FD-OCTを用いた正確な深さ測定のための光源キャリブレーション

マークス・デュルク

フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィ(FD-OCT)による正確な深さ情報の作成は、光源の適切なキャリブレーションに依存する。非線形サンプリングを考えるにあたり、2種類の異なる一次 FD-OCT実装が考えられる。スペクトルドメイン(SD-OCT)と掃引光源(SS-OCT)だ。

フーリエドメイン光コヒーレンストモグラフィ(FD-OCT)はコヒーレンスゲート技術である。光波数に応じて、固定した群遅延における参照光とともに、試料からの後方散乱光を合成して形成される干渉シグナルを取得する。異なる遅延における試料からの後方反射光または後方散乱光によって、干渉スペクトル内で振動またはフリンジが形成される。遅延が増加すると、干渉スペクトル内で振動数がより高くなる。そして干渉スペクトルを逆フーリエ変換(FT)すると、深さスキャン情報(散乱体の大きさと位置)を取得できる(自己相関とスペクトルパワー密度との間にあるウィーナ・ヒルチンの定理が原理となる)。
 一次FD-OCT実装には2種類ある。スペクトルドメイン(SD-OCT)と掃引光源(SS-OCT)だ。この2種類は、使われる光源のタイプと検出器によって区別される。かつてのタイムドメインOCTのように、SD-OCTはスーパールミネセント発光ダイオード(SLED)といった低コヒーレンス広帯域源を使用するが、検出器アレイを横切る検出アーム内の干渉シグナルスペクトルを分光する分光計に依存する。SS-OCTでは、一つの検出器を用いて、広帯域スペクトル全体で線幅の狭い光源を時間的に掃引して干渉シグナルを取得する。いずれの実装にも、光周波数(ν=c/λ)または波数空間(k空間、k=2π/λ)において、本質的には非線形サンプリング処理が含まれている。このため、深さと範囲の正確な情報を抽出するときには、逆FTに先立って均一なk空間の干渉スペクトルサンプルの取得を目的とした、周波数またはk空間のキャリブレーションが必要となる。

スペクトルドメインを考える

SD-OCTシステムでは、広帯域の光源と干渉計(サンプルアームと参照アームから構成される)で生じる干渉シグナルを計測するために、分光計とラインスキャンカメラ(フォトダイオードアレイ)を用いる分光計には、ビームアラインメント光学、回折格子、均一に配置された感光ピクセルをもつラインスキャンカメラが一般に組み込まれている。格子は空中で次の式によって入力スペクトルを分光する。

m*f*λ = sinφ - sinΘ

mは格子の回折次数、fは空間周波数、λは波長、φは入射角、Θは回折角である。格子によって分光された光の回折角が、波数の非線形関数k=2π/λであることがすぐに観察できる。そのため、ラインスキャンカメラが記録したスペクトルは、k内に不均一に配置される。
 現在の方法では、逆FTを実行する前に、計測されたスペクトルのインターフェログラムを補間することと、波数ドメインにデータをスケール変更することが含まれている。コンピュータとしては集約的になるが、この処理は、ピクセル間の不均衡な波数の配置を効率よく修正し、OCTイメージの分解能を維持する。しかしながら、このスケール変更処理は第2の問題を解決できない。第2の問題とは、検出アレイのピクセルによって統合されたスペクトル幅が帯域幅において不均衡であることだ。これはイメージング深さのOCTシグナルの低下につながる。

掃引光源を考える

SS-OCTでは、波長を掃引した狭帯域レーザは、やがてスペクトル符号化を作成する。スペクトル情報は、一時的な干渉シグナルを記録することで取得できる。この場合の非線形特性は、2つの原因から生じる。
 第一は、共鳴またはポリゴンスキャナ内のファブリ・ペローフィルタまたは回折格子に基づくような、掃引レーザにおける波長選択要素には、光周波数ではなく、波長の変化に比例する駆動信号(電圧など)がある。そのため、SD-OCTの場合に近いが、ν=c/λを用いて波長(λ)を周波数(ν)に変換する補正が必要となる。
 第二に、これら光学フィルタのスキャン機序は、圧電、静電、微小電気機械システム(MEMS)アクチュエータ、もしくはガルバノメータから構成されているのが一般的であり、経時的にスキャンの線形性や不変性において異なる制限、さらに異なる動作条件がある。特に掃引する周波数が高いと、スキャンシグナルは、より顕著な非線形な掃引動作を生み出す正弦波パターンに制限されがちである。
 この非線形スペクトル掃引を解決するためには、k空間をキャリブレーションする2つの技術が通常考えられる。ダイレクトなkクロックサンプリングと、線形の経時的サンプリングである。これらはSD-OCTで使われるソフトウェアの再キャリブレーションに続いて実行される。
 ベースライン性能の計測と関連する重要なパラメータには、掃引レーザの線幅またはコヒーレンス長、サンプリング間隔、検出帯域幅、ノイズ等価バンド幅がある。
 線幅、掃引範囲、パワーという基本的なレーザ源のパラメータのうち、瞬間の線幅(δλ)またはコヒーレンス長(lc )は、レーザ動作とそれによるイメージング性能を理解する上で最重要項目である。さらに、実際のSS-OCTイメージングの実装では、イメージング深さは2つのパラメータに本質的に影響される。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/07/LFWJ_Jul16_P042_045_Bio02.pdf