100Gbit/sを超えるラインレート

ジェフ・ヘクト

スーパーチャネルは、今では標準シングルモードファイバで数百Gbit/sの長距離伝送を可能にしている。ラージモードエリア(LMA)ファイバは、スーパーチャネルをさらに遠くへ、高速に伝送し、新しいマルチコアファイバ(MCF)およびフューモードファイバ(FMF)は将来の進歩を約束している。

100Gbit/sコヒレント伝送は世界のファイババックボーンネットワークで標準になっており、今後さらに容量が増える。数百Gbit/sで動作するシステムがいくつかあり、傑出した実験では数十の独立したパスで光を伝送できる個々の開発ファイバで1ペタビット(1015bits/s)を超えている。それは、1990年代の爆発的な成長を想起させる。
 しかし今日の状況はもっと複雑だ。それは技術が3つの領域で進展しているためで、ステップインデックス「標準」シングルモードファイバをベースにした現行システム、ラージモードエリアファイバを利用する新システム、新しいファイバタイプで空間分割多重の開発がある。
 コヒレント伝送とデジタル信号処理は、1980年代から使用されている9μmコアのシングルモードファイバを最大限利用している。バブル期に敷設されたダークファイバは、北米やヨーロッパルートで広く利用可能なまま残っている。今日の長距離コヒレントシステムは、そうしたファイバで100近い50GHz光チャネルで100Gbit/s信号を伝送でき、トータルでファイバペア当たり10Tbit/sになる。また新技術により容量はさらに増える可能性がある。
 ラージモードエリアファイバは、新規の海底および陸上ケーブルで好まれる。その低非線形性により、より長い距離で伝送できるデータレートはもっと高くなる。
 長期的には、開発者は新しいファイバタイプに取り組んでいる。新タイプのファイバは、ファイバ内の独立したコアおよびフューモードコア内の独立したモードを使用する空間分割多重により容量を増やすことができる。潜在的なアプリケーションには長距離伝送および、サーバファーム内からメトロ分配ネットワークまでの短い距離が含まれる。

標準シングルモードファイバの限界

今日の10Tbit/s容量は、1980年代半ばに標準シングルモードファイバが400Mbit/sの伝送を始めてから25000倍の容量増となる。コヒレントトランスミッタとともに100Gbit/sの倍数単位で「スーパーチャネル」を形成すると、容量はさらに30%増やせる。この技術は、複数のレーザ送信器からの信号を結合することであり、従来50GHzでチャネルを分離しているバッファゾーンを除去することになる(図1)。
 実証ずみの単チャネルデータレートはテラビットレベルを超えている。2014年、インフィネラ社(Infinera)は、ハンガリーのブダペストとスロバキア共和国のブラティスラバ間の敷設ファイバループで、1Tbit/sスーパーチャネル信号を500km伝送した。1個のフォトニック集積回路(PIC)は10個のレーザ光源を収容していた。プロトタイプ1Tbit/sラインカードは偏波多重四位相変位変調(DP-QPSK)を用いるとさらに長い距離をカバーできると同社のジェフ・ベネット氏(Geoff Bennett)は言う。現在の生産レベル500Gbit/sラインカードを用いてインフィネラ社とフェイスブック社(Facebook)は、再生なしで4000kmを伝送した。ベネット氏は、その成果は、第2世代コヒレントシステムで信号処理をトランスミッタとレシーバの間で分離したことによるものであると語っている。
 しかし、標準シングルモードファイバは、エラーフリー伝送能力ではシャノン限界の非線形バージョンへ近づきつつある(1)。ノイズが従来のシャノン限界を強いる。そのため、信号対ノイズ比(SNR)増やすためには、もっと高い出力を生み出す複雑なコーディング方式によって線形媒体の容量を増やす。しかし、光ファイバは非線形媒体であるので、複雑なコーディングからの余分なパワーは、非線形ノイズを生む。これは、SNRを低下させ、したがって伝送効率に、一段と厳しい制限を課することになる。通常は帯域のHzあたりの信号のビット/秒で計測される(図2)。

図1

図1 50GHzスロットで10個の100Gbit/sチャネルを利用する1Tbit/s伝送(a)と、375GHzの範囲で37.5GHz間隔で10個のレーザを用いる1Tbit/sスーパーチャネルの比較。スーパーチャネルは、従来の50GHzチャネル(b)間にあるバッファレイヤなしでバンドを広げる。

図2

図2 標準シングルモードファイバシステムは、右上方に示したように、非線形シャノン限界に近づきつつある。青線は実験レベルのデモンストレーションを示しており、黄色領域は商用製品を示している。縦軸は、エルビウムファイバによるCバンド(右)とスペクトル効率(左)を示している(提供:ベル研究所(3)、ピーター・ウィンザー氏)。

ラージモードエリアファイバでデータ容量が増加

ラージモードエリアファイバは、より大きな領域に信号を広げ、パワー密度と非線形ノイズを減らす。これによって伝送容量と距離が拡大されるので、ソリッドコア・ラージエリアファイバは、新規の長距離陸上および海底ケーブルで標準になっている。コーニング社とOFS社の両社が実行モードエリアが少なくとも125μm2、1.55μm帯で減衰量0.19dB/km以下のファイバを提供している。フォトニック結晶ファイバ(PCF)では実効モードエリアは1000μm2を超えているが、その損失は通信用途にはあまりにも大きすぎる。
 ラージモードエリアシングルモードファイバには通常、高い波長分散がある。しかし、それはもはや問題ではない、コヒレント伝送とデジタル信号処理が強力な電気分散補償を可能にしているからである。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/07/LFWJ_Jul16_P026_028_frontier.pdf