VCSELアレイは3Dセンシング向け最先端の光

ホルジャー・メンヒ

面発光レーザ(VCSEL)アレイによって、ライダやほかのセンシングアプリケーションの出力拡大が可能になる。

レーザがあらゆる電話、自動車、家庭に入り込めるようになるレーザアプリケーションの新分野が発展している。スマートフォン、ノートパソコン、ドローン、ロボットや自動車はますます、周囲の3D空間をマッピングする機能を搭載するようになっている。目的はナビゲーション、拡張現実と仮想現実またはその一方(AR/VR)、あるいは識別のためである。これらのデバイスはすべて新しいセンサの搭載を必要としており、これによって周囲の対象物までの距離を計測し、3D環境データやマップを作成する。
 アプリケーションの範囲は、電話の近接センサや数mの距離の人や物の観察から、自律走行車ではライダ(LiDAR:光検出と測距)システムまである。ライダは数百m先の小さな障害物を解像することができる。レーザベースの計測が選択される方法となるのは、高精度とコンパクトな形状が組み合わさっているからである。広範囲のアプリケーションと、ほとんどの市場の消費者の性向によりVCSELは、3Dセンシングで照射のための優れた光源となる。
 このアプローチでは、距離はレーザ光から放射される光の飛行時間を計測することで決まる。光は、対象物から反射され、最終的にセンサで受光される。いわゆる飛行時間システムは、レーザの短パルスと、シングルフォトンアバランシェダイオード(SPAD)などの高感度ディテクタを使って直接飛行時間を決定する。間接的な飛行時間システムは、放射パルストレーンと受信パルストレーン間の位相シフトを計測する。これはカメラチップで利用でき、従って、ほぼQVGA方位分解能が可能である。
 太陽あるいは人工光源から連続的に放射されるフォトンとの競合は、実際上、飛行時間技術の大きな制限要因である。センサ前面とレーザ波長中心付近のスペクトルフィルタがこのバックグラウンドを抑制し、帯域が狭くなればなるほど、レーザスペクトルをますます狭くすることができる。

VCSELは簡素、安定的

VCSELは3Dセンシングで主要な光源技術になりつつあり、LEDあるいは端面発光レーザダイオードに取って代わることが可能である。VCSELはシンプルであり、スペクトルが狭く、温度に対し安定的だからである。
 VCSELは単一エピタキシャルプロセスで製造され、基板上の最初の分布ブラッグリフレクタ(DBR)ミラー、電流閉じ込め多重量子井戸(MQW)構造および第2DBRミラーとなる。両方のミラーが、構造面上に堆積された金属電極からの電流を活性領域に伝導する。1つのGaAsウエハ上に数百万のVCSELが製造でき、単一チップにへき開する前にすべてが完全にテストされる。
 個々のVCSELは、サイズ(10μm発光径)と出力(10mW)の制約はあるが、単一チップ上に数十から数千のVCSELのアレイを高密度充填し、拡張可能である(図1)。発光パターンは円形、1/e2で約20°全幅、またアレイの全VCSELはファーフィールドで重ね合わさっている。光学素子は、VCSELチップ上に簡単にスタックしてコリメートし、発光パターンを成形できる。
 VCSELアレイ放射のスペクトル幅はわずか1〜2nmである。製造からの波長広がりは小さく、波長の熱シフトはわずか0.065nm/Kで、その結果は小さなスペクトルウインドウであり、センサ前面の簡単なフィルタで効率的にバックグラウンドを抑制できる。2つのDBRで決まるレーザ共振器は、LEDの広いスペクトル、LEDや端面発光レーザダイオードの5倍大きな熱シフトと比べると、非常に狭く安定した発光を確保できる。VCSELベースのシステムは、同じアプリケーションで大幅に低消費電力であるが、これはバックグラウンドをより効果的に抑制できるからである。

図 1

図 1 フィリップスフォトニクス社(Philips Photonics)のハイパワー VCSELアレイは、六角形パッキングおよび金接点で囲まれた多数のレーザ開口で構成されている。(提供:フィリップスフォトニクス社)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/03/ft4_vertical-cavity.pdf