センシングナノ粒子を持つサスペンドコアファイバはヘルスケアに有益

ジョン・ウォレス

液体充填光ファイバに安全に包含されるプラズモンナノ粒子は、いつの日か病気の検出に役立つ可能性がある。

センシング用に設計された光ファイバは、光学的なセンシング素子を個別あるいは連続的に、ほぼファイバに沿って収容している。センシングのためにファイバが環境に投入されると、光を使ってセンシング素子を働かせ、ファイバ長に沿って環境特性を調べる。一般的な用途には、温度、圧力、あるいはまたひずみ計測が含まれる。ファイバセンシング技術は、センシングされる環境同様、幅広い。これに含まれるのは、建物や橋梁の構造、風力タービンブレード、石油やガス井のダウンホール、その他多くである。
 一つ興味深い分野で成長途上にあるファイバセンシングアプリケーションは、医療およびライフサイエンス分野である。ここでは、センシング長はミリメートルから数メートルの範囲であ
る。例えば石油やガス産業でよく用いられる数キロメートル長のファイバセクションではない。時として、ひとつだけの特性を計測する必要がある。
 疾病の非侵襲的検出は、バイオフォトニクスにおける急成長の研究分野である。光ベースの非侵襲的検出技術で、金属ナノ粒子の利用に依存しているものがある。光でナノ粒子を励起するとプラズモン共鳴が発生する。これはセンシングすべき物質に対して波長を変えることができる、例えば屈折率変化センサとして使える。この技術は、ファイバベースのセンシングに適用できる。
 これらナノ粒子は、光ファイバの外側に付着させることができる。光ファイバは、直径が小さいので、エバネセント波領域がファイバの外表を通って周囲の分析物まで浸透し、ファイバが伝達する光がプラズモンナノ粒子を励起することができる。とは言え、このアプローチは、非常に脆弱なファイバプローブであり、そのナノ粒子は簡単に失われる。加えて、このタイプのファイバセンサは、非常に小さなパーセンテージでしか周囲の分析物をセンシングできない。

サスペンドコアファイバ

プラズモンナノ粒子を付着させるファイバセンシングの代替アプローチは、独ライプニッツ光技術研究所(Liebniz Institute of Photonic Technology)と独フリードリッヒシラー大(FriedrichSchiller-University)の研究者によって開発された。これは、シリカサスペンドコアファイバ(SCF)をベースにしており、ナノ粒子はファイバコアの外側に付着していて、ファイバの周囲クラッドで保護されている(図1)(1)。
 SCF形状では、少数の縦オープンチャネル構成はファイバ軸周囲のパイ・スライス配置となっている。チャネルは、極薄シリカウエブで分離されている。シリカウエブ(膜)は中央で交わって小さな硬いコアを形成する。コアは非常に小さいので、コアを通る光のエバネセント波は、コアを超えて広がり、コアあるいはその付近に付着したプラズモン構造を励起することができる。
 実験用ファイバには、3つのチャネルがあり、各コア・チャネル・エッジのサイズが約30μm。3つの0.5μm厚シリカウエブは、ファイバの中央で交わり、約2.8μm径の硬いコアを形成する。ファイバは、3本のキャピラリをシリカジャケットチューブに挿入して、結合された構造でファイバに線引きされた。
 研究者は、ファイバのチャネル表面内部を機能させ、次に34μm径の金ナノスフィアの懸濁液を蠕動ポンプを使って引き込んだ。最長6mのファイバセクションは、懸濁液で満たされ、ファイバに沿って均質なナノ粒子濃度となった。比較のために様々なナノ粒子濃度のファイバが作製された。
 実験的光学セットアップでは、計測セクションに対して2つの計測設定を用いた。1つは、モード減衰を確定できるようにナノ粒子を含むSCF(NPSCF)ファイバセクションだけで構成されている。第2はNP-SCFファイバセクションに接続されたSCFの光を供給するセクションを含み、これを屈折率感度測定に使用した。

図1

図1 コア付近にプラズモンナノ粒子を付着させたシリカサスペンドコアファイバ(SCF)は、非侵襲生物分析用のセンサとして使用できる。(a)スペクトル図は、モード減衰 vs.波長をファイバ内部(b)の様々なナノ粒子密度で示している(単位、ナノ粒子/平方マイクロメートル)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/05/LFWJ1705_FT4.pdf