セルフセンタリング・ナノスパイクが高出力レーザ光を光ファイバにデリバリ

光ファイバ産業に携ったことがあるものは誰でも、光結合を最大化するためのファイバとファイバのアラインメントが簡単な作業ことではないことを理解しており、技術者はこの作業に何万時間もかけてきた。しかし中空コア光ファイバに、簡単にレーザ光を入れる新しい巧妙な手段を独マックスプランク光科学研究所の研究者が開発した。その技術は、光トラッピング原理を使用する。これは、テーパ状の終端した光ファイバ、つまり「ナノスパイク」と組み合わせる。こうすることでレンズレス、無反射で、自己安定化が可能となり、標準的なシングルモードファイバから中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)と自己整合的に結合して、結合効率約88%が達成できる(1)。

威力を感じる

光ピンセットとして知られる現象は、ナノ粒子が存在する中でレーザ光によって生ずる力の段階的な変化を利用してその粒子の動きを操作する。先頃、ナノプラズマ構造が、非球面粒子でも操作できるように変更できることが発見された。この場合、いわゆる自己誘導的反動というプロセスで相対的に小さなレーザパワーを利用する。ここでは、対象物つまり粒子を捕まえる力の大きさが増幅される。それには、金属膜内のフォトニック結晶キャビティ、つまりナノアパチャからのフィードバックを利用する。
 キャビティへのレーザ光デリバリによく使われる構造は、光ファイバテーパである。これは、光ファイバを加熱し、引き延ばし、時にはテーパに入る光がテーパ領域を進む過程でモード展開を感じるようにエッチングすることもある。この実験のために、研究チームは標準の125μm径シングルモードファイバ(SMF)から始めた。それを加熱して直径400nm程度にテーパ化し、次にフッ化水素酸エッチングでファイバ先端の最終径を150nm、長さを1mm長にした。
 ナノスパイクに対する力を定量化するために計画された実験で、先端を50nmステップサイズ圧電x-y-zステージでコントロールし、HC-PCFの12.1μm径のコアに挿入した(図1)。Nd:YAGレーザからの波長1064nmの光をファイバ先端に入れ、99:1カプラで入力光とナノスパイクからの後方反射をモニタする。HC-PCFから結果として得られるビームの近接場プロファイルは、CCDカメラで記録し、ナノスパイクが中空コアに挿入されたときの横の動きをクアドランフォトダイオードが追う。周囲圧を制御するために、ナノスパイクと30cm長HC-PCFは真空チャンバに入れている。

図1

図1 ナノスパイク(青色)は、光学機械的に(a)中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)に結合。上方挿入図は、このセットアップの光学顕微鏡図およびナノスパイクの最終セクションの画像を示している。シミュレートしたナノスパイクモード(ポインティングベクトルのz成分をプロット)の断熱的進展はナノスパイクをHC-PCFコアの中心にして50μmの挿入長で示している(b)。グレーの影部分はコア壁、局所モードフィールド径は点線カーブで示している。右のプロットは、PCFの走査型電子顕微鏡(SEM)画像と、ナノスパイクで励起したモードを計測した近接場プロファイル。(画像提供:マックスプランク光科学研究所)

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/07/LFWJ_Jul16_P012_013_wn01.pdf