フェムト秒レーザパルスが水から超高速テラヘルツ放射を生成

テラヘルツ放射は以前は、固体、気体、プラズマ(物質の「第4状態」)から生成されたが、これまでに液体からテラヘルツ光を生成したものはいなかった。米ロチェスター大のオプティクス研究所、中国の華中科技大、天津大精密計測器とオプトエレクトロニクス工学部テラヘルツ波センター 、首都師範大、露サンクトペテルブルク情報技術・機械・光学大のグループは、水にフェムト秒パルスの効果を利用してこの偉業を達成した(1)。
 研究グループの一員であるロチェスター大オプティクス研究所のチャン教授(X.-C. Zhang)は、「液体の水から高強度広帯域テラヘルツ波生成の実証は初めてである」と話している。

水からのプラズマ

その技術は、1kHz繰り返しレート、中心波長800nmの500fsレーザパルスを水膜に集光し、膜内にプラズマを生成すると、約60fs幅のテラヘルツパルスを生み出す。入力レーザ光は、法線に対して25°の角度としてオプティクスに対する水の跳びはねを最小化する。
 水はテラヘルツ放射の吸収性が高い(1THzで吸収係数220cm-1)ので、水膜は非常に薄くしなければならない。これは、重力駆動、自由流動設定を用いて行っている。これにより、自由空間に177μm厚の連続する安定した水の垂直膜が得られる。この厚さは、水流レートを変えることで調整可能であり、光第二高調波強度オートコリレータを使って較正し計測される。これはデンマーク工科大の研究者が2014年に初めて開発した方法である(2)。
 普通の空気に焦点を結ぶフェムト秒レーザもテラヘルツ出力を生成できるので、2つの潜在出力はどうにかして離して計測されなければならない。水がテラヘルツ放射を吸収することはわかっているので、これらの出力(空気と水から)は、水膜をレーザの軸領域で軸方向に動かすことで分離して計測できる(図1)。

図 1

図 1 水膜とその周囲の空気からのテラヘルツ放射出力は、分離して計測可能である。最上段の図は、レーザがまず水膜をとおり、次に焦点を結ぶ状況を示している。ここでは空気のテラヘルツ出力特性が見られる(最下段の図、水膜のない制御セットアップと同じ)。次、焦点が水膜そのものに移動したとき、水からの所望のテラヘルツ出力が見られる。最後に、レーザが最初に焦点を結んで次に水を透過するとき、テラヘルツ出力は見られない。水でテラヘルツ放射が吸収されるためである。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2018/01/wn2_terahertz.pdf