成長原動力は、極端に高いFIT(固定価格買取)だったが、当初の40円/kWhが今では21円/kWhとなっており、「濡れ手で粟をつかみたい」企業の投資意欲はすでに消え失せているとも考えられる。この先、ドイツのようにFITを廃止して市場任せの制度にでもなれば、この分野の成長回帰は望み薄になる。

2016年度実績、成長分野の1つは光伝送用部品

前年の調査結果では、2016年度の光産業全出荷額(見込み)は14兆5170億円(▲13.7%減)と大幅減少、2016年度の光産業国内生産額(見込み)は7兆8373億円(成長率▲11.9%減)の大幅減少の見込み、と発表されており、今回の調査結果は、ほぼ見込み通りの実績だったことが分かる。
 2016年度実績で、情報通信分野は、全体としてはマイナス成長だったが、これは光伝送機器・装置が前年度(2015年度)に続いて2ケタのマイナス成長から抜けられないためである。一方、光伝送用部品は、2015年度の2ケタ成長から、成長率が8.0%となったものの、光協会の説明によると、生産能力的にほぼ飽和状態だった。国内のコンポーネントベンダーは、2003年頃の光コンポーネントバブル崩壊の記憶を払拭しきれず、ユーザーからの製造能力増強投資要請に応じなかったと言う。
 光伝送用部品について、光協会は次のように説明している。
光伝送リンク:ネットワークの高速化にともない、100Gb/s以上が引き続き伸びたが、100Gb/s未満が減少したため、全出荷ではほぼ横ばい(▲1.2%)、国内生産では+3.1%の増加となった。
発光・受光素子:1.3μm帯LDがデータセンターの拡大にともない、発光素子で前年度に引き続き+20.3%、受光素子も+48.3%と、ともに全出荷が大きく増加した。特に、100Gb/s以上で使われる単価の高い集積光受信モジュール(ICR:Integrated Coherent Receiver)が大きく寄与している。また国内生産でも、発光素子が+17.9%、受光素子が+65.1%と、ともに大幅に増加した。
光ファイバ:需要が大きなアジアマーケットにおいて一定の需要があり、高止まりとなった(全出荷:▲1.6%、国内生産:+0.5%)。
 表 2からわかるように、2015年度生産実績で長波長1550nm帯半導体レーザの成長率が高いのは、この段階では市場が長距離(LH)重点であたったためである。2016年度実績では、市場はメトロやデータセンターに重点が移ってきており、これは1310nm帯半導体レーザの高成長に反映されている。発光素子、受光素子の成長率が高い(表 1出荷額)のは、国内メーカーが海外のモジュールベンダー、あるいは海外の関連会社に素子を供給していることを示唆している。

情報通信分野、2017年度見込み加入者系装置がプラス成長

情報通信分野の2017年度見込みは、前年度実績比でさらに落ち込むと見られている。これは光伝送用部品がマイナス成長に転ずるためで、逆に光伝送機器・装置の下降は1ケタにとどまる。これは、加入者系および映像伝送(CATV、CCTV)が伸びると見られているからである。
 アクセス装置を市場に供給しているある国内メーカーは、「10GE­PONの商用サービスがスタート」したとして、「今年に入ってすでにOLT、ONUの出荷を始めている」とコメントしている。
 こうした新しい市場環境を反映して、2017年度加入者系は10.3%の成長が見込まれている(表1)。
 とはいえ、幹線メトロ系は、400G待ちの感があり、市場回復はさらに先送りになりそうだ。また、データセンター向けの装置(DCI)は、国内に対象市場がほとんどないため、国内の装置ベンダーは海外市場(北米、中国など)をターゲットにしているようだが、製品のパフォーマンスが優れていても、それだけで成功するかどうかは、現状でははっきりしない。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/05/market_watch.pdf