カスケード、マルチ高調波発生から全固体DUV発光

ピーター・コッホ、ユルゲン・バーチケ、ヨハネス A. リュリエ

エキシマレーザに代わる全固体深紫外(DUV)光源として、ネオジウム・イットリウム・バナジウムレーザによるカスケード高調波と和周波発生に成功、同時に高ビーム品質と安定性も得られた。

深紫外(DUV)スペクトル領域における干渉性放射は、200nm以下の波長で、リソグラフィ、計測、分光学、ファイバブラッググレーティング(FBG)の作製など、いくつかのアプリケーションで関心が高い。これらのアプリケーションのほとんどは、狭線幅と回折限界ビームプロファイルから利益を受けている。例えば、干渉描画法を用いると、FBGの最大長は、自己アポダイゼーションにより、描き込むレーザの帯域によって制限される。
 DUVスペクトル範囲で直接レーザ発光ができる固体レーザ材料はないが、フッ化アルゴン(ArF)エキシマレーザが100Wを超える出力レベルで193nmのダイレクトレーザ発光ができるので、リソグラフィなどのハイパワーアプリケーションで優勢である。
 反対に、全固体DUV光源は、計測やFBG製造などのローパワーアプリケーションで有利である。これらの全固体光源は、赤外レーザの周波数変換で実現されており、ArFエキシマレーザと比較して優れたビーム品質とスペクトル特性を提供するが、その実現はまだ容易ではない。半導体業界における、例えば複雑なステッパオプティクスの評価など計測アプリケーションでは、出力波長193.368nmと狭帯域が不可欠である。しかし、FBGの製造では、DUVスペクトル範囲の200nm以下であればどの波長でも十分である。

IR波長変換

全固体DUV光源は一般に、IR固体レーザのカスケード第二高調波発生(SHG)、和周波生成(SFG)、差周波発生(DFG)をベースにしている。したがって、基本波と変換方式の選択からなる可能なコンセプトは、DUVスペクトル領域における位相整合と透過性を提供する材料によって決まる。
 こうした必要な特性を提供する非線形結晶ですぐに利用可能なものには、ホウ酸バリウム(BBO)、三ホウ酸リチウム(LBO)、四ホウ酸リチウム(LTB)、セシウム・リチウム・ボレート(CLBO)、また最近ではKBBFが含まれる。しかし、KBBFはその板状構造のために、数ミリ長の結晶しか利用できない。したがって、KBBFは主にピコ秒およびフェムト秒パルスの効果的変換に用いられ、狭帯域ナノ秒パルスの効果的変換には不適切である。
 BBO、LBO、LTBおよびCLBOは低複屈折であるために、200nm以下のDUV放射は、これらの結晶の可視光あるいはIR放射を用いて200nm以上のUV光のSFGによってしか得られない。またLTBは非線形性が小さいので、ほとんどの狭帯域全固体DUV光源は、最後の和周波混合ステージでBBO、LBO、あるいはCLBOを使う。
 以前は、DUV光源はチタンサファイアレーザ(Ti:Sapphire)マスターオシレータとパワーアンプ、ファイバアンプ、それに1μmネオジウム(Nd)レーザ、あるいはそれらの組み合わせで実証されていた。Ndレーザ技術は信頼性があり成熟度が高いために、DUVへの全固体周波数変換チェーンへの多くのアプローチは1064nm基本波で始まる。しかし、190 ~ 200nm間のDUVへの和周波混合はパラメトリック変換ステージを必要とする。これは効率を制限し、帯域を狭くする必要がある。

第7高調波発生によるDUV

200nm以下のDUVスペクトル領域に至る魅力的な代替法は1342nmネオジウム・イットリウム・四酸化バナジウム(Nd:YVO4)のSHGとSFGのカスケードで191.7nm第7高調波を発生させる。これは、DUVスペクトル領域の特定波長を必要としないため、FBG製造では特に関心がもたれている。
 この変換方式では、変換ステージが4段。ビスマスホレートで第2高調波671nm(BiBO で SHG)、447nm 第3高調波は第2高調波と基本波の和周波混合(LBOでTHG)、224nm第6高調波は第3高調波の周波数逓倍(BBOで6HG)、最後に第6高調波と基本波の和周波混合で第7高調波を生成し191.7nmDUV光源が得られる(図1)。
 最初の変換2段は非臨界位相整合を用い、ウォークオフや有限角許容帯域の有害な効果なしで長尺結晶が使える。これらをカスケードすることで、高調波発生法によってわれわれのチームは、独カイザースラウテルン・フォトニックセンター(Photonik-Zentrum Kaiserslautern)で、ブロードバンドおよび単一縦モードDUV光源を両方とも実証することができた。

図1

図1  変換図(a)は、1342nm Nd:YVO4の第7高調波生成を詳説、シングルモード深紫外(DUV)レーザシステム(b)は実験セットアップ(c)で行われた。

ブロードバンドDUV

ブロードバンドセットアップは、マルチ縦モードQスイッチ1342nm Nd:YVO4レーザをベースにしている。このレーザの平均パワーは15.2W、パルス幅は16.3ns、パルス繰り返し周波数10kHz、スペクトル幅29GHzである(1)。同レーザのパルスエネルギー変動は低く<1%、また回折限界ビーム品質であ る(M2 <1.1)。
 周波数3倍段は、位相不整合SHG プロセスの非線形位相シフトを利用し て最適化した(2)。原理的に、この位相 シフトは、非変換基本および基本モードの重ね合わせによって起こるものであり、第2高調波の逆変換によって生ずる。この非線形位相シフトが、基本ビームのカー的自発動作(Kerr-like self-action)の理由である。この自発動作で、第2高調波とTHG結晶内の基本波のビーム径が整合し、第3高調波の品質を著しく向上させることになる。SHG結晶の位相整合温度を離調することで、第3高調波のビーム品質とともに基本波から第3高調波への変換効率が、最大化される。これは、基本波から第2高調波および空間重ね合わせのパワー比率を最適化することによるものである。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/11/LFWJ1611ft1.pdf