経験知が教えるレーザ加工の奥義

井上憲人

スペクトラ・フィジックス社主催「レーザ微細加工の最新ソリューション」セミナーが2016年11月に横浜で開催された。ここでは、基調講演の一部を紹介する。

パルスレーザ加工の特徴

基調講演「パルスレーザ加工の勘どころ」(レーザー技術総合研究所 主席研究員 藤田雅之氏)では、サブタイトルが「SPレーザで見つけたツボ~複合・多層材料加工への効果的なレーザ適用事例」。タイトルから分かるように、新しい材料に対する加工は、確立された理論が最初にあって、それにしたがって加工するというわけに行かない場合がある。加工法は、トライアルとエラーを繰り返して「見つけたツボ」である。
 まず、パルスレーザを使った加工の基本を押さえておこう。パルスレーザを使って加工するとは、「材料を直接加工することではない」と藤田氏は指摘する。固体材料にレーザをあてると、高温でプラズマが発生する。材料が溶けてプラズマが発生するまでの時間が10ピコ秒(ps)。レーザ光は、材料には届かず、プラズマの中の電子に吸収される。レーザからエネルギーを得た電子が熱伝導でエネルギーを固体材料に運び、加熱加工が行われる。
 パルスレーザ加工は波長依存性がある。プラズマの電子密度と空間との関係を見ると、臨界密度があることがわかる。臨界密度は波長の2乗に逆比例することが分かっている。言い換えると、波長が長いCO2レーザよりも、波長が短い、例えばKrFレーザでは、レーザは固体材料近くまで入り込める、つまり微細加工ができる。
 ではサブピコ秒の場合はどうか。プラズマが発生するまで10psかかるので、サブピコ秒のパルスはプラズマに吸収されることなく、固体材料に直接吸収される。言い換えると、「非常に微細な非熱加工が可能になる」。
 加工結果の違いについて藤田氏は、シリコンをターゲットとした時の10ns、200ps、100fsパルスで加工した例で説明していた。加工結果は、プラズマが発生するまでの時間、10psを境目にして変わってくる。フェムト秒では、光はプラズマに吸収されることなく、材料を直接加工する。これが超短パルス加工、非熱加工である。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/01/LFWJ1701ef.pdf