レーザ損傷評価新技術で試験能力向上

マイケル・トーマス

欠陥に起因する損傷モデルは、ラスタースキャンテストアプローチとともに、レーザ誘起損傷しきい値試験(LIDT)の幅を広げる。

レーザ技術が進歩して、レーザパワーがさらに高くなり、短パルス化し、新しい波長が入って来るにともない、こうしたレーザをサポートする光共振器素子やビーム輸送コンポーネントを含む光コンポーネントも同じように進化せざるを得なかった。フェムト秒領域から連続波(CW)で動作するレーザがあり、現在オプティクスメーカーは、広範な顧客向けに多くのソリューションを供給することが求められている。
 新しい蒸着プロセスや今までにないプロセス制御が、光コーティングの技術水準の進歩に役立ってきた。とはいえ、さらなる高出力のレーザ光源の開発で制限となるメカニズムの1つは、レーザ誘起損傷、つまり劣化を示すことなく出力に耐えるこれらのコーティング能力である。
 プロセス開発と製造に不可欠なものは、幅広い波長範囲とパルスフォーマットに渡り光コンポーネントの損傷しきい値について、明確に定義され、統計的に妥当な計測を行う能力である。万能策となる試験は何一つ存在しないので、適切な試験には、最終アプリケーションでコンポーネントが直面する波長、パルスフォーマット、パルスエネルギーをエミュレートする多数のレーザが必要になる。とはいえ、特殊な損傷テスト手順の設計や履行において実行すべき一般的な枠組みというものがある。
 ここでは、適切なテスト手順の定義、その結果の解釈で理解すべき最も重要なコンセプトの1つについて議論する。この計測技術の重要部分は、ISO-21254レーザ損傷試験仕様に組み込まれているが、われわれはこれまでにない、刺激的なテスト法について議論する。それは、関連する損傷試験の実施能力を促進してきたものであり、改定計測基準に向けた実装の初期段階にある。
 この議論の一環として、薄膜に生ずるレーザ損傷について厳密に議論する。しかし、この技術は、材料のバルク光学特性のテストにも関連する。

欠陥主導の損傷モデル

レーザ損傷の一定のメカニズムを理解し、さらに膜表面を調べる適切な試験の設計に役立てるために、堆積プロセスに関して仮説を立てなければならない。
 欠陥モデルの背後にある基本は、基板に堆積されたどんな膜でも欠陥を持つということである。欠陥は、特定の堆積プロセスおよびそのプロセスで用いられる材料に固有である(1)。吸収、電界摂動、場合によってはレーザビームの微小焦点のために、こうした欠陥が選択的損傷前兆として機能し得ることの理解は重要である(図1)(2)。
 時として、このような結果が微分干渉コントラスト法顕微鏡(DIC)あるいは暗視野顕微鏡を使って簡単に観察されることがある。あるいはまた、光学表面からの散乱をイメージングすることによって観察されることがある。他の例では、膜内のサイズまたは位置が小さいために、こうした欠陥は、光学測定器では観察することはできない。これらの欠陥は、膜上にランダムに分布する傾向があり、特殊欠陥密度で規定できる。欠陥の性質は、これらの欠陥によって促進されることで、光学被覆の損傷しきい値が、膜に固有の損傷しきい値以下になることである。
 この欠陥が促進する損傷機構を理解すれば直ちに、試験を行う際、表面の十分なエリアを調べなければならないことがすぐにわかる。こうすることで、高信頼に欠陥を見つけ出し明らかにすることができる(3)。このため、損傷試験は、可能な限り大きなビームで行うべきである。

図1

図1 クラスタ欠陥サイト(a)および分離された欠陥サイト(b)におけるレーザ誘起損傷例を示している。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/07/LFWJ1707_FT3.pdf