アバランシェモードLEDがCMOS ICの光結合改善

シリコンフォトニクスの世界では、研究者はコンパクトなモノリシックプラットフォームの開発を目標にしている。これは、光源とフォトディテクタを集積して、光の速度で電気−光−電気の変換を行うプラットフォームである。ほかの光電子ICと同様、目標は効率的な高速ルーティングとチップのON/OFF信号処理である。同じことは相補型金属酸化膜半導体(CMOS)プラットフォームでも言えるが、光インタコネクトあるいはオプトカプラ技術は、これまでは、相対的に低速(kHz)動作のバルク赤外(IR)光源に限られていた。
 CMOS ICにおけるオプトカプリングを前進させるために蘭トゥウェンテ大(University of Twente)の博士課程学生、サターダル・ドゥッタ氏(Satadal Dutta)は、可視光を生成するために「アバランシェブレイクダウン」モードにバイアスされたシリコン発光ダイオード(LED)を提案した。可視光は、高い量子効率プロセスで標準シリコンフォトダイオードにより簡単に検出されるからである(1)。加えて、同氏と博士課程学生ヴィシャル・アガーワル氏(Vishal Agarwal)は、アバランシェモードLED、導波路、シングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)ディテクタを使ってCMOS ICをモデル化し、設計した。SPADディテクタは、理論的には、ギガヘルツ速度で動作し、シ
ングルフォトン検出感度がある。本質的に、オールシリコンプラットフォームは、ハイブリッド材料系によってもたらされる障害の多くを回避する。

オールシリコン発光と検出

現在の光インタコネクト技術は、ガリウム砒素(GaAs)LEDとシリコンフォトトランジスタの利用を含んでおり、優れた5kVガルバニック絶縁を実現しているが、遅延が大きい(2μs程度)。III­V半導体材料あるいは有機材料を使用するバリエーションは、3kV絶縁を達成できるが、報告されている最大速度は70kHzにすぎない(2)。
 シリコンインタコネクトの問題は常に、シリコンベースの光源の1.12eV間接バンドギャップが波長1100nm付近で発光することである。これはIR発光であり、本質的にシリコンベースのフォトディテクタに適合していない。
 量子効率改善に向けて光源の発光とフォトディテクタのオーバーラップを改善するために、ドゥッタ氏は、シリコンベースの光源の発光波長を短波長化する方法に焦点をあてた。すなわち、Si LEDをアバランシェブレークダウンモードで動作させ、発光を900nm以下に変換することで光検出を改善し、これにより量子効率を改善する(図1)。10­9程度の結合効率が達成された。同氏は、6V付近のブレイクダウン電圧をもつシリコンダイオードが最高の光出力効率であることを示した(3)。

図1

図1 シリコンLEDをアバランシェブレークダウンモードにバイアスすることでその発光を<900nmの波長にシフトさせ 、シリコンフォトディテクタと検出オーバーラップを改善し、それに応じて CMOSプラットフォームにおいて効率的な光インタコネクトで量子効率が向上する。(提供:トゥウェンテ大)

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/03/wn1_CMOS.pdf