光協会調査2014年度全出荷額ファイバレーザ137%成長

井上 憲人

光産業技術振興協会(光協会)は光産業動向調査委員会を設置して調査を実施し、2015年度の調査結果をまとめた。今回の調査結果で際立つ特徴は、太陽光発電分野の大幅な成長率低下、レーザ加工分野の力強い成長である。

太陽光発電分野の成長失速

アンケート調査は2015年10月に313社に対してアンケート調査票を発送し2015年12月から2016年2月に回収することで実施。回答を得たのは97社。
 2014年度実績、2015年度見込、2016年度予測について光協会は、次のように説明している。
 2014年度の光産業全出荷額(実績)は18兆1192億円(成長率4.0%増)。光産業国内生産額(実績)は8兆7425億円(成長率3.9%増)とプラス成長。
 2015年度の光産業全出荷額(見込み)は17兆4377億円(▲3.8%)。光産業国内生産額(見込み)は8兆4177億円(成長率▲3.7%)。
 2016年度の光産業全出荷額は、横ばいと予測。光機器・装置、光部品ともに横ばい。分野別では、ディスプレイ・固体照明分野とレーザ・光加工分野以外は、横ばい、または減少。2016年度の光産業国内生産額(予測)も横ばい。光機器・装置、光部品ともに横ばいと予測している。
 光産業の全出荷額(表 1)から分かるように、2014年度の光機器・装置の成長が急落し、全体の成長率を押し下げている。2013年度実績は、光機器・装置の成長率は11.6%、光部品は17.4%、合計13.2%の成長だった。下降トレンドが鮮明に表れているのは光伝送機器・装置、情報記録分野。これに加えて、2013年度の実績で100%を超える成長率だった太陽光発電システムの成長率が2014年度実績では17.0%となり、国内光産業の牽引車の役割から一歩退いたことも全体の成長鈍化に大きな影響を与えている。
 この2014年度の傾向は、2015年度はさらに悪化すると見られており、装置、部品ともマイナス成長が見込まれている。2ケタ成長が期待できるのは、固体照明とレーザ・加工分野しか残っていないというのが2015年度(見込み)についての調査結果。

表1

表1 光産業の全出荷額。(単位:百万円、%)

2014年度、成長分野はレーザ・光加工

2014年度の実績を見ると、全出荷額、生産額とも4%程度の成長にとどまっている。2013年度の2ケタ成長から転落した最大の原因について光協会は「太陽光発電分野が、Feed in Tariff(FIT)の制度変更により急ブレーキが掛かった」と分析している。太陽光発電システムは、2013年度との比較では、全出荷:113.7%増→17.0%増、国内生産:104.1%増→11.5%増。また、太陽電池セル・モジュールについては、「価格低下の影響を受け、全出荷では、▲2.9%のやや減少となった(前年度は、55.9%増)。
 成長低迷分野は他にもあり、その一つが情報通信分野。この分野の2014年度実績は、全出荷額では、光伝送機器・装置は、ルータ・スイッチと光ファイバ増幅器(EDFA)を除いて軒並みマイナス成長となっている。最も大きな落ち込みは幹線・メトロ系で、36.9%減。表から直ちにわかるように、幹線・メトロ系の実績は全出荷額と国内生産額がほぼ等しい。言い換えると、これら装置類はほとんど国内市場向けに生産し、出荷しているということである。輸出は極めて少ないと考えてよい。つまり、国内装置ベンダーの製品は世界市場ではほとんど競争力がない。
 一方、光伝送用部品は2.0%の成長となっている。光伝送リンク(1~100Gbps)は、ネットワークの高速化に伴い、100Gb/s以上が前年度に大幅に伸びた反動で、全出荷で▲4.7%とやや減少し、国内生産では▲20.9%と大幅に減少した。
 通信用発光・受光素子は、1.3μm帯LDがデータセンターの拡大に伴い、全出荷では、発光素子で前年度に引き続き11.8%増加し、受光素子も23.1%増加した。これには、100Gb/s以上で使われる単価の高い集積光受信モジュール(ICR:Integrated Coherent Receiver)が寄与している。一方、国内生産では、前年度に生産が大きく伸びた反動で、発光素子(▲6.5%減)及び受光素子(▲6.3%減)ともに減少した。
 データセンター(クラウド)セグメントの相対的好調は、長距離通信用の1.55μm帯の成長率の30%近い落ち込み、逆に1.3μm帯のレーザの30%を超える高い成長率に示されている(表 2)。昨年発表された、2014年度の見込みでは、1.55μm帯は19%を超える成長が見込まれていたが、実績では大幅減となった。これには、急速に進んでいる100G製品の価格低下も一定程度反映されている。
 光産業の多くの分野で成長低迷が続く中で、好調を謳歌しているのはレーザ・加工分野。この分野について光協会は、「自動車を中心とする設備投資増加の影響を受けて、エキシマレーザを除く全てのレーザ応用生産装置でプラス成長となり、全体では、大幅に増加した(全出荷:13.4%増、国内生産:15.2%増)。特にファイバレーザの伸びが大きく、大幅に増加した(全出荷:137.5%増、国内生産:146.4%増)」と分析している。

表2

表2 上段が光通信用半導体レーザ、下段が加工用発振器。(単位:百万円、%)
通信用レーザでは、2014年度の実績は18.2%成長。特に目立つのは、長距離通信用の長波長1.55μm帯レーザの落ち込み、それに対して1.3μm帯レーザの32%を超える成長率となっている。1.3μm帯は、10km程度の比較的短い距離の伝送に使用される。1.55μm帯は、昨年の調査では、19.2%の成長(約199億円)が見込まれていたが、実績は前年度比29.4%減(約118億円)となった。一方、1.3μm帯のレーザは、昨年調査の見込み成長率27.4%を上回る32.1%成長の実績(約147億円)となっている。高成長が際立つのはファイバレーザ発振器。ただし、レーザ発振器に占める割合は、2015年度でも10%に届かない。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/07/LFWJ1605_P14-16_marketwatch.pdf