分光器キャリブレーションはLEDと非線形最適化を使用する

マイケル・ケース

正確で再現性のある波長と強度情報は、LED光源と非線形最適化を使用する分光計では可能だ。システムの光学素子、回折格子、ディテクタ感度における変動を考慮に入れている。

分光測定は、重要な化学的計測技術であり、物質が発光、吸収あるいは散乱する電磁放射を調べ、特定し、定量化するために使用される。変動には、ラマン、蛍光、フォトルミネセンス、レーザ誘起蛍光(LIF)、時間分解、顕微分光およびレーザ誘起破壊分光法(LIBS)が含まれる。
 これらの方法の共通点は、スペクトル情報、すなわちスペクトルピークの波長の位置と相対強度の正確な同定を要件とする。ここでは、化学的、物理的、生物学的プロセスを洞察することが目的となっている。
 基本的な分光システムでは、光源が放出する光は開口部(スリット)に送られ、そこでコリメートされて回折格子(ディフラクティブグレーティング)に向かう(図1)。グレーティングは、光を個別波長に回折し、それらは次にミラーに送られる。イメージング分光では、ミラーは焦点面で分散された光の像を作る。また、CCDを置いて波長の関数としての強度を検出し表示する。さらに、適切に較正されていれば、その分光システムは正確な、再現性のある結果を提供する。
 どんな分光計でも最適な精度と再現性を確実にするために、プリンストン・インスツルメンツ社はIntelliCalというキャリブレーションシステムを開発した。同システムの特徴は、精密波長キャリブレーションのための非線形最適化、強度キャリブレーションのためのLEDベース米国標準技術局(NIST)トレーサブル光源およびソフトウエア駆動動作である(1)。

図 1

図 1 典型的な分光システムは、光源、光ファイバ、分光器とCCDディテクタで構成されている。

波長キャリブレーション

ほとんどの研究者は、スペクトルデータの正確で再現性のある確認のために分光計やイメージング分光器が波長キャリブレーションを含むことに同意している。メーカーは、分光器の最終位置決め最中に波長キャリブレーションに細心の注意を払い、研究者は所定の波長キャリブレーションを行う。目的は分光システムが間違いなく十分に特徴が出せるようにすることである。それは、分光システムで行われる、最も広く用いられているキャリブレーション技術の1つである。
 一般的な波長キャリブレーション法では、ユーザーは水銀(Hg)あるいはネオン(Ne)のような原子発光光源からのスペクトルを検出する必要がある。ユーザーは、CCDの対応するピクセル位置とともに2つあるいはそれ以上の既知の輝線を確認し、次に既知のスペクトル線間のギャップを埋めるためにデータに補間法を適用する。
 この技術は既知の波長位置では正確であるが、スペクトル線間のキャリブレーションは近似値であり、補間法が適用されるときにのみ正確である。このような制限が原動力となって、当社のキャリブレーションツールは他の方法と同じ原子発光線を用いるが、一段と高度なアプローチを採用している。
 USBから電源供給されるHgとNeのデュアル光源を用い、IntelliCalはHgまたはNeスペクトルを検出し、既知のスペクトル波長テーブルとその相対強度を参照する。さらに、分光器の物理的特性に基づいたモデルを引き出して観察されたスペクトルを見積もる。非線形最適化により、理論モデルパラメータを修正し、観察されたスペクトル強度と計算されたスペクトル強度間の残余誤差を最小化する。
 この繰り返し過程は、一連の物理モデルパラメータを生む。これは、それに続く取得スペクトルのキャリブレーションのためにモデル化された分光器を最もよく示すものとなる。この波長キャリブレーションは、当社のLightFieldスペクトルイメージングおよび分光計ソフトウエア内で行われ、従来の方法に対して3〜10倍の精度であり、分光器を較正する時間は一般に数秒である(2)。

強度のキャリブレーション

強度キャリブレーションの主目的は、y軸のキャリブレーションである。これによって分光システムはシステムのスペクトル応答とは独立にサンプルもしくは光源の検出と解析が行える。NISTによると、すべての測定器は固有のスペクトル感度を持っており、あらゆる測定器で、また1台の測定器であってもその時々において、単一サンプルのスペクトル形状と絶対強度の両方が異なる(3)。
 この見解を説明するために、3つの異なる分光システムを使って同じ光源の発光を収集した(図 2)。強度キャリブレーションをしていない場合、どの曲線が正しいかの判断は難しい。各スペクトルは光源の発光と、ビームと相互作用するシステムコンポーネントが作り出したものであるからだ。コンポーネントには、レンズ、フィルタ、回折格子、反射面、それにこの場合は異なるCCDディテクタが含まれる。
 強度キャリブレーションは、スペクトルデータからシステムのスペクトル感度を除去する際に有効である。とは言え、この点は見過ごされることが多い。費用がかかり、この種のキャリブレーションを行うことが難しいからである。一般的な強度キャリブレーションシステムで必要となるものは、NISTトレーサブルな石英・タングステン・ハロゲン(QTH)ランプの購入、調整電源、光学システムの均一照射のための積分球、たくさんのコンポーネントやハードウエア、光学テーブルの利用可能空間である。次にラマン分光アプリケーション用に開発された二番目のオプションは、発光体に基づいたNISTトレーサブル相対強度補正基準を利用する。
 どのオプションを選択しても、強度キャリブレーションを成功させるためには、誤りのないシステム構成、強度キャリブレーションの実施法についての知識、ユーザー側で行う一定のデータ処理が必要になる。例えば、NISTトレーサブルQTH光源、すなわち発光基準では一般にキャリブレーションデータが、表形式、放射曲線、あるいは多項式で提供される。分光システムを較正するにはユーザーは、システム感度を除去するために計測スペクトルに対して補間法を使い、その計算データを適用しなければならない。

図2

図2 3つの異なる分光システムで計測された光源の発光は、システム感度によって生じた強度とピーク位置の大きな違いを示している。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/03/LFWJ1603_P30-32_feature02.pdf