標準ワイヤーボンディング技術でGeディテクタの帯域が2倍に

アクティブシリコン光回路の中には、フォトディテクタ材料としてゲルマニウム(Ge)を利用し、ハイブリッドシステムを作ることで恩恵を受ける形態がある。このようなゲルマニウム導波路結合フォトディテクタは、垂直または横p-i-n 接合構造のいずれかを採る。横構造は3dB帯域120GHzであるが、それよりも作製が容易な垂直構造は3dB30GHz帯域を超えるのは難しかった。これは非常に複雑な技術を多く使用しているためである。
 最近、中国の華中科技大と華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)の研究者たちは、従来の垂直p-i-n 接合Geディテクタの速度を30GHzから60GHzに高める簡単な方法を考案した(1)。この技術は、標準的なワイヤーボンディング技術を利用して金線をディテクタの個別接地電極に導入する。
 いわゆるRC寄生パラメータ(RとCは、それぞれフォトディテクタ等価回路の抵抗と容量を表す)が、ディテクタの高速動作を制約している。しかし、ディテクタのRC回路にインダクタ(L)を導入して、いわゆるRLC回路を作ることで高速動作が可能になる。これは導入したインダクタンスが、容量の影響の一部を相殺するためである。
 複雑なオンチップインダクタを作る代わりに、研究グループは金線をGeディテクタにワイヤーボンドするだけで「オフチップ」インダクタを作製している(ただし、ワイヤーは実際にはGeディテクタ自体にある)。そうするために研究チームは、ディテクタの単一の従来型電極全体を、分離した3つの部分に変え(図1)、実際の光検出部分は変えないでそのままにした。次に、研究チームは、2本の金線を導入して2つの個別接地電極を接続した。金線はインダクタを形成しており、インダクタンス値は金線のサイズと長さに依存する。
 例えば、ディテクタは、約450μm長、25μm径の金線を用いて作製できる。これによりインダクタンスと抵抗は、広い周波数域でそれぞれ1nH/mmと2Ω/mmになる。このデバイスでは、ディテクタの帯域が30GHzから60GHzに倍増することが、計算により分かっている。

図 1

図 1 左が、従来の垂直p-i-nジャンクションGeディテクタで、電極全体が1つになっている。右は、変更したGeディテクタで、分離された3つの部分からなる。これらの電極は、標準的なワイヤーボンディングプロセスによって金線で接続され、単一の電極を構成する。これによりインダクタンスが増加し、ディテクタの帯域が向上する。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2016/11/LFWJ_Jan16_wn03.pdf