高速カメラの選択:新しいイメージングセンサと技法を理解

ゲイル・オーバートン

安価なデジタルカメラでも1000フレーム /秒の速度に達するものが存在するが、生物学や産業分野のプロセスの瞬間を捉える科学用カメラでは、新しい検出器やイメージング技法を駆使して数千から最大で100万フレーム /秒もの処理速度が達成されている。

ウィキペディアによると、高速カメラとは、フレームレートが毎秒250フレーム(フレーム/秒)を超えるものを指すという。しかし科学的観点からは、そのような速度ではまるで子供のおもちゃだ。安価なデジタルカメラでもごく普通に1000フレーム/秒を超えており、非常に高速なものでは、1兆フレーム/秒もの速度を達成するカメラが開発されている。
 しかし、多くの研究施設でレーザによる点火、超高速産業用製造ラインにおける組み立てや加工、化学的および生物学的事象、さらには自動車衝突試験結果の研究用に用いられる科学用カメラは、数千から100万フレーム/秒程度のイメージング速度を備える、CMOS(Complementary Metal Oxide Semicon ductor:相補型金属酸化膜半導体)カメラ、またはCCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)カメラである。
 当然ながら、イメージング速度はイメージング解像度と光量に密接に関わりがある。絶えず進化し続ける高速イメージングカメラの能力を分析すると、とどまることなく拡大していく一連のアプリケーションに対して、その瞬間をユーザーが捉えられるようにしているのは、フォトニクス分野の進歩であることがわかる。

カメラの中心要素

カメラはすべて、光学部品、オプトメカニクス部品、検出器、筐体、電子データのストレージおよび制御部品を備える、完全なオプトエレクトロニクスシステムである。しかし一般的にどのようなカメラも、その性能はイメージングセンサによって決まり、イメージングセンサを中心としてその他すべてのシステム構成要素が設計されている。
 一般的に、CMOSセンサは高速イメージング分野に最適と考えられている。限られた数のピクセルからなるCCDセンサは、各ピクセルで入射光が電圧に変換され、電圧は限られた数(1~数個)の出力ノードを介してアナログ信号としてチップへと送信される。一方、CMOSセンサは、センサチップ内にアンプやD/Aコンバータ(DAC)を搭載しており、消費電力が高く読み出しに時間がかかるという、オフチップのCCD画像処理の問題を回避することができる。「CMOSセンサは、多くの高速カメラの中心要素であり、センサタップ・チャンネル数を増やして光子から電子への変換を高速に行い、センサから電子をすばやく『取り出す』ことが最大の検討事項となっている」と米フォトロン社(Photron)のセールスおよびマーケティング担当ディレクターを務めるアンドリュー・ブリッジズ氏(Andrew Bridges)は述べる。「D/Aコンバータの数が多くなると、大量の熱が生成される可能性がある。メモリの容量拡大に対する需要も高まっており、それも熱の生成につながる。幸い、理想的なオンボードメモリも、データをすばやくオフロードする技術によってCMOSで実現することができる」(ブリッジズ氏)。
 生成熱とセンサノイズの低減に加えて、「光感度は、高速イメージング分野における重要な要素だ」とブリッジズ氏は述べる。「FASTCAM SA5が2008年頃に発売されたとき、1万というISO感度は画期的だった。現在、当社のFASTCAM SA-Zに搭載されている新しいセンサ電子部品によって、12ビットのモノクロ画像で5万、36ビットのベイヤー(Bayer)カラー画像で2万のISO感度が、どちらも20μm四方のピクセルを用いて達成されている」と同氏は言う。ブリッジズ氏によると、ゲインを増加させつつノイズを大幅に抑える新しい回路設計の開発によって、感度が改良されたという。「当社のFASTCAMカメラは、高いフレームレートにおける模範的な光感度に関する業界規格ISO Ssat 12232に厳格に準拠して測定を行っている。照明を追加することなく、同一の光量条件の下で、シャッター・露光速度はより短く、被写界深度はより深くなっている」とブリッジズ氏は述べている。
 標準的なエリアスキャンカメラの代わりに、ラインスキャンカメラを使用することもできる。ラインスキャンカメラの速度は、1秒あたりのフレーム数ではなく、センサによって移動体がスキャンされるときに、数千ピクセルからなる数ラインでデータを収集する周波数で測定される。これらのカメラは露光時間が短く、産業用マシンビジョン分野向けに、通常は高輝度光源を備える。
 独クロマセンス社(Chromasens)のトライリニアカメラは、3本のRGBセンサラインを非常に近接して配置して移動体の画像をキャプチャすることにより、高い色精度を達成する。「allPIXA wave」カメラは、最大ライン長1万5000の4本のラインからなるクアッドリニアのCMOS カラーラインスキャンセンサをベースとしており、150kHzの速度で850メガピクセル/スループットで動作する。
 カナダのテレダイン・ダルサ社(Teledyne DALSA)は、CCDカメラの一般的なラインレート数万程度に対して、1億フレーム/秒でのイメージングが可能なカスタムセンサとカメラを2003年に開発した。フレームレートの高いこのカメラは、非常に短時間のイメージング(バースト)が必要で、限られた数(10~15)の画像をキャプチャし、それらの画像を低速で読み出して、単一の事象に付随するインシデントに関連する詳細情報を取得する用途を対象に、ピクセルがカスタム設計されていた。
 レーザ誘起衝撃、マイクロデトネーション、超高速衝突などの弾道事象や、一部の生物学的プロセスなど、持続時間が数十マイクロ秒から数十ナノ秒の超高速事象に対し、英米スペシャライズド・イメージング社(Specialised Imaging)は、光学ビームスプリッタを中心として構成された、複数の非常に高解像度(最大1360×1040ピクセル)のセンサを採用している。100フレーム/秒から最大10億フレーム/秒までの任意のフレームレートで、各センサを順に起動することで、センサデータの高速読み出しが必要な場合の制約を回避することができる。ビームスプリッタは、100lp/mmを超える空間解像度とほぼゼロの視差で、歪みのない画像を維持しつつ、一次画像を最大16のポートに分割する。
 スペシャライズド・イメージング社のカメラは、ICCD(Intensified CCD)センサを採用している。このセンサは、ゲート時間わずか数ナノ秒の電気光学シャッターとして機能するとともに、短
い露光をCCDで記録可能なレベルにまで増幅するゲイン段としての役割も果たす。CCDは、マイクロチャンネルチューブプレートに光ファイバ結合されている。高速蛍光体(残光時間〔decaytime〕:300ns)とライン転送型CCDを採用することにより、1つのICCDから2つのフレームを550nsのフレーム間隔以内にキャプチャ可能で、基本的に145万フレーム/秒という最高速度を備える16フレームカメラが、8チャンネルのICCDカメラから構築されていることになる。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/07/LFWJ_Jul16_P032_036_photonicsproducts.pdf