シリコンフォトニクスへの量子ドット近赤外マイクロレーザ

香港科技大(HKUST)と米カリフォルニア大サンタバーバラ校(UCSB)の研究者は、記録的に小さな電気励起マイクロレーザを開発した。これは業界標準(001)シリコン(Si)基板にエピタキシャル成長して作製した(1)。デバイスは、半径5 ~ 50μmのウィスパリングギャラリモード(WGM)マイクロレーザで動作する、サブミリアンペアしきい値、0.6mA(半径5μmバージョン)であり、近赤外(NIR:1.3μm)で発振、100℃まで動作する。しきい値とフットプリントは、これまでに報告されたSiにエピタキシャル成長したレーザよりもけた違いに小さい。そのようなレーザは、通信やデータセンター向けのシリコンフォトニクス回路の今後の世代で役立つ。
 いくつかの点で類似した開発を2016年に、英国のユニバーシティ・カレッジ・ロンドン、シェフィールド大、ウェールズのカーディフ大の研究者グループが報告していることには留意すべきである。しかし、これらのレーザはウィスパリングギャラリモードで動作するものではなく、またはるかに大きい(3mm長)(2)。

III-Vデバイス

HKUSTとUCSBのガリウムヒ素(GaAs)ベースIII-V半導体デバイスにはアルミニウム(Al)とインジウム(In)も添加されているが、これはシリコン上のGaAs層で構成されており、15周期の薄い(5nm/5nm)AlGaAs/GaAs層、レーザの活性領域の7層の量子井戸InAs/InGaAs量子ドットで構成されている(図1)。
 半径50μmのウィスパリングギャラリマイクロ共振器は、リング幅5μm、計算されたフリースペクトルレンジ(FSR)は1.56μm。共振器の計測されたFSRは、約1.4nmであり、コンピュータモデルによく一致していた。印加電流80mAで、レーザの出力スペクトルは、1285 ~1300nmの間に複数の個別ラインを含んでおり、最も強いラインは1294nmである。半径50μmの共振器バージョンは、印加電流0.6 ~ 1mAで1285nm付近でシングルレーザラインとなる。
 50μm半径のレーザは、100℃までの高温テストを実施した、これはテスト熱電ヒーターが到達する最高温度だった。ヒートシンク温度が10℃から100℃に上昇する時、レーザのスロープ効率は、パルスと連続波(CW)動作それぞれで45%、69%に低下した。

図1

図1 HKUSTとUCSBが作製した電気励起量子ドットマイクロリングレーザ。井戸層の周期的量子ドットがレーザの中央に見える。(提供:HKUST電気・コンピュータ工学部/ピーター・アレン)

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/01/wn3_microlasers.pdf