包括的なVCSELモデリングを支援するTCADソフトウエア

Z. Q.(レオ)・リー、アーメッド・ナシェッド、サイモン・リー

TCAD(Technology Computer Aided Design)ソフトウエアによって、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)などの複雑な光電子デバイスの動作を最適化および予測することができる。それに基づいて、材料や設計をどのように改変すれば機能的パラメータが改善されるかを予測することができる。

光学ストレージ、光ネットワークにおける高速データ伝送、レーザプリントに広く用いられるVCSELは、しきい値電流が低く、円形で対称的なビームを照射し、変調速度が速いという特長を備える。また、高出力用途向けに2次元(2D)アレイでバッチ製造可能で、垂直出力であるためにオンウエハ試験がしやすいことから、測定時間が大幅に短縮され、製造コストが低い。
 光出力と波長範囲(340〜2600nm)の増加にともない、VCSELは、従来の端面発光レーザの応用分野にまで進出しつつある。また、VCSELの性能は近年著しく進歩したにもかかわらず、基本構造を改良してさらに高い出力パワーと変調速度を達成するための研究が、引き続き精力的に進められている。
 標準的なVCSELは、端面発光レーザよりも複雑な構造をしている(図 1)。上下にある分布ブラッグ反射器(DBR:Distributed Bragg Reflector)、 中央にある複数の量子井戸を持つアクティブ領域、そしてキャリア輸送と光パワーを閉じ込める酸化層を基に、時間とコストをかければ、より複雑なさまざまな構造を実験的に製造して試験することができる。しかし、コストと所要時間を削減する新しい代替手段は、カナダのクロスライト・ソフトウエア社(Crosslight Software)が開発したようなTCADを使用することである。

図 1

図 1 VCSEL は一般的に、端面発光レーザよりも複雑な構造をしており、複数の量子井戸を持つアクティブ領域の上下には、分布ブラッグ反射器(DBR)が配置されている。

モデリング・ソリューション

TCADを使用すれば、新規デバイスを製造する前でもVCSEL設計を解析および特性評価することができる。その初期設計からの測定結果を用いてモデルのパラメータを修正し、設計工程を繰り返す。そうすることで、デバイス動作の予測精度が徐々に高まり、プロトタイプ製作の繰り返し回数が減る。
 VCSELのファブレス設計には、マルチフィジックスモデルと正確な材料パラメータを備える、堅牢で信頼性の高いソフトウエアが必須である。クロスライト社のVCSELシミュレーションソフトウエアは、包括的な電気モデル、光学モデル、熱モデルを組み合わせた。この10年間で、主要なVCSELメーカーと連携して、理論的モデルの改良と材料パラメータの校正に取り組んできた。「PICS3D」ソフトウエアパッケージは、電流-電圧(I-V)特性、出力-電流(L-I)特性、温度分布、マルチモードの遠方場または近接場パターン、大小の信号-周波数変調応答など、各メーカーのVCSEL構造の特性評価に大いに活用されている。
 このような基本パラメータ以外にも、キャリア分布、電界、バンド図構造、量子井戸または量子ドットの閉じ込め状態といった、より詳細な情報を把握することができる。このような情報は、新しいVCSEL構造の設計において非常に重要なものである。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/09/feature05.pdf