レーザ用途に応じて最適な非球面を選択する

グレッグ・ファレス、ウィリアム・モアシェード、アラン・シモンズ

CNC研磨、精密ガラスモールド、複合非球面化などの製造技術と検査・試験技術の組み合わせが、非球面とレーザシステムを統合する。

非球面素子は、多くの光学設計においてパフォーマンスを向上させる。複雑な非球面プロファイルは、球面レンズの光学システムにおける多くの収差を大きく減少させる、または消滅させることができ、パフォーマンスの向上、軽量化、アセンブリ時間の短縮、公差スタックアップの抑制を実現する。だが、全ての非球面レンズが同等に作られているのではなく、特にレーザシステムと統合させるときにはなおさらである。
 レンズを作るときにどの製造技術を選ぶかによって、レーザシステムのパフォーマンスや信頼性は大きく変わりうる。エネルギーや波長など、レーザの重要なパラメータに応じて、非球面レンズの製造方法を選択するのである。

CNC研磨非球面レンズ

非球面レンズを製造する最古の技術は、研磨である。コンピュータ数値制御された(CNC)機械を用いて、単軸回転するガラスを研削、研磨して作る。レンズを高速回転させながら、研削工具とレンズとのわずかな接触位置を、レンズのエッジから中心に移動させる。工具位置を精密にコントロールすることで、表面を非球面形状に研削できる。その後、研磨工具を使ってレンズを滑らかにして、鏡面仕上げにする。
 必要があれば、磁性流体仕上げ(MRF)でさらに補正する。MRFは小型研削工具に似ているが、磁場をかけると粘性が変化するリボン状の流動体を使う。これにより、わずかな範囲でも、材料除去を非常に精密にコントロールできる。
 研磨は小型装置とわずかな治工具費用で済むため、コストはレンズの製造時間と大きく関係する。レンズは1個ずつ作るため、大量生産しても利益規模は大きくならない。しかしながら、製造工程で特殊な工具や装置はほとんどないため、この方法で非球面レンズを製造するリードタイムは短い。レンズのコンセプト実証、試作、製造まで、同一の方法で実施できるので、初期生産
や、(次に紹介する方法で使う)モードのパフォーマンスとレンズのパフォーマンスとの相関研究に頭を抱えることもない。
 レーザシステムのデザイナーにとっては、CNC研磨非球面レンズの最も重要な利点は、この方法で製造できる材料の多種多様性である。事実、基板材料の選択肢に制限はほぼなく、アッベダイアグラムにある一般的なガラスは全て使用できる。溶融石英ガラス・フッ化カルシウムなどのUV透過材料、ゲルマニウム・セレン化亜鉛・カルコゲナイドガラスなどの赤外線(IR)透過材料などがある。このように、非球面レンズは近年のレーザシステムと関連する高エネルギーに耐えられるようにデザインできる。表1に、異なる非球面レンズの製造技術における一般的な特徴を示す。

球面レンズ

複雑な非球面プロファイルは、球面レンズの光学システムにおける多くの収差を大きく減少させる、または消滅させることができる。(提供:米エドモンド・オプティクス社(Edmund Optics))

表1

表1 一般的な非球面レンズ製造技術の特徴

精密ガラスモールド

精密ガラスモールド(PGM)は、1980年代前半に登場して以来、レーザダイオードのコリメーションの主流となっている製造技術である。シングルエレメントのガラスレンズを低コストで大量生産できるので、光学設計者とシステムエンジニアにとっては理想的な組み合わせである。非球面を利用して、光学設計者はシングルエレメントにデザインを最適化して、球面デザインに比べて優れたパフォーマンスを得られる。成形工程では、非常に低いコストで、数千個の高分解能レンズを成形できる。シングルエレメントで作られた精密ガラスモールド非球面レンズは、CD・DVDプレイヤー、工業用工具、医療機器など、大多数のレーザダイオードのコリメーション向け用途に適したものとして選択されている(1)。
 精密ガラスモールドの工程では、一般的には等温圧縮で成形する。工程は、精密ガラスモールド装置の金型の間にガラスプリフォームを入れるところから始まる。この金型は、デザインした表面に仕上げるようにプリフォームを成形して、熱成形プロファイル、ガラス・機械特性を補正する。モールド装置は窒素で満たされ、プリフォームと機器を加熱する。圧力をかけた後、金型を冷やしてレンズを仕上げる。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/10/LFWJ1509-32-35.pdf