超短パルスレーザ増幅に単結晶ファイバレーザを利用

ダニエル・ギロ、ジュリアン・ディディエジャン、パトリック・ビュレドジェール

従来のバルク結晶MOPA増幅には多くの欠陥がある。これらは、今では単結晶ファイバ技術で対処されつつあり、次世代の高出力、超短パルスファイバレーザが実現することになる。

レーザ微細加工アプリケーションでは、短パルスの精密な、高い平均出力により加工速度向上が可能になる。また、高エネルギーは、加工スループット向上をもたらす。短パルスは容易に達成
できるが、拡張性は、エネルギーすなわち平均パワーに関しては、もっと難しい。例えば、光ファイバ内の非線形効果が、増幅中のピークパワーを制限する。
  短パルス幅、 つまり超 短パルス(USP)レーザで出力向上達成のために広く受け入れられたソリューションは、主発振器出力増幅器(MOPA)アーキテクチュアによるものである。MOPA
では、増幅に影響する多様な技術と材料を利用する。次世代USPレーザは、新しいファイバベースのアーキテクチュアを拠り所にして、従来の巨大なファイバ増幅器の欠点を克服する。

増幅比較

バルク結晶増幅器は、ビーム劣化の影響を受ける。これは、利得媒体内で生ずる極めて異常な熱レンズ効果のためである。この本質的な限界により、高出力増幅器の形状は、これら材料内部の熱マネージメントを改善するように進化してきた。
 薄いディスクは、利得媒体の厚さが薄い(約100μm)のでパス当たりの利得が限られている。その結果、効果的な増幅は、マルチパスあるいは再生技術によってのみ得られる。
 マルチパス増幅器は、複雑な光パスを使ってレーザ結晶を何度も光を通過させるが、再生増幅器は高価なEO変調器を複雑なビーム切替手段の一部として使用する。欠点はあるが、薄いディスク増幅器は非常に高いキロワットレベルの出力を生成し、増幅最終段としては理想的である。
 極めて高い平均パワー、最大キロワットレベルの平均パワーがスラブ増幅器では、高利得により達成可能であるが、使用されるジグザグ光学パスのためにビームの楕円度が強くなり、ビーム品質が劣化する。
 短パルス実現のためのバルク代替以外では、光ファイバベースの増幅器は一般にラージモードエリア(LMA)ファイバ、あるいはラージモードエリアのフォトニック結晶ファイバ(PCF LMA)を利用するが、ロッドタイプPCFではピークパワーが一段と高くなる。
 市販のファイバは、最大コア径85μm、伝搬モード65μmである。また、たとえドーピングレベルが高くても、ファイバ長は1m程度である。ファイバ設計がベリーラージコアで極低開口数(NA)では回折限界のビームが得られるが、システムは柔軟性がなく、大きくなる。
 ガイドポンプとガイドレーザモードのオーバーラップにより、光効率が良くなる。 優れたビーム品質で最大200Wの平均パワーが達成可能である。ただし、出力が高くなると、熱光学効果が導波機構に大きな影響を与える。これら擾乱によりLMAファイバは、ハイパワーでは、より高次のモードをサポートする、つまりビーム品質が劣化し、究極的にはミリ秒時間スケールで出力ビームが変動する(横モードの不安定性)。産業用レーザシステムでは、ロッドタイプファイバのピークパワーは、非線形効果を回避するために、一般に1MWに制限されている。
 フェムト秒ファイバレーザでは、チャープトパルス増幅(CPA)によってこの限界を緩和し、40μmコアのフレキシブルPCFファイバをベースにした、ハイパワーシステムが利用可能になっている。とは言え、ピークパワーの制限のために、大きな延伸倍率のコンプレッサ利用が避けられず、コストとシステムサイズが増大することになる。

単結晶ファイバ

単結晶ファイバ(SCF)は、一般に単結晶イットリウムアルミニウムガーネット(YAG)であり、これは長尺、小径で魅力的な光導波特性を持つ。
 レーザ溶融ペデスタル法(LHPG)技術で小径ファイバ(100μm程度)を製造できる。また継続的改善により、目標は、高い平均パワーのレーザシステム向けに、古典的なファイバ同様コア/クラッド構造の達成である。とは言え、そのような構造の作製は、達成は決してあり得ないと言えるほど困難な課題である。特に、直線偏波維持が求められる場合は難しい。古典的なファイバと比べて相互作用長が減少するにも関わらず、結果として得られるアーキテクチュアは、どんな場合でも、高いピークパワーでは、依然としてシリカファイバと同様の制限を受ける。また、これらはYAG材料の非線形特性が高くなれば、さらに悪化する。これが超高速ハイパワー増幅器にとってのソリューションでないことは明らかである。
 直径が1 ~ 2mmのより大きなSCFが、マイクロ線引き技術を用いることで作製された。これは、メガワットのピークパワーに耐えることができるので、高エネルギー短パルス増幅には理想的な候補である。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/05/LFWJ1705_FT3.pdf