生物学にヒントを得た暗視アルゴリズムが、低照度ビデオを改善

夜行性昆虫は数百万年もの昔から、暗闇や薄明かりの環境において、細かい動きやさらには色やパターンまでをも識別する能力を磨き上げてきた。これらの生物の優れた神経的または光学的な視覚適応能力を理解することによって、スウェーデンのルンド大(Lund University)の研究者らは、低照度ビデオの画質を劇的に改善する、生体模倣の画像処理アルゴリズムを開発した(1)。

夜行性生物の視覚

光子ショットノイズ(光子の吸収率が低い場合に、達成可能な信号雑音比に制約を与える量子揺らぎ)に加えて、トランスデューサノイズとダークノイズも、重要な要素である。トランスデューサノイズは、光受容体が(信号増幅をつかさどる生化学的プロセスの結果として)、吸収した各光子に対する等価な電気的反応を再現できない場合に生じる。一方、ダークノイズは、熱活性化が光子吸収として誤って解釈される場合に生じる(一部の夜行性のカエルの場合で、このような事象が室温で1時間あたり最大360回生じ得るが、夜行性昆虫の場合、その回数はそれよりもずっと少ない)。
 非常に暗い環境に生息するにもかかわらず、夜行性昆虫は色やわずかな動きを識別して、飛翔時に障害物を避けることができる。月明かりのかすかな偏光パターンを利用して移動し、天の川の光を頼りに方向を確認する。これらの昆虫はこれを行うために、複数の神経的戦略を駆使して、目の中の光受容体によって光子が吸収される際のノイズを低減していることが、米国中部に生息する夜行性のハチの研究から明らかになっている。その神経的戦略とは、①目の中の特殊な光学系による集光能力の強化、②網膜で生成される神経画像の改善、③視覚系における網膜よりも高いレベルでの、空間および時間における画像に対する最適化されたフィルタリングなどである。
 上記の適応能力のうちの最初の項目は、夜行性昆虫の複眼によって物理的に実現されるものであるため、研究チームは、2つめと3つめの適応能力に特に着目して、低照度ビデオに対する画像処理を改善するためのアルゴリズムを開発した。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/07/LFWJ1507_wn2.pdf