太陽電池と半導体プロセス検査に取り組むテラヘルツイメージング

マイケル・ネイジェル、サイモン・サワリック、ビョルン・グロービッシュ

フリースペースオブティクスをファイバ結合された集積コンポーネントに置き換えると、モジュラーテラヘルツ・タイムドメインイメージングシステムが実現し優れたソーラおよび半導体ウエハ解析ができるようになる。

テラヘルツ分光測定およびイメージング向けのオプトエレクトロニクスシステムは、過去10年で著しく成熟した。このトレンドの重要な原動力は、通信分野からの集積光技術利用が増えたことである。これによりコンパクトで高性能のタイムドメイン分光(TDS)システムの構築が可能になった。
 新しいテラヘルツTDSシステムでは、ファイバ結合された集積コンポーネントが分散型のフリースペースビームオブティクスを完全に置き換えた。これは、空間要件に関して優位性があることを示しているだけでなく、科学や産業アプリケーション向けに、多くの種類のシステム環境へテラヘルツ計測機能を統合しやすくしている。特に、ウエハ解析システムは、高分解能近接場イメージング向けにテラヘルツマイクロプローブを利用することができる。
 独トプティカ・フォトニクス社(Toptica Photonics)のTeraFlashシステムは、ファイバベースのテラヘルツTDSモジュールで、光学的・電気的集積のレベルが高い(1)、(2)。ほとんどすべてのコンポーネントは、フェムト秒パルスレーザ、光時間遅延コンポーネント、データ取得と制御ユニットを含め、19インチのラックマウント可能な筐体に収められている。唯一の外部コンポーネントは、2 つのファイバ結合光伝導アンテナで、これらはTDSモジュールからの光励起によるテラヘルツ放射の生成と検出に利用されている。

商用統合

外部のテラヘルツアンテナコンポーネントと時間領域分光測定(TDS)システムとの光ファイバ/ケーブル接続によりテラヘルツテストは新たなアプリケーション環境に入っている。これは省スペースとRF信号干渉からかなり自由になったためである。
 1550nm動作により、独プロテミクス社(Protemics)のテラヘルツシステムはトプティカ社のTDSモジュールとPC近接場プローブを統合している。これにより、光ファイバの信号分散を最小化し、適用する光サンプリングパルス時間幅を100fs以下に保っている。結果として得られたテラヘルツシステムは、わずか20msでフルテラヘルツタイムドメイン過渡信号を記録できる。これは多くの連続テラヘルツ計測を必要とするアプリケーションにとっては大きな利点になる。たとえばインライン品質検査、非破壊試験、ラスタスキャニングベーステラヘルツ(近接場)イメージングである。
 標準的な構成は、自由空間サンプルの透過計測であり、ここではエミッタアンテナで生成されるテラヘルツ照射はコリメートされ、ファーフィールドディテクタアンテナに集光されるが、これとは対照的にプロテミクス社のファイバベーステラヘルツTDSシステムはTeraFlash光源モジュールとPro temics TeraCubeニアフィールドスキャニングシステムを統合している。同システムには、テラヘルツ検出とイメージング用に、PCニアフィールドプローブ(Protemics TeraSpike TD­800­XHR­WT)が含まれている(図1)(3)。
 コンピュータユニットが、ニアフィールドイメージングシステムとTDSモジュールを制御する。計測中、ラスタスキャニングシステムの動作制御ユニットがサンプルの現在位置をデータ取得ユニットに絶えず送り、そこで各位置で記録されたテラヘルツデータと統合される。TDSモジュールの高サンプリングレートにより、連続(ストップ&ゴー中断なし)表面スキャニング動作で、フルテラヘルツ過渡検出が可能になる。
 PCニアフィールド(近接場)プローブは、1μm厚低温成長ガリウムヒ素(GaAs)カンチレバーで構成されている。カンチレバーは、一対のテーパー状電極を特徴としており、これがプローブ先端で光伝道(PC)スイッチを形成する。プローブは、サンプル表面近傍で放射テラヘルツ場を記録する。ニアフィールドプローブとしての電気光学結晶と違い、プローブはより低い侵襲性と高感度が特徴となっている。
 スキャタリングチップベースプローブは、z領域しか記録できず、開口ベースのプローブは水平(x、y)領域のみを記録する。対照的に、プロテミクス社のPCニアフィールドディテクタは、x、y、あるいはz方向で選択的に、場のベクトル成分に感度を持つように設計されている。

図1

図1 光タイムドメイン分光計測ユニット (a)は、超高速ポンプ/プローブ信号を生成し、一方ニアフィールドスキャナユニット (b)はテラヘルツエミッタとニアフィールドディテクタコンポーネントを含み、同様に高分解能フィールドマッピング用に移動ステージも含まれる。サンプル、つまりテストされるデバイス (DUT)はニアフィールドスキャナユニットにセットされている。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/01/pa_terahertz_imaging.pdf