付加製造技術における材料の選択と利用

デヴィッド・L・ボーレル、クリストファー・E・ロバート

ある種のポリマー、金属、セラミックはほかよりもAM(Additive Manufacturing:付加製造技術)により適しているが、多くのAMの方法の間に差異がある。結果として生じるAMの部品の機械特性は向上しており、本稿では粒子形態と欠陥構造について概要を述べる。

材料と付加製造技術は不可分な関係にある。同じことは従来の製造法にも当てはまる。例を挙げると、すべての材料が溶接可能かつ鋳造可能というわけではない。処理に適した材料でなければならず、逆もまた然りである。付加製造(AM、3Dプリンターとしても知られる)についても同様であり、ポリマーか、金属か、セラミックかを、考えなければならない。
 販売業者、実践者、研究者は、少なくとも対象の材料システムについて、どの材料がほかよりも容易に処理できるか知っている。しかしながら、一般読者やAMに関心をもとうとする人たちに対して、AM技術の材料をレビューすることは有益だろう。より詳細な情報として、このテーマのレビュー記事が近年発表された(1)。
 2016年のAM材料の販売額は9億ドルであり(2)、前年比17%の伸びであった。材料の販売額は2010年以降右肩上がりで伸びており、2025年までに年間販売額は50 ~ 80億ドルになると見込まれている(2)(3)。
 AMコミュニティは現在、AM技術を7つのカテゴリに分類している(表)(4)。レーザを使用するのは、粉末床溶融結合、指向性エネルギー堆積、液槽重合の3種類である。
 粉末床溶融結合では、粉末の薄い層を広げ、コンピュータ制御するレーザビームで表面を走査する。そして別の粉末の層を加え、処理が繰り返される。指向性エネルギー堆積では、粉末かワイヤーのいずれかがサイドから供給され、エネルギー源(レーザまたは電子線)に照射される。いずれの方法も、一般には溶融熱のために50 ~ 500Wのレーザが使用される。液槽重合では、液体の熱硬化性樹脂材料における光開始架橋のために、適切な波長でmWレベルのレーザが使用される。

AM向けのポリマー材料

ウォーラーズレポート(Wohlers Report)によると、2016年に消費された全AMポリマーの46%が液槽重合と材料堆積の熱硬化性樹脂であった(2)。材料吐出堆積向けの非晶質ポリマーが市場シェアの24%であり、粉末床溶融結合向けの半結晶の熱可塑性プラスチックが30%であった。
 粉末床溶融結合のポリマーは、しばしば半結晶の熱可塑性プラスチック(ポリアミド、PEEK、TPU)である。非晶質の熱可塑性プラスチックは、一般にはあまり使われない。なぜなら、溶融温度が広く、粘性があるため、処理の温度範囲が狭くなり、それにより粉末床溶融結合には好ましくない高粘性の溶融となるためである。溶融の広い温度範囲は、部分的な過焼結という問題を生じさせる。図1に、非晶質のPLAポリマーをレーザ焼結させた悪例を示した。
 粉末床溶融結合で使用される半結晶ポリマーの大きな特徴は、加熱時の(比較的高い)溶融点と、冷却時の(比較的低い)結晶化温度の温度の差にある。この温度窓は大きくすべきである。粉末床溶融結合のビルドチャンバーがポリマーの溶融点のすぐ下の温度で熱せられるため、粉末床が塊とならないよう十分低い温度となる。この温度は、結晶化温度以上、溶融点以下の温度窓でなければならない。
 レーザを操作して粉末を溶融するとき、ビルドチャンバーの温度に戻るよう冷却されるが、結晶化温度には到達していないため溶融状の構造を維持している。そのため、溶融した部分は融けた状態を維持し、通常は複数の層が上に重なったあとで徐々に結晶化する。これは、残留応答と部分損傷の最小化において重要な利点となる。しかしながら、この現象は金属では一般に不可能であり、構築中に損傷しないよう大きなサポート構造が必要となる。
 ホプキンソン氏(Hopkinson)は、合金材料を2つの高い溶融点成分に分けるという新しい金属の手法を提案している(6)。レーザ(または電子線)が材料を走査して溶融するとき、溶融したものが混合し、より低い溶融点の金属(共晶混合物様)が生じ、溶融状態が維持される。この手法はポリマーの手法を模倣したものであり、サポートの必要性をなくす。
 材料吐出堆積では、吐出と材料配置を制御するのに、高粘性でペースト状のポリマーが最適だ。通常の材料ポリマーは非晶質である(PLA、ABS、ポリイミド)。材料吐出堆積において半結晶材料を使用すると、チョコレートから作られた多層パーツ(7)やPEEK(8)の場合のように、一般に低品質の産物となる。
 液槽重合と材料噴射堆積で使用されるポリマーは、与えられた波長光の存在下で架橋結合可能な光開始剤(通常はベンゾイン、アセトフェノン、ベンジルケタール、シクロヘキシルフェニルケトン)をもつ熱硬化性樹脂である。初期の商業用材料はアクリレートをベースにしていたが、大きな収縮と有害な酸素効果があったため、エポキシ樹脂が導入された。

図1

図1 不適切な材料を用いたもの。非晶質の熱可塑性プラスチックであるポリ乳酸(PLA)を使用した粉末床溶融結合。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/03/pa_3D.pdf