in vivo 細胞内イメージングの新たな最先端領域を切り開く補償光学

バーバラ・ゲフェルト

補償光学は、行動している動物の組織を超解像度でイメージングするためのドアを開く。神経科学や他領域に素晴らしい意義をもたらしている。

「補償光学は間もなく、多細胞の試料における全深度の高解像度イメージングにおいて必須の要素となるだろう」と、ナ・ジー氏(Na Ji)が新たに発表したレビューで結論付けている(1)。彼女は、ノーベル賞受賞者のエリック・ベツィグ氏(Eric Betzig)とともに研究していた米ハワード・ヒューズ医療研究所(Howard Hughes Medical Institute)のジャネリア・リサーチキャンパス(Janelia Research Campus)の前グループリーダーで、現在はベツィグ氏とスタッフに歓迎されてPhDの母校であるカリフォルニア大バークレー校(University of California at Berkeley)の物理・神経生物学の准教授である。彼女は、神経生物学に応用するイメージング技術を開発している。最も興味があるのは、おそらく、in vivo(生体内)の脳研究だ。
 言うまでもなく、ベツィグ氏は超解像度の蛍光顕微鏡法の開発で2014年にノーベル化学賞を受賞した。この技術は、ex vivo(生体外)で生物試料の細胞内イメージングを可能にするものである。しかしながら、顕微鏡のスライドに細胞を置いてしまうと、生きている生物の中にある全含有物を知るということができない。これが、彼とジー氏が、生きている、行動している動物の深い組織の細胞内イメージングを可能にしたいと考えている何よりの理由である。

なぜ補償光学なのか

光学システムの解像度の制約は、理論上、光波の回析のみである。ところが、試料(または光学システムそのもの)による光学効果がブラーをもたらす。屈折率は3次元(3D)組織を入ってから出てくるまで変わるため、構造の複雑性や深さが大きくなるほど、コントラストとシグナルが下がる。
 2013年に発行された書籍『Adaptive Optics for Biological Imaging』に記載があるように、補償光学(AO)は、これらの収差を補正するために研究者が開発してきた中で最もパワフルで多用途なアプローチである(2)。AOシステムは劣化を能動的に制御、補償して、イメージをシャープにするよう設計されている。
 AOは、本来は天文学で開発され、そこでも主流になるまで60年以上がかかった。AOは、生体イメージングに応用されるようになり、最初は網膜イメージング、その後は顕微鏡法であったが、それは1970年代後半になってからである。
 従来のAO顕微鏡システムは、波面を直接計測するのではなく、光検出器で受け取る信号を処理することで波面を補正する。光学システムに波面センサを追加するのは複雑な問題であり、生物学では自然由来の点光源リファレンス(天文学のAOで使われる「ガイド星」などのこと)がないためである。しかし、過去15年以上にわたり、研究者はセンサレスのAOを開発しており、2光子顕微鏡法の実現を目指してきた。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/11/P40_Advanced_Microscopy.pdf