光プローブで昆虫の翅を生体光学的に評価

昆虫の翅や甲皮の自然のフォトニックマイクロ構造やナノ構造は、回折、蛍光、反射防止から偏光などの多くの異なる光学効果で光を変える。このような生体光学構造は、2つのグループに分けられ、主に反射するもの、それに主として透過するものである。
 蝶や甲虫の翅の効果は、前者のグループであり、よく知られている。このほど、インド化学教育研究所(IISER; パンジャブ州モハリ)のグループが、ハエ、ハチ、トンボ(図参照)に見られる透過的フォトニック構造を調査する簡素でリアルタイム性、非侵襲性を有し、ダメージを与えないレーザベースの技術を開発した。この技術は、実験に適した定量的回折に基づいたモデルも含んでいる。

図1

図1 雨ハエの透明な翅は、多様なスケール長の広い範囲でフォトニック構造を特徴としている(上)。ハエの翅の透過的な遠視野回折パタン捉えて、走査型電子顕微鏡(SEM;右)で撮った小スケールの画像と比較する。(a), (d), (g)は、野生の突然変異していない翅のSEM画像、それぞれCyo翅の突然変異、vg(痕跡翅)突然変異を示している(2つの異なる突然変異、縮れ毛と小さな太く短い発育不全の翅を生み出す)。(b), (e), (h)は、対応するSEM画像の高速フーリエ変換(FFTs)。(c), (f), (i)は、対応する突然変異の光学的回折パタンで、緑色レーザを使って撮った。(提供:プラモッド・クマール氏)

CWまたはフェムト秒パルス光

その技術では、コリメートされたレーザビームを、x、 y、 z方向に動かすことができる翅に透過させ、得られた光パターンをデジタルカメラで撮り分析する。ビームのミリメートルスポットサイズは、ロングレンジの対称情報をとれる長さがあるが、翅に沿ってスキャンする程度に小さいので、例えば翅の片端から他端までの回折プロファイルで回転を見ることができる。
 興味深いのは、連続波(CW)またはフェムト秒パルスレーザを光源として使用することだ。CW波長は、532nmまたは632nm(緑または赤)、一方フェムト秒レーザの広いスペクトル範囲は800nm域になる。
 フェムト秒レーザを光源の1つとして使用する理由について、研究グループの一人、プラモッド・クマール氏は、フェムト秒レーザは、空間的にコヒレントであるが、外見上白色光と似た光を生成し、広帯域IR光を受けた回折パターンの構造安定性を際立たせる、と説明している。研究グループは、短パルスとフォトニック構造とのコヒレントなインタラクションをナノメートルからマイクロメートル長のスケールで調べたかった。
 「われわれは、(翅の)構造的構成における光学コヒレンスと空間相関性の役割を広い領域と狭い領域で調べたい」と同氏は言う。「昆虫の翅表面には、微小構造構成で多様な対称性がある。広い範囲の規則性は、われわれの場合では回折の展開に重要な役割を果たしている。われわれのレーザビームのスポットサイズは約2〜3mmであり、これは非常に多くの微小構造を広い範囲で十分カバーできる」。対照的に、従来の高倍率イメージング技術では精密な局所構造情報は得られるが、長範囲の情報は得られない。常に非常に小さな走査範囲しか利用できないからだ。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/10/LFWJ1509-12-13.pdf