プラスチック光部品のコーティング課題を克服
ポリマオプティクスの高性能コーティングは、適切な設計と製造アプローチを用いることで可能になる。
慎重派の光学エンジニアが一度は退けたが、プラスチックオプティクス(ポリマオプティクスとも呼ばれる)が、過去10 ~ 20年で真価を発揮するようになってきた。最先端の光学ポリマの導入と製造技術の改善により今では設計者は、ハイエンドガラス光学コンポーネントさえプラスチックで置き換えることができる。重量やコストはほんのわずかになるので、医療、産業、防衛、セキュリティアプリケーションでの利用が容易になっている(図 1)。プラスチックに対する光学コーティング技術の進歩が、このような移行の決め手になった。基板材料の利用は全く異なるクラスのものであるが、光学的性能や耐久性はガラスに匹敵するレベルが可能になっている。
プラスチック、ポリマ基板への光学コーティングにはいくつか課題がある。プラスチックオプティクスは、ガラスで用いられる一般的な250℃のコーティング温度には耐えられない、また複
合スペクトルプロファイル向けの数100層に必要となる長時間の暴露にも耐えられない。プラスチックへの光学コーティングでは、適切に行わないと、層間剥離、剥離、剥落の傾向が一段と強くなる。特に過酷環境条件に晒される場合である。これは光学性能と環境性能が調和しないことである。所望のスペクトルプロファイルを達成するための層数の増加が、基板とコーティングとの間の応力増大に帰着するためで、特に温度サイクル中に言えることである。
これらの競合する要件により、コーティングを行う場合、そのプロセスを最初から最後まで改良せざるを得なかった。特殊な洗浄、取り扱い、設計、さらにコーティング法の開発である。これらは各プラスチックタイプについて頻繁に行われれている。こうした投資の結果として、経験豊富なベンダーのプラスチック光学コーティングは今では、ガラスで得られるものと同等の光学性能を生み出すことができる。ミラー、フィルタ、ビームスプリッタ、ホットミラーに対する反射防止(AR)から、インジウムスズ酸化物(ITO)コーティングまで、コーティングされたプラスチックやポリマオプティクスは今では、最も厳しいMIL-SPECやISO試験スケジュールを普通にパスするのである。
成膜の冷却
ほとんどのプラスチックの比較的低い融点は、低温成膜プロセスを必要とする。プラズマイオンアシスト蒸着(plasma-IAD)、あるいはプラズマエンハンスト化学気相堆積法(PECVD)などである。基板の変形あるいは反りを防ぐために、40 ~ 50℃の低い蒸着温度は珍しくない。特にアクリルのような柔らかな材料に言えることである。プラズマパラメータは、加減して光学パフォーマンスを微調整する、同様に表面特性を変えたり、環境性能に影響を与えるコーティング応力を変えたりする(1)。
蒸着チャンバーの能動加熱がない場合でも、蒸着プロセス自体に一定程度の内在的な熱があるので、損傷を防ぐにはコーティング率(被膜率)に対する十分な注意が必要になる。チャンバー
のスロー・ディスタンス(throw distance)が熱のコントロールに役立つ、違う材料を利用する場合も同様である。高屈折率層の中には、希土類の利用が定式化されているものもある。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/05/LFWJ1705_FT2.pdf