水中ライダに向けて短パルス大電流LD駆動回路開発

井上 憲人

「光検出と測距(Light Detection and Ranging)」は、ライダ(LIDAR)として知られている。アプリケーションは、自動運転、運転者支援システム(ADAS)から、宇宙空間での応用、セキュリティまで、多様である。国内のスタートアップ企業、トリマティスは、水中ライダを目標に短パルス大電流LD駆動回
路を開発し、最終的には送受信を備えたデバイスを実現しようとしている。

調査会社によると、ライダ市場は2ケタ成長で拡大する見込みであり、2022年には45億ドルに達すると予測されている(BCC Research)。アプリケーションから見て、市場を牽引しているのは沿岸マッピング、他に運輸、森林などがある。ニュースで取り上げることが多い無人自動車、ADASは、予測成長率こそ29.2%と高いが、現状の市場規模は小さい。自動車関連のライダ市場の立ち上がりを2019年とみる調査会社もあり、その予測レポートによると、市場規模は2027年には130億ドルに近づく(ABI Research)。
 先頃、Economist誌が「内燃機関の死」(The death of the internal combustion engine)という特集で、電気自動車(EV)へのトレンドを紹介したがEVと組み合わせて高付加価値を実現すると予想されている技術の一つが自動運転。自動運転には、カメラ、レーダに加えてライダが不可欠であるので、調査会社のライダ市場予測は必ずしも楽観的とは言えないようだ。
 ライダのアプリケーションとしては、これらのほかに、空中ライダ、家庭で使用されるロボット、カメラと統合した侵入検出・監視自動化向けライダがある。ただ、これらはスタートアップに適した市場を形成するとは言い難い。
 水中ライダで使用されるレーザは、深海用が、透過性に優れた青色、東京湾などプランクトンが多い浅瀬では緑色、海面付近では赤色となる。
 可視光は、その波長帯の増幅器が利用できないため、測距の距離を延ばすには、大電流で、高出力にする必要がある。
 トリマティスは、光制御技術、回路設計を得意とする技術集団であるが、同社が2016年に発売したのが70A短パルス駆動LDドライバ(図1)、2017年には150A短パルス駆動LDドライバを開発、発売した(図2)。

図1

図1 水中ライダ向け開発で最初に製品化した70A短パルス駆動レーザダイオードドライバ。パルス幅15ns、ピーク電流70A、繰り返周波数20kHz。用途はライダ光源だが、その他にレーザ加工機光源、分析用光源にも適用可能。現在、最も多く採用されているのはロボットの位置制御用途。

図2

図2 ピーク電流150A短パルス駆動LDドライバ、パルス幅:30ns(電流、パルス幅をカスタマイズ可能)、繰り返し周波数:5kHz、対応LD:CANパッケージ(様々な帯域、ピンアサインに対応)基板サイズ:60×60mm、主な用途:水中ライダ。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/11/P44_Underwater_LiDAR_System.pdf