電気励起高帯域ランダムテラヘルツレーザは高い指向性を示す

商用コヒレントテラヘルツ光源は、量子カスケードレーザ(QCL)の形で10年以上前から存在する。これらは分光学とイメージングの両方、時にはセキュリティアプリケーションで有用である。しかし、従来のテラヘルツQCLの大きな難点の1つは、それがサブ波長閉じ込め構造であるためにビームの発散が非常に大きいことである。
 オーストリアのウィーン工科大(TUWien)とオーストリア科学アカデミーの研究グループは、あるレーザコンセプト、ランダムレーザを利用することで発散問題に対するソリューションを考えついた。ランダムレーザは、数年前から、フォトニクス研究でよく見られるレーザコンセプトである。
 ランダムレーザは一般に、多くの散乱点を持ち、その散乱点はレーザキャビティ内にランダムに、あるいは疑似ランダムに分布している。これが多数のレーザモードを作り、モードはキャビティ内の散乱体から散乱体へとループしている。可視や近紫外用のランダムレーザは、どちらかと言うと多結晶散乱体をベースにしているが、波長が3ケタ長いテラヘルツ領域では、状況は非常に異なる。実際、その状況は遥
かに簡単である。研究者たちは、光を垂直に散乱させて出すために、面内キャビティにランダム空孔を作ることで簡単に散乱体を作製した(図1)。結果として得られたデバイスから高帯域発光が得られる(中心波長約3.9THzで0.4THz帯域)。これは大きなキャビティ径から、ほぼ回折限界といえる狭い遠視野出力である(1)。

図1

図1 500μm径円形薄膜テラヘルツ量子カスケードレーザ(QCL)キャビティ構造は、不規則に配列された 20μm径の空孔が開けられており、これらの空孔が発光を垂直方向にコヒレントに散乱させる。空孔のフィルファクタ(充填率)は、それぞれ34%、25%、18%、8%であり、4種の実験デバイスからの広帯域発光スペクトルを示している。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2017/01/LFWJ1701wn4.pdf