フリースペース中赤外秘匿通信を可能にするSNSPDベースシステム

開発中の安全な量子光通信システムは、ほとんどは光ファイバ伝送に依存する。しかし、戦場での軍用通信など、アプリケーションによっては、そうしたシステムのフリースペースバージョンが必要になる。中赤外の大気透過ウインドウ(中赤外:例えば、10μm付近の波長)のために、そうしたシステムは高速中赤外シングルフォトンディテクタを必要とする。
 超伝導ナノワイヤシングルフォトンディテクタ(SNSPD)は、潜在的にそのようなアプリケーションに適している。しかし、SNSPDと結合するフリースペースシングルフォトン検出システムは、予め中赤外域で動作するように造られていない。
 この度、米マサチューセッツ工科大(MIT)のグループが、SNSPDに加えて低温保持装置と光学システムを開発した。狙いはそのような中赤外システムの実現である。その方向に沿った一歩として、研究グループはすでに、近赤外1.55μm波長(この波長そのものは、SNSPDを用いた高効率フリースペース極低温システムでこれまでに使われたことがない)でこのシステムの実証を行っている。

低温保持装置と光学システム

中赤外シングルフォトン光通信システムでは2Kを下回る低い基準温度であるため、極低温システムがセットアップの不可欠の要素となる。たとえ光学的な波長ウインドウがあっても、この温度に達しなければならない。低温保持装置は2つのアセンブリで構成されている。1つは、主にシステムの冷却に関与する。もう1つは、SNSPDチップとレンズを収容している。この第2のアセンブリは直接光学テーブルにマウントするため、システム全体を冷却する前にアライメントを行うことができる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/07/LFWJ_Jul16_P011_wn03.pdf