多波長レーザモジュールで、ライフサイエンスにおける包括的なデータセットが取得可能に

ジョン・アボット、ダン・カレン、マティアス・シュルツ

レーザヘッド、オプティクス、電子部品をすべて一体化した光励起半導体レーザプラットフォームにより、複数波長の発振、制御が容易に実現する。

光励起半導体レーザ(OPSL:Optically Pumped Semiconductor La ser)は、共焦点顕微鏡、DNAシークエンシング、フローサイトメトリーなどのライフサイエンス分野で多く使われている(別掲記事「OPSLとレーザダイオード」を参照)。ライフサイエンス市場でのレーザ利用の主なトレンドは、OEM(Original Equipment Manu fac turer)、エンドユーザー向けどちらにおいても、ある特定な応用向けに設計され標準化されたモジュールやサブシステムの利用が増えているという点である。
 このようなレーザソリューションには、アプリケーションに応じて最適化されたレーザや、光学部品、機械部品、エレクトロニクスなどが搭載され、レーザの個々の出力パラメータよりもシステム全体でのパフォーマンスを保証することに重点がおかれている。本稿では、このトレンドを牽引する3つの主要な応用分野について説明する。

ライフサイエンス向け装置における市場牽引要素

多波長フローサイトメトリー。フローサイトメトリーでは、特定の細胞、抗原、細胞内の構成要素(または細胞そのものの遺伝子組み換えによって表現されるもの)にタグ付けされた蛍光プローブが使用される。細胞は、1つのファイル内で1つないしは多数のレーザビーム内を通過させることにより、異なる波長帯域において、それらの蛍光を複数の検出器で測定する。
 ここでは、さらに多数のパラメータによって細胞を特徴づけられるように、レーザの励起波長の数を増やすことが求められている(図 1)。また、複雑な複数のパラメータのサイトメトリーは、かつては大型の計測装置で行われていたが、そうした同様の技術が臨床(クリニカル)環境に導入されるケースがますます増加している。そのような例においては、サイズ、コスト、市場投入までの期間などが、これまで以上に重要視され、計測装置には複数の波長への対応が必要とされる。それにともない、優れた性能と、ノイズやポインティング安定性などの高い安定性が望まれている。多波長顕微鏡。蛍光顕微鏡は、OPSLの波長範囲が最も適応する応用分野である。特に、最新の蛍光色素分子では、長波長のレーザが使用されている。それらには、蛍光たんぱくであるmFruitsシリーズと、もともと多量パラメータのフローサイトメトリーの応用向けに開発されたグリーン、イエロー、オレンジの蛍光色素などが含まれる。さらに、共焦点応用、新しい超解像度法では、2つ以上のタイプの構造または生化学的特徴について同時に試料をマッピングまたはプローブすることを可能にするため、しばしば複数の蛍光色素分子を組み合わせて使用することが多い(図 2)。さらに、オプトジェネティクスにおいて、光刺激のための追加の波長の使用が増加している。ここでは、そのすべての波長を「必要に応じて」顕微鏡に結合することが課題となる。
 マルチモーダル顕微鏡法。もう1つの主要なトレンドは、異なる顕微鏡技術を組み合わせて、分子事象をさらに巨視的な行動へと関連づける研究である。蛍光標識された異なる遺伝子産物の位置をマッピングする、ないしは、カルシウムイオン(Ca2+)イメージングを使用して代謝活性の高い領域を視覚化するなどといった、化学的特異性によるイメージングを独自に提供できるため、共焦点イメージングなどのレーザベースの顕微鏡技術が不可欠となる。しかし、超解像技術を用いても、それらの空間分解能は>20nmの範囲に制限されている。
 そのため、多くのライフサイエンス研究者が、原子間力顕微鏡(AFM:Atomic Force Microscope)や反射電子顕微鏡(REM:Reflection Electron Micro scope)といった、より高い解像度を提供する他のモダリティのデータと蛍光顕微鏡情報を組み合わせたいと考えている。そうしたモダリティはすべて単一のプラットフォームに統合されることが理想的である。このような背景は、装置メーカー間の合併買収(M&A)を促進し、OEM企業は流体光学、化学、信号処理、ソフトウエアといったコア的な技術に注力せざるを得ない。こうしたOEM企業が装置を開発するためには、専門的な光技術の部分を外部に委託することが近道である。

図 1

図 1 フローサイトメトリーでは、通常、楕円形に成形された一列のビームの中を細胞が通過する。複数の波長を使用することで、より多くのソーティング基準によって細胞を分類することができる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/11/P22_Visible_Semiconductor_Lasers.pdf