光産業全出荷額、国内生産額成長分野は光伝送用部品とレーザ・光加工分野
光産業技術振興協会(光協会)は光産業動向調査委員会を設置して調査を実施し、2016年度の調査結果をまとめた。今回の調査結果で殊の外目立つ特徴は、光機器・装置、光部品、これらを合わせた全体が2016年度見込みで2ケタのマイナス成長となっていることである。太陽光発電分野は、前年の調査でも 2ケタのマイナス成長だったが、今回はさらに落ち込んでいるが、これとは対照的に、2ケタの力強い成長が見込まれる分野は、光部品とレーザ加工分野である。
太陽光バブル崩壊のショック
アンケート調査は2016年10月に271社に対してアンケート調査票を発送し、2016年12月から2017年2月に回収することで実施した。111社から回答を得た。
2015年度実績、2016年度見込み、2017年度予測について光協会は、次のように説明している。
2015年度の光産業全出荷額(実績)は16兆8259億円(成長率▲5.1%減)だった。2015年度の光産業国内生産額 (実績) は8兆8962億円 (成長率▲2.3%減)とほぼ横ばいになった。
2016年度の光産業全出荷額(見込み)は14兆5170億円(▲13.7%減)と大幅減少の見込み。2016年度の光産業国内生産額(見込み)は7兆8373億円(成長率▲11.9%減)の大幅減少の見込み。
2017年度の光産業全出荷額は、やや減少と予測。光機器・装置、光部品ともやや減少。2017年度の光産業国内生産額(予測)も、やや減少と予測。光機器・装置、光部品ともにやや減少と予測している。
2015年度の実績を全出荷額(表1)で見ると、光機器・装置、光部品ともに前年度比で落ち込みが目立つのは情報記録分野と太陽光発電分野。特に太陽光発電分野の発電システムは、2014年度実績で2ケタの落ち込みを記録したのに続いて、2015年度実績でも2ケタの落ち込みとなっている。これは、ここで復習するまでもないことだが、2014年に太陽光発電の「接続可能量超過設備」が明らかになったためである。併せて、1kwhあたりの売電価格も下がり続けた。太陽光発電バブル、いわばゴールドラッシュの終焉が明らかになったことを2014年度、2015年度の全出荷額実績、さらに2016年度見込みは示している。これにより2016年度の太陽光発電分野(見込み)は、2014年度の6割程度に縮小することになる。これは、2017年度予測では、さらに縮小する。
構成比で大きな割合を占める太陽光発電分野と入出力分野が、減少見込みであるため、2016年度見込み光産業の全出荷額は、13.7%減となる見込みである。
2015年度実績、成長分野は光伝送用部品とレーザ・光加工分野
昨年の調査結果で発表された2015年度の全出荷額は17兆4377億円、成長率▲3.8%減、国内生産額は8兆4177億円、成長率▲3.7%減と見込まれていたが、今回発表の2015年度実績は、その数字に届かなかった。前年度比で4%弱の減と見込んでいたが、実際は5%を超える減少となった。以下では分野別に増減が特に目立つところを見ておこう。
2015年度実績で、情報通信分野は全体としてはわずかにプラス成長だが、成長の原動力は光伝送用部品である。光伝送リンク、発光素子、受号素子、光受動部品とも2ケタ成長となっており、全体として14.1%のプラス成長だった。光協会の寸評では次のように分析されている。
光伝送リンクは、ネットワークの高速化に伴い、100Gb/s以上が大幅に(5割以上)伸び、100Gb/s未満の減少を埋め合わせて、全体では、大幅に増加(全出荷:17.7%増、国内生産:24.6%増)。
通信用発光・受光素子は、1.3μm帯LDがデータセンターの拡大に伴い、全出荷では、発光素子で前年度に引き続き31.9%増加し、受光素子も22.3%増加した。これには、100Gb/s以上で使われる単価の高い集積光受信モジュール(ICR)が寄与している。また国内生産でも、発光素子が21.4%増、受光素子が32.2%増と、ともに大幅に増加した。
通信用レーザダイオードは、一般に長距離用には1550nm帯、データセンター、メトロ、リージョナルなどの比較的短い距離では1310nm帯が使用される。表2から、2013年度までは長距離用途の1550nm帯が多く生産され、2014年度に短距離用途の1310nm帯のレーザダイオードが増加に転じたことが分かる。これは、光協会の寸評にあるように単価の高い100G以上の製品がデータセンター向けに活発に生産されたことを示している。通信用半導体レーザ全体に占める1310nm帯のレーザダイオードの比率は、2015年度実績で58%(成長率39.6%)、2016年度では62%(同見込み35.3%)に拡大すると見込まれている。金額ベースでは、1310nm帯半導体レーザの2016年度見込み額は、実に2011年度実績の3倍に拡大する。ただし、2015年度の1310nm帯レーザの実績は、前年調査の見込み額をわずかに下回っている。これは複合(モジュール)が見込み以下だったためである。
光増幅に使用される励起用レーザダイオードは、2011年度実績で激減して以来、小さな回復の波はあったが、2014年度実績、2015年度実績、さらに2016年度見込みでも低迷が続き、大きな飛躍は期待できそうにない。これは、光伝送機器・装置の低迷ともある程度は関連している。
光受動部品(光アイソレータ、光減衰器、光分波合波器、光分岐結合器、光フィルタなど)については、寸評では触れられていないが、これらはモジュール構成で使用されるものであり、光伝送リンクなど、光モジュールの増加にともなって増える。2015年度実績は、17.7%となっている。
(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/05/LFWJ1705_market_watch.pdf