圧電バイモルフビームで防振機能を強化
多機能要素を統合すると、複雑さが緩和された、よりコンパクトな、コスト効果が高い振動制御デザインが可能になる。たとえば、圧電バイモルフビームマウントは、アクチュエータとセンサの両方の要求を満たす。
今日のエレクトロニクスおよびオプトエレクトロニクス機器やシステムでは、軽構造、高スループット、さらに高い生産分析、加工精度が求められている。振動は、機能に影響し、精巧な機械やコンポーネントに損害を与えることさえあるので、研究、開発、製造段階ではその影響を慎重に検討しなければならない。振動解析や制御技術は、ナノメートルあるいはサブナノメートルスケールで動作しなければならない。例えば、半導体産業では、低振動製造、テスト環境が求められる。
従来のパッシブ振動アイソレーション法(単純なバネや減衰エレメント)は、こうした要求には適合しないので、アクティブ振動アイソレーションシステム(素早く振動を消去するための電気的フィードバック回路付)の普及が進んでいる。温度と湿度が十分にコントロールされ、強固な土台で安定していることに加えて、研究者やエンジニアは様々なアプリケーション領域で高感度装置が確実に適切な機能を発揮するように低振動環境を作る必要がある。
低周波圧電振動アイソレーション
十分な振動アイソレーションには、外乱源と絶縁される構造との間の機械的な経路の設計が、一定の周波数範囲で振動低減が生ずるようになっていなければならない。これは剛性要素k、減衰要素d、それに、必要なら、アクチュエータ要素Aを加えて振動アイソレーションシステムを作ることによって達成できる(図1)。
外乱と振動分離コンポーネント間のパッシブアイソレーションシステムの伝達率に関して、一般的な振幅応答が観察される。例えば、無減衰防振材料は、マススプリングシステムの応答を超える周波数域で10年に−40dBの振動アイソレーション増加に影響を及ぼす。しかしながら、欠点は共振周波数付近の振幅増幅である。また、この増幅は振動減衰エレメントの統合によって減らせるが、このダンパーもより高い周波数域ではアイソレーション効果が弱まる。
パッシブアイソレーションの範囲を超えたところでは、アクティブ振動アイソレーションが、減衰システムと非減衰システムの長所を統合する。共振を超えた周波数に残る広帯域アイソレーションにより、共振における振動増幅がダンピングエレメントの効果に匹敵する量まで減衰できる(1)。これを行うために利用できる制御策は数々ある。例えば微分変位フィードバックループ、あるいはモデルベースコントロールなどである。
ほとんどのアクティブ振動システムは、独立に構築されたアクチュエータとセンサを持つ純粋に機械的な構造に基づいている。しかし、構造、アクチュエータ、センサの特性を1つの多機能エレメント、圧電セラミックなどに統合すると、複雑さが緩和され、よりコンパクトな設計が可能になる(2)。
圧電ベンディングビーム(梁)、いわゆるバイモルフは基本的に、2つ(もしくはそれ以上)の活性層(一般に圧電材料と金属)を持つカンチレバー(片持ち梁)である。このバイモルフは、高感度装置向けのアクティブ振動アイソレーションシステムでアクチュエータとセンサの両方の役割を満たす。特に、低剛性と低構造減衰を必要とするシステム向けである。
圧電バイモルフを使うことの圧倒的なメリットは、簡素な設計である。両面固定バイモルフデバイスは、互いに圧電モジュールを使用したベンディングビームで構成されている(図2)。電圧を印加すると、圧電モジュールにより曲げモーメントが引き起こされ、デバイスの自由端が反る。平行機構を利用することで、連結点の角度変位はほぼ避けられ、対応するハードウエア構成は簡素、コンパクト、及びコスト効率よくできる。
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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/10/LFWJ1509-28-30.pdf