高難度のカメラ応用への鍵、パンチルト・ポジショナの確度と精度

リサ・ゲルブラハト、カイ・モンチーノ

遠隔監視やビデオトラッキングシステムにおいて、パンチルト・ポジショナは高い再現性を備えるとともに、指向の確度と精度をペイロードや画像処理の要件に応じて最大限にできなければならない。

高い精度と確度を備えるポジショニングシステムは、遠隔監視やビデオトラッキングシステムを適切に実装するために不可欠である。飛行物体の追尾、建設現場の正確な画像データベースの構築、無人地上センサによる潜在的脅威の特定と識別など、システムの用途は多岐にわたる。パンチルト・ポジショニングシステムは、要件の厳しい多くの用途に対応するが、ポジショニング(位置決め)の確度、再現性、精度については、よくある誤解がいくつかあり、それらを正しておく必要がある。

ポジショナの基礎

 パンチルト・ポジショナは、センサやカメラの方向調整のほか、対象物の追尾をリアルタイムに行うために用いられる2軸モーション・コントロール機器である。センサがパンチルト・ポジショナに搭載されており、操作員またはコンピュータによってパン軸とチルト軸の速度と位置を制御することによって、センサの向きを目標方向に維持する。
 カメラやセンサシステムの設計時にパンチルト・ポジショナを選択する際には、ペイロード(重量)、キャパシティ(容量)、サイズ、価格のすべてが重要な要素である。無人航空機(UAV:Unmanned Aerial Vehicle)を追尾する場合など、コマンドに従って正確な場所にカメラを向けることが重要である場合は、ポジショニングの確度が最も重要な要素となる。遠隔監視やビデオトラッキングを行う視野(FOV:Field Of View)の狭いセンサを扱う場合は特に、確度を慎重に検討することがシステム設計者に求められる。たとえば、6000mの距離にある移動目標を検出するための4°×3°FOVのセンサには、高い確度が必要である。その距離では、0.04°のポジショニング誤差で、目標物を見失う可能性がある。
 確度とは、指向角度がコマンドで指示された角度にどれだけ近いかを示す尺度である。カメラシステムに対して左に90°という方向指示を与えた場合、パンチルト・ポジショナの確度仕様が±0.05°であるとすると、指向角度は、正確に90°の角度を指していると示されていたとしても、実際には89.95 ~ 90.05°の間になる。
 ここで、再現性と確度は密接に関連している。確度は、何らかの世界測地系を基準に一貫した方向を指すことを示す尺度であるのに対し、再現性は、固定ポイントに一貫して戻ってくることを示す尺度である。たとえば、対象範囲内の特定の位置(空港のセキュリティチェック検問所など)に戻ってくるセキュリティカメラの場合、180°の可動範囲に対する標準的なパンチルトの再現性の値は0.1°である。
 GPS座標などの手段を利用して外部の位置を基準にシステムを校正することで、ユーザーは実際の指向確度を確認することができる。外部校正を行わない場合は、パンチルト・ポジショナの再現性を参考にすることが、合理的で許容できる確認手段である。
 角度分解能とは、パンチルト・システムが調整可能な最小ステップサイズである。高性能パンチルト装置の場合、最小ステップサイズとして0.003°オーダーの調整が可能である。低価格のパンチルト装置の場合は、0.1°の最小ステップサイズが一般的である。中には、モータのマイクロステップ駆動によって分解能が調整可能なパンチルト装置もある。
 分解能が高いほど、動きは「円滑」になり、特に遠距離の画像処理に有効である。たとえば、1km以上離れた位置にある車両や人間を検知する国境警備が挙げられる。パンチルト・システムの指向分解能が用途に対して十分でない場合は、センサやカメラで捉えられない範囲が生じる可能性がある。距離が遠くなるほどこの問題は深刻になる。モーションの一定の角度に対応する、範囲内の半径方向距離が長くなるためである。

指向誤差に寄与する要因

パンチルト・システムは、複雑な電気機械機器である。その構成要素のすべてが、指向確度と再現性に影響を与える。構成要素には、経時劣化が生じるギア/ベルト/レデューサー、リミットセンサに依存するホーミング(帰還)または校正システム、剛性が誤差に寄与する筐体または駆動システムなどがある。
 パンチルト動作が、所定の走査リストに従って両方の軸で同じパターンで繰り返される場合は、プリセット位置には必ず同じ方向から入ることになる。ギアは必ず同じ側からプリロードされるため、バックラッシュ(遊び、ガタ)やギアの摩耗に起因する指向誤差は顕著にはならない可能性がある。
 一方、移動物体を追尾しながら頻繁に方向を変更する必要のある用途では、同じシステムでも指向誤差が大きく現れる可能性がある。また、激しい突風の中で方向調整を行う場合は、パンチルト・システムのバックラッシュに起因する誤差が生じる。
 パンチルト・システムの再現性は、ある方向から目標位置に着いた後に別の方向から目標位置に着く場合に観測することができる。たとえば、パン軸で90°を指すように指示した場合、システムは左側からその位置に入る場合もあれば、右側から入る場合もある。ギアに機械的コンプライアンスやバックラッシュがあれば、それが指向誤差に寄与する。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/07/LFWJ1707_FT5.pdf