色計測で新需要を生み出すLED照明

ジェフ・ヘクト

LED光源を最大限に活用するには、色計測と基準の改良が必要である。また、従来の明所視と薄明視の範囲で目の感色性がどのように変化するかを理解する必要がある。

新しい光源と人の視覚の研究では、色計測と基準の継続的見直しが避けられなくなっている。目的はどのように色が見えるかの定量化を改善することであるが、それはあいまいなところがある。光源のスペクトル、見ている対象の反射スペクトル、人の眼の感覚にそれは依存する。また、最後の点は、われわれの五感に依存するので、本質的に主観的である。
 色計測の基本概念は、フランスの頭文字CIE(Commission Internationale de l’éclairage)で知られる国際照明委員会が、数十年前に体系化した。当時普及していた光源は太陽と白熱電球であったので、色温度などの概念が確立された。これは、様々な温度で黒体の連続スペクトルと比較することで照射光の色を計測するものである。それは当時でも近似値であり、初期の基準は蛍光ランプで調整される必要があった。現在、色基準は固体LED照明をカバーするように調整されつつある。
 街灯で使用されているLEDの青色が勝るスペクトルは、別の基準に対して課題となっている。道路照明の仕様は、明所(日中)視と暗所(夜)視の間の移行について時代遅れの仮定に基づいている。

色温度

光源の色を計測する最も簡単な方法は、光源スペクトルと黒体光源のスペクトルを比較することである。これによって相関色温度が得られる。相関色温度とは、光源スペクトルに最も近い色バランスを持つ黒体光源の温度(ケルビン度)として定義された1つの数字である。この数字は一般にLED電球の色を規定するために使用される。色温度2700°Kの意味は、電球が赤色が濃い、つまり「温かい」スペクトルを持つということである。これは、通常室内照明で好まれる。色温度3000°Kは、もっと黄色が強く、「暖白色」と言えるかも知れない。仕事場は、通常色温度が4000°K程度の「クールホワイト」の光で照明される。青色純度の高いLED電球の中には、色温度が太陽の5700°Kよりもはるかに高い色温度を持つものもあり、目には青みがかって見える。
 色温度スケールの平易さはコンシューマー製品には魅力的であるが、それは本質的に不正確である。LED発光は黒体放射曲線から程遠いからである。固定色のコンシューマー LED光源は一般に、鮮やかな青色LEDの光と、黄色を中心とする広帯域発光のリン光とを結合している。リン光を励起するために青色の光をさらに多く使うと、色温度は低下する。赤いリン光、つまり赤色LEDを加えると一段と低い色温度を出すことができる。可変色電球は、赤、緑、青色のLEDを結合しており、その相対出力を変えると色温度が変わる(図1)。
 照明業界はもっと正確な計測と基準を使って、製品が確実に見た目によく見えるようにする。通常、その意味は、目には白色に見えるような混合色を発光するということであり、またそのような混合は色温度に依存する。その目的を達成する重要手段は、色度で客観的に色を規定することである。色度は2つの独立した質、色相と彩度に依存している。これらは二次元「色度空間」にプロットされる(図2)。色度空間は、黒体スペクトルと黒体曲線がクロスする線で混色もプロットする。ここでは、相関色温度は一定である。
 技術についていくために基準は進化し続ける。米国規格協会(ANSI)は、2008年に固体照明色度基準の草案を発表した。最終版は2010年、さらに2013年と2015年に改訂版を出している。これらの変更では、指定された白色範囲2200は6500°Kに拡張された(1)。現在、特別グループがさらなる調整に取り組んでいる。LED照明コンサルタント、ジェンチョン・チアオ氏によると、主要な問題は最近の研究によって明らかになった、人々が白色と感じるものと白色光として好ましい色合いとの違いを調整することである(2)。

図1

図1 青色LEDは、リン光を励起して長波長側で発光させ、青色光が白色光となるようにできる(a)、また赤、緑および青色光を統合して白色光を生成するようにできる。3色の相対出力の調整により波長をチューニングできる(b)。他の変更も可能。

演色とメタマー

ほとんどの物体は光を反射する、通常われわれは色は物体に備わっていると考える。しかし、反射された光の実際のスペクトルは、光源と物体の反射性とのスペクトルの所産である。光源を取り換える時われわれはその違いに気づかない。これは、物体が特定の色を持っていると考えているからである。さらに、光源を並べて比較しなければ、その違いを認識することはない。
 この効果は演色と言われており、特定の光源を使うことの影響は、その演色評価数(CRI)によって計測される。CRIは、光源が照射する物体と白熱電球のような黒体参照光源との色の違いを比較する。色が正確に同じに見えるなら、CRIは100である。一般的なLEDは約80、これは一般に許容範囲にあると見なされる。しかし、照明の問題の複雑さのために、この単純な数値尺度の値は疑問視されてきた。
 1つの問題は、違うスペクトルの光源を眼が同じ色として感じることができること、つまりメタメリズム効果である。これは、脳が眼の赤、緑、青の受容体の反応のバランスをとって色相、つまり光の色を決める仕方からくるものである。着色物からの反射がスペクトルを変える、また眼には違ったように見えるかも知れない。

図 2

図 2 色度ダイアグラムが示しているのは、色相と強度に基づいた色と、差し込み図で示した、ある色温度の光源に対応する領域との関係である(出典はWikimedia Commons/User: PAR)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/03/LFWJ1603_P38-40_frontier.pdf