光学テーブルの進歩が高感度アプリケーションで振動を和らげる

スティーヴ・ライアン

新技術により空気アイソレータサポートをアクティブ除振ハードマウント上にスタックできるようになり、影響を受けやすいマルチフォトンイメージングや単一分子研究向けに安定した光学テーブルが実現されている。

すべてのフォトニクス研究所のバックボーンは光学テーブルである。複雑なオプトエレクトロニックシステムは、剛性、減衰、平坦性、清浄度、ネジ穴アレイ、均一な熱膨張係数を含む光学テーブルの特性を必要としている。しかし最も重要な特性は、極めて静かで安定した作業面である。
 光学テーブルは、非常に剛性の高い、構造減衰スチールハニカムトップと、低周波空気圧防振支持台を組み合わせて床の振動から隔離されている。これにより6次自由度(DOF)質量・スプリング・ダンパシステムが実現する。ハニカムトップは理想的な、無限に硬い質量として機能し、防振支持台は減衰スプリングとして機能する。
 質量・スプリング・ダンパは、振動を増幅する特性共振周波数(fn)を持つ。約1.4×fn以上で、隔離が始まり、周波数が増すとアイソレーションロールオフが改善する。共振増幅とアイソレーションスロープは、アイソレータ(防振材料)減衰係数の関数である。一般的な支持台は、3 ~ 4Hz以上で床の振動からの隔離が始まる。効果的なトップ(上面)は非常に硬く、最初の曲げモードは100Hz以上であり、そのモードはハニカム構造内にマウントされた構造ダンパにより効果的に減衰されている。
 100Hzを超える共振周波数では、アイソレータあるいは他のパスを通ってトップに届く振動は、オプトエレクトロニックデバイスが最も敏感な、つまり0.5 ~ 30Hzの臨界周波数域で増幅されることはない。とはいえ、振動減衰が問題なのではない。アイソレーション支持台をスタックした新しい光学テーブル設計が、こうした低周波振動を隔離することで臨界領域でテーブルの安定性を改善している。従って、最も敏感なマルチフォトンイメージングや単一分子生物物理学の研究が実施できるのである。

減衰vs.隔離

振動減衰と隔離は、異なる特性であるが、不正確に互換使用されることがよくある。減衰は、機械的エネルギーの熱への変換であり、これはテーブルトップ構造と振動隔離支持台の両方に適用する。隔離された構造に到達するエネルギーは放散されなければならない(熱に変換される)。テーブルトップ構造に組み込まれた質量・スプリング・ダンパは、トップの最初の曲げモード以上(100Hz以上)でトップの曲げを減衰させる。光学テーブルシステムが乱されたときには、空気アイソレータがその共振周波数(1 ~ 3Hz)で活性化される。空気アイソレータ内部に構築された開口部、ダッシュポットおよび他のデバイスが、このエネルギーを熱に変換するに従い、この動きは消散する。
 それに対してアイソレーションは、アイソレータ支持台の機構によって達成される、ペイロードに届く床の振動の低減である。トップに組み込まれた電気機械デバイスによるトップ構造のアクティブダンピングは、ダンピング(減衰)と考えられるべきであり、アイソレーションではない。つまり、それはトップに届く振動を防ぐのではなく、それを減衰させるからである。
 歴史的に、光学テーブルの振動パフォーマンス改善は、トップの構造的減衰を強めることに向けられた。目標はスチールハニカム技術によって達成される超高剛性対重量比と高い構造的減衰および小さな共振増幅の組合せである。
 一般に、これは成功を収めた。現在、最高のトップは最低共振周波数で臨界減衰を達成している。これが大成功を収めている限りでは、さらなる改善で得るところはほとんどない。つまり収穫逓減である。最近まで、床の振動からトップを支持するアイソレーションシステムにほとんど進歩はなかった。

低周波アイソレーション問題

研究者やエンジニアが、計測を行い、これまでにない微小スケールの分解能を達成しようとしているので、光学テーブルのアプリケーションは、ますます低周波床振動の影響を受けやすくなる。そのような0.5 ~ 30Hzの範囲は、最高度に硬く、ベストの減衰トップでも減衰されない。
 隔離された表面に届くこの周波数域の振動はトップの剛体運動になるだけである。それどころか、この周波数域の振動を効果的に減衰するには、それがトップに届かないように隔離しなければならない。ベストの振動隔離支持台は、この周波数範囲では限定的なアイソレーションしか提供しない。一般にそれらは、パッシブなセルフレベリング・エアアイソレータで構成されている。これらは、1 ~ 4Hz範囲の床振動を増幅し、4Hz以上を隔離する垂直および水平低共振周波数のエアアイソレータである。
 低周波アイソレーション改善のために、アクティブフィードバック制御技術が光学テーブル振動隔離支持に適用されている。「アクティブ」という語は、さまざまな制御系を記述するために業界用語で漫然と使われている。これには、エアアイソレータの機械的セルフレベリングのような単純なフィードバック機構が含まれる。この場合は、圧力調整器と機械的結合機構を結びつけている。
 明確にするために、ここでは「アクティブ」と言う時、特に慣性フィードバックアクティブシステムを指す。そのシステムでは、受振器あるいは加速度器(それぞれ、速度または加速度を計測する)などの慣性センサからの信号が条件づけられ、増幅され、究極的にはクローズドループフィードバックで使われて、電気機械もしくは他のタイプのアクチュエータを通じて不要な振動をキャンセルする。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/11/P18_Advanes_in_Optical_Table_Design.pdf