高出力用途をねらう一酸化炭素レーザ

約5μmの波長を放射する一酸化炭素(CO)レーザは数十年間前から存在していたが、10.6μmの出力をもつ二酸化炭素(CO2)レーザほど利用されていなかった。米コヒレント社(Coherent)は、ガラスカットなどの材料加工用途、さらに、医学、分光学、研究分野で利用できるようにデザインしたCOレーザを発表した。
 コヒレント社CO2事業ユニットのマーケティングディレクターのアンドレー・ヘルト氏は、「COレーザ技術は、CO2レーザと同時期の1960年代半ばに開発された」と話す。「COレーザはCO2レーザの2倍の効率をもつポテンシャルをもっていたため、魅力的だった。しかし、COレーザには課題があった。初期のCOレーザは、高効率に高い出力をもたせるために冷却が必要で(非常に高い出力では極低温冷却していた)、レーザ出力は急速に減衰していた。ほとんどのCOレーザの寿命は数十時間だった。そのため、CO2レーザ技術が『勝利』し、それ以降、ガスレーザのスタンダードとなっている」
 だが、コヒレント社は自社技術を活用して、室温で高効率に5〜6μm範囲の高出力COレーザを設計した。寿命は数千時間にもなると、ヘルト氏は述べる。新規COレーザでは、コヒレント社のCO2レーザ向けに長年開発されてきた技術と同じものを多く採用している。例えば、CO2レーザで使われている高周波(RF)電源の技術はCOレーザに応用できる。
 コヒレント社では、同社の導波管やスラブ構造をベースとして、複数のCOレーザ試作機をテストした。その結果、レーザ出力は20Wから1kW以上となった。コヒレント社の初のCOレーザは、7月22〜25日にドイツで開催されたLASER World of Photonicsで披露され、平均200 W以上の高ピーク出力でパルス運転している。
 同氏は、「5μmで材料加工することには、多くの利点がある。最たるものは、光と材料の相互作用における利点だ」と話す。「COレーザの5μm出力では、CO2レーザの9〜11μm出力に比べて異なる吸収係数を示すため、相互作用は大きく異なるだろう。多くのフィルム、ポリマー、PCB絶縁体、セラミックス、その他の化合物では、より強く吸収する。カルコゲナイドと重金属のフッ化物ファイバでは、5〜6μmレーザ光の減衰は非常に小さいため、ファイバ伝送のポテンシャルが引き出される。CO2レーザの出力ではファイバと連結できず、CO2レーザはファイバレーザにおける大きな欠点である」

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/10/LFWJ1509-10.pdf