干渉法による非球面計測には多くの方法がある

ジョン・ウォレス

非球面光学素子は、フィゾ干渉計、干渉計を収容している光学プロファイラを使い計測できる。両アプローチとも様々な形態がある。

非球面光学素子は、大きく精密な1個限りのデザインから民生機器向けの量産小型素子まであり、これらの量は増加しているので、非球面のテストは現在、光学素子では非常に活発な領域である。また、技術の改善が急速に進んでおり、素晴らしい成果が出ている。光学的テストは2つの主要形態がある。干渉計テストと非接触プロファイラ(これは独自の干渉計を収容している)である。
 光学実験室で何十年も使われてきた、典型的なレーザ干渉計は、633nmのレーザ光を使って球面光学素子を計測するフィゾ干渉計である。さらに柔軟性が追加され、今日の干渉計は極紫外(UV)から長波赤外(LWIR)の波長範囲で動作するレーザ光源を搭載している。
 しかし、非球面あるいは非球面の光学部品を標準的なレーザ干渉計で計測することは、急速に難しくなっている。というのは、光学素子の非球面性が強くなっているからだ。弱い非球面は標準的な干渉計で計測できるが、強い非球面はヌルレンズの使用が不可欠となる。ヌルレンズは干渉計に装着して光学素子の非球面性を弱める。そのようなヌルレンズは、コンピュータホログラム(CGH)の形態をとる、これは回折素子であり、屈折ヌルレンズよりも簡単に製造できる。このアプローチは広く利用されている。
 しかし、ヌルレンズを用いると干渉計の設定がとても複雑になる。精密度が要求されるだけでなく、干渉計とテスト光学素子に関して設置とアライメントが適切に行われなければならない。そうした状況に応えて、強い非球面のテストでもヌルレンズを使うことなくできる技術が開発されている。
 光学プロファイラでは、レーザ光スポットで光学素子の表面をスキャンしてポイントごとにその3D形状を判定する。場合によっては、スポットの変位を評価するために、プロファイラ自身の光学系が干渉計を収容している。光学プロファイラは、半球を含め、非常に急峻な面を計測することができる。

フィゾ干渉計アプローチ

今日のフィゾ干渉計は、非球面形状評価に最適の装置である。例えば、アメテック社(Ametek)の子会社、米ザイゴ社(ZYGO)が製造したベリファイア・アスフィア(VFA)は、同社が長年にわたり製造してきたベリファイアフィゾ干渉計をベースにした非接触干渉計計測機である。
 同社の製品部長、タイラー・スティール氏によると、その計測機は5軸モーター駆動ステージと2軸変位計測干渉計(DMI)を搭載している。これにより自動アライメント、およびテストされる非球面の捕捉が可能になる。すべての完全3D表面誤差マップと数々の数値出力を利用して、確定計測のための表面誤差を評価し、確定研磨のためにフィードバックを提供することができる。
 「フィゾ干渉計にアライメントされた非球面は、ヌル干渉の環状ゾーンを生成する」と同氏は言う。「ゾーンの半径方向の位置は、干渉計に対してテスト面Z位置の関数である。テスト部分はDMIからのフィードバックでZに変換されるので、ゾーンはテスト面にわたり捕捉され(図 1)、非球面はソフトウエアで再構成される。その出力は理想的な設計からの、あるいは最適化された非球面の底面半径からの偏差であり、円錐定数は計測された最良適合面から計算できる」。
 VFAは、800μm以下の球面および、800mm以下の曲率半径から外れた回転対称非球面に最適である、とスティール氏は指摘している。「眼科市場は、この計測技術の恩恵を受けてきた、コンタクトレンズ表面はこれらの条件に当てはまるからである。多くの新しいコンタクトレンズ設計は、非球面をベースにしている。そうした非球面は、多焦点効果を実現するために、球面からわずかに逸脱している」と同氏は語っている。
 コンタクトレンズ市場のような大量生産分野が、VFAの自動計測能力の開発を促した。150×150mmステージと自動化ソフトウエアにより、複数のテストパーツがトレイに置かれ、自動計測が行われる。関係のある結果と表面誤差マップがレポートされ、オペレーターがパス/フェイル・グラフィカルインタフェースを制御する。非球面計測だけでなくVFAは、円環状面ととともに精密球面半径や表面計測も行える。スティール氏によると、これらはそれぞれ眼科のコンタクトレンズ産業では重要な形状である。
 フィゾ干渉計が、測定不能な多数の干渉縞とならないように、強い非球面を計測できるようにする1つの方法は、フルアパチャをサブアパチャに分割し、各個を計測してデータを統合することである。このアプローチは、米QEDテクノロジーズ社(QED Technologies)が開発して、サブアパチャスティッチング干渉計(SSI)と名付けられている。このアプローチは、同社の干渉計システムの主力となっている。
 「当社のシステムは、精密動作プラットフォーム、干渉計、新しいスティッチングアルゴリズムとカスタムソフトウエアを統合している」と同社のシニア光学エンジニア、ポール・マーフィー氏は語っている。「SSI技術により、大型(150〜400mm凸面レンズ)や高開口数(半球)の光学部品の球面テストができるようになっている。こうした光学部品はこれまで、従来のフルアパチャ干渉計には難しかった。ついにSSI技術によって、専用のヌルレンズなしで非球面計測が可能になった」。
 マーフィー氏によると、QIS実装の非球面スティッチング干渉計[ASI(Q)]は同社からの最新の発表である。QISは、コヒレントイメージング、6インチアパチャのフィゾ干渉計で、多軸マシーンに搭載されている。ユーザーが部品情報を入力し、ソフトウエアが自動的に透過素子を推奨し、適切なサブアパチャレイアウト(格子)を設計し、サブアパチャデータを集めてスティッチングする(図 2)。
 「QISにより、従来の非コヒレントシステムよりも50%以上多くのスロープキャプチャが可能になる。これは非球面設計にとっては極めて重要である。多くの処方箋は、どんなサブアパチャに対しても大きなスロープ(多くの干渉縞)を持っているからである。ASI(Q)は、オプションの可変光学ヌル(VON)とともに構成することもできる。VONは、どんなサブアパチャに対しても、既知量のコマ収差や非点収差を補正し、サブアパチャでデータキャプチャができるようにする。他の方法では、信頼性のよい干渉計データを収集するには縞密度が高くなりすぎる。

図1

図1 ベリファイア・アスフィア干渉計で計測された非球面の異なるゾーンからのデータはソフトウエアで統合され、光学部品の形状が得られる(ザイゴ社提供)。

図2

図2 ASI(Q)干渉計(a)は、サブアパチャ格子(b)を作成し、サブアパチャデータを集めてスティッチングする(QEDテクノロジーズ社提供)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/11/LFWJ_Jan16_pp.pdf