OCT血管造影法の加速

バーバラ・ゲフェルト

技術が進展することで、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)と同様、OCT
血管造影法も眼科診療を劇的に変えようとしている。すでに市場に参入して
おり、他にも応用されるだろう。

「OCTが過去10年間で眼科学を大きく変えてきたように、OCT血管造影法(OCTA)は次の10年で眼科学の診療を変えようとしている」と、現在の手法と臨床応用を取り上げた包括的レビューは述べる(1)。OCTが眼科学にもたらしている信じられない進展を考えると、素晴らしい意見である。
 この強気な予測の理由は何だろうか。従来の光コヒーレンストモグラフィ(OCT)が3次元構造を高速かつ非侵襲的に描写できるのに対し、OCTAは網膜血管系を組織レベルに近い解像度で描写し、以前にはない深さ分解能をもたらす(1)。当然、高速かつ非侵襲的で3Dだ。これは、血流を描写する機能的イメージング技術である。静的な構造組織からの後方散乱と、血管内を移動する赤血球からの後方散乱という2つのOCTシグナル間の差異を計測することによって実現する(図1)。
 OCTAの対象が広がるにつれて、微小血管系の動きを強調させるため、異なるOCTシグナル成分を利用するアルゴリズムが開発されている。これらのアルゴリズムは皮膚学、腫瘍学、神経科学、そして眼科学で応用されている(2)。これらの分野に対して、OCTAは2015年に食品医薬品局(FDA)の認可を取得した。
 それ以降、OCTAは確実に前進している。アルゴリズムの開発や応用研究という意味だけでなく、商業用の眼科向け装置、臨床における導入、網膜スキャンの習熟という意味も含めてである。

図 1

図 1 光コヒーレンストモグラフィがベースにある血管造影法(OCTA)は、Aスキャン(軸スキャン)で5点からのシグナルをサンプリングする。3点(1、2、5)は静的な組織(血管内ではない)に位置し、2点(3、4)は機能的血管内にある。3と4の血管からのOCTシグナルは、経時的に大きな変化を示すが、他の点からのシグナルは変化しない。(提供:C・L・チェン氏(C・L・Chen)、R・K・ワン氏(R・K・Wang(2)))

装置の開発

 米カールツァイスメディテック社(Carl Zeiss Meditec)がAngioPlex systemでOCTA技術において初めてFDA 510(k)認可を取得した前年のころ、米オプトビュー社(OptoVue)は米国外でAngioVue Imaging Systemを発売した。その後、2016年の前半、オプトビュー社はAngioVueのFDA 510(k)認可を発表した。AngioVueはそれ以前に、米国外の525以上の臨床施設で使われていた。米ワサッチフォトニクス社(Wasatch Photonics)は研究向けと相手先ブランド名製造(OEM)向けのイメージング機器であるWP MicroAngioを発売し、日本のトプコンは米国外の掃引型OCT DRI OCT Tritonシステムの顧客向けにSS OCT Angioアドオンを導入した。
 2016年の後半にはツァイス社が、後極部眼底構造の掃引型OCTイメージング技術が初めてFDAから認可されたと発表した。Zeiss Plex Elite 9000は、 網膜の先端研究向けのOCT/OCTAプラットフォームとして発売された(図2)。独ハイデルベルグ・エンジニアリング社(Heidelberg Engi neering)はOCT血管造影法モジュールを発表した。これは、米国外で販売されているSpectralisシステムのアップグレード可能なバージョンにOCTAの性能を付加するために設計されたものだ。
 2017年の前半、ツァイス社はPlex Elite 9000のアップデートを提供した。Plexユーザー間でアイデアや発見の交換を促したり、OCT技術のイノベーションと臨床応用を進展させたりするためにツァイス社が設立したアドバンスト・レチーナ・イメージング(ARI)ネットワークと共同で開発したものだ。200kHzの超ワイドHD Plexシステムは70°の視野を提供し、新たなソフトウエアは糖尿病性網膜症(DR)と網膜静脈閉塞(RVO)の評価を進歩させることを目指す。将来の顧客を惹きつけるため、ツァイス社は向こう数年間はソフトウエアとハードウエアのアップグレードは無償で行う。これには今後予測される、より高速なスキャンレートである毎秒20万回のAスキャンとなる、レーザスピードが2倍になる緊急のアップグレードを含む。
 2017年にはまた、オプトビュー社がAngioVue Essentialを発売した。このシステムは、検眼と、構造的なOCTBスキャン(光学的な横断面)と同時にそれぞれの層の網膜血管系を表示する一般的な眼科診療とターゲットにしている。これにより、医師は患者とのコミュニケーションツールとして利用でき、基本的な眼検診を新たなレベルに引き上げることが可能だ(図3)。また、ハイデルベルグ社はOCTAモジュールのアップグレードを発表した。深部の血管の複雑かつ微細な網膜の層のセグメンテーションの可視化におけるイメージ品質の向上と、表部血管によって投じられる投射アーチファクトを除去するツールである。ポーランドのオプトポル社(Optopol)や日本のニデックなど、その他のOCT機器の開発者もOCTAのプラットフォームを実演しており、近い将来より多くの機器が登場するだろう。
 商業向けの発展が大きくなったため、OCTAは導入と臨床試験という意味で勢いが加速している。OCTAと従来の方法のどちらをどのようなときに使うのかという明確さがない、特にOCTAが保険の補償として適応されてないという新しい技術に対して基準を定めることを考えれば、アイケアの専門家はすみやかにOCTAを受け入れようとしている。これは、以下の事実から明確である。眼科学の学会はしばしば、OCTAに注力するイメージング部門を特集している。そして、OCTAにおける臨床研究とトランスレーショナルリサーチに取り組むよう新たな学会が設立されている。

図2

図2 カールツァイスメディテック社は、網膜の先端研究向けのOCT/OCTAプラットフォームとしてZeiss Plex Elite 9000を発売した。

図3

図3 オプトビュー社のAngioVue Essentialは、構造的なOCT Bスキャン(光学的な横断面)と同時にそれぞれの層の網膜血管系を示す結果を表示する。これにより、医師は患者とのコミュニケーションに利用できる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/03/bioft_oct.pdf