最適レーザビームエクスパンダの選択法

オリビア・フェールベルク

ビーム拡大は多くのレーザシステムで重要である、したがって超過コストなしで適切な性能を達成するために必要なビームエクスパンダを正しく仕様化することが成功のために不可欠である。

歯科から材料加工まで、個々のレーザアプリケーションには独自の性能要件がある。波長、光パワー出力、時間特性および他の重要性能特性で、レーザは変化する。多様なビーム径や発散角のレーザファミリを造ることができるが、他の性能要件に基づいてレーザを選択し、所望のビームや発散角を達成するためにレーザビームエクスパンダを利用する方が、たいていいつでも容易である。
 ビーム径を大きくすることに加えて、ビームエクスパンダはレーザビーム発散角も少なくする。光源ごとのビーム変動の補償に使われることもよくある。ビーム拡大率、パワー、つまり倍率が、ビームエクスパンダ選択の際に用いられる主要な仕様だが、いずれもビームエクスパンダ特性として注意深く規定しなければならない。おのおのの仕様が設計と製造の複雑さに影響を与えるからである。特殊アプリケーションのニーズは、市販の製品、市販品の改良、あるいはまったくの特注設計のレーザビームエクスパンダで満たされるかもしれない。システム要件全般がビームエクスパンダの仕様を決めるのである。
 ビームエクスパンダの選択は、他の光学部品の選択と同様に細部に注意を払う、またそれが所与のレーザ性能を強化し、所定のアプリケーションでパフォーマンスを改善することができる。システムに固有の要件があるかもしれないが、特注ビームエクスパンダは必要でないかもしれない。ここが、改良した市販のビームエクスパンダ、あるいは市販システムでも考慮すべきところである。

ビームエクスパンダの基本

その名が示唆するように、ビームエクスパンダは、入力ビームが大きな径になるように拡大する光学系である。ビームエクスパンダの設計コンセプトは、望遠鏡設計の基本原理から来るものである。コリメートされたレーザビームがビームエクスパンダの片側に入力されると、コリメートされたビームが反対側から出力される。つまり、物体空間と像空間光線が無限遠で一点に集中する。この特性が、無限焦点系としてのビームエクスパンダを規定している。
 2つのタイプの無限焦点ビームエクスパンダがある。これらは歴史的先例にちなんで名づけられている。ケプラー式のビームエクスパンダは、2つの収束レンズを持ち、その焦点距離の和によって配置される。コリメートされた入力ビームは、2つのレンズの焦点に収束し、次に出力レンズに逸れる。ガリレオ式のビームエクスパンダは、1つの発散レンズと1つの収束レンズで構成されている。先ほどと同様に、レンズは、それらの焦点距離の和で配置されているが、この場合は発散レンズが負の焦点距離を持っている点で異なっている。発散レンズへの入力ビームは、光路の途中で一旦焦点を結ぶことなく、収束レンズに伝搬する。
 ビーム拡大率は、ビームエクスパンダの基本的な性能パラメータである。ビーム拡大率は、出力レンズと入力レンズの焦点距離の比に等しい。レーザビームが拡大率mで拡大するとき、ビームの発散角度の大きさは逆数、1/mを乗じる。たとえば、ビームエクスパンダ拡大が2なら、出力ビーム径は入力ビーム径の2倍に、それに対して出力ビームは入力ビームの発散角度の1/2になる。反対に、逆に用いると、ビームエクスパンダは、出力ビーム径を小さくすることになる。しかし、逆に用いた場合、発散角度は増加する。ビームエクスパンダを逆に使うことはできるが、そのような利用は極めてアプリケーション依存になる。増加する発散角度がシステムによっては有害になるかもしれないからである。
 レーザビームエクスパンダは、ビーム径と発散角度を制御する。これらの特性は、最適システム性能を目的にコリメーションを扱うシステム設計者に役立つ。ビーム発散制御は特に、長い伝搬長にとって重要である。そうした状況では、遠方のビーム径が、ビームエクスパンダの利用で小さくなるのが一般的だからである。

特性の選択

レーザビームエクスパンダは、干渉計、レーザ加工機、計測、リモートセンシングおよび多くの他のアプリケーションで用いられる。各アプリケーションは、ビームエクスパンダ選択に影響する特別な要件を持っている。ビームエクスパンダ選択の適切な出発点は、システムのレーザ光源に関連する仕様のすべてを集めることである(図 1)。
 合理的な出発点は、入力レーザビーム径である。各レーザビームエクスパンダには、最大入力径がある。これはオプティクスや筐体の物理的な限界に関連していることが多い。ビームエクスパンダを使用する第1の目標は、たいていの場合、特定出力径を達成することである。したがって、所望の出力径がビームエクスパンダの最大出力径よりも確実に小さいことが重要である。
 ビームエクスパンダには、その上、設計入力径がある、これは一般的には最大入力径よりも小さな径である。ビームエクスパンダの光学性能は、ここで最適化される。ビームエクスパンダの設計入力径が実際の入力ビーム径に一致するとき、システムパフォーマンスは最適化される。
 どんな光学系でも同じことだが、ビームエクスパンダのパフォーマンスは波長の関数で変化する。内部オプティクスや反射防止(AR)コーティングの材料グレードが、ビームエクスパンダの透過特性に影響する。ARコーティングは、設計波長で損失を減らし、さらにレンズ材料と表面形状は所定の波長に最適化されている。光学性能は、ビームエクスパンダの設計波長に最適化されているので、レーザ光源の設計波長、もしくはそれに近い波長でビームエクスパンダを選択すべきである。

図 1

図 1 レーザエネルギーが増すにつれて、より高い品質と精度の光部品およびコーティングの必要になるため、ビームエクスパンダのコストが上昇する(a)。入力アパーチャサイズの増加により、入力アパーチャの拡大すると急速にビームエクスパンダのコストが増加する。収差の非線形依存は入力ビーム径に効いてくるからである(b)。固定設計では、入力アパーチャの増加は、パフォーマンス低下につながる。収差が波面を支配し始めるからである(c)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/09/feature03.pdf