新技術ATIで実現した70GHz帯域のリアルタイム・オシロスコープ

テクトロニクス社は、数々の技術革新を搭載した超広帯域リアルタイム・オシロスコープDPO70000SX型70GHzATIパフォーマンス・オシロスコープを発表した(図1)。

ATIオシロスコープの技術革新

同社の新製品、リアルタイムオシロスコープDPO70000SX型の特長として同社は、世界初のATI技術、200GS/sのサンプル・レート、小型パッケージング、UltraSyncアーキテクチャーを挙げている。
 実は、この新製品は、ATI技術を採用したDPO77002SXとATI技術搭載ではない33GHz帯域、100GS/sのDPO73304SXとに分けられる。DPO7に続く70は70GHzを、33は33GHzを示している。
 ここでは、広帯域を実現する同社の特許技術ATI(非同期タイム・インターリーブ、Asynchronous Time Interleaving)を紹介していく。
 これまで、同社の競合ベンダーは、周波数インターリーブ技術を採用することで広帯域を実現してきた。これは、アナログ信号をデジタル化するためのADCに広帯域を処理する能力がないためで、その対策の一つが周波数インターリーブという技術。この技術では、入力信号を高い周波数と低い周波数に分割し、高い方だけをダウンコンバートして低い周波数に換える。その後、ローパスフィルタを通してそれをデジタル化する(図2)。
 この方式の問題点は2つあるとして、次のように指摘している。
 「まず、非対称となっているパスの違いが影響する。信号のリコンストラクションは非常に難しい。パスの違いにより、スティッチングの部分、広帯域部分と低滞域部分とのつなぎ目にギャップが出る。例えば、30GHz付近の振幅が2dB、20%落ちる。この部分で計測すると20%低い信号値として現れ、正確な測定にならない。もう1つ、それぞれ半分の周波数の信号に重畳したノイズが、リコンストラクトすると加算され、ノイズが増える」。
 指摘されている問題点は2つあり、スティッチング部分の振幅低下とノイズの増加である。このスティッチング部分の問題は、単にパスがシンメトリックでないことだけでなく、周波数インターリーブという方式そのものに問題があるともとれる。これらを克服する技術は、周波数インターリーブではなく、タイムインターリーブではあるが、ただADCの数を増やしてインターリーブすると「デバイスのタイム・アライメントのコントロールが難しくなる」として同社は、それにさらに一工夫した新技術ATIを開発した。同社の説明を聞く限りでは、ATIは「パラダイムシフト」と言っていいだろう。ATI技術については次のようになっている。

図1

図1 70GHz帯域のリアルタイム・オシロスコープDPS77004SX(2ユニットシステム)。真ん中あたり、ATIと表示してあるのが70GHz周波数帯域、200GS/sのチャネル。隣の2chsが33GHz、100GS/s。いずれもサンプルレコード長は1G。ディスプレイの右にあるのがDPO7AFP型外部フロント・パネル(Auxiliary Front Panel)。これを使用すると、1台または複数ユニット使用の場合でも、一般的な機器設定が直接行え、通常のベンチ・オシロスコープと同じように操作できる。図から分かるもう1つの特長は、「クラス最小のコンパクト・パッケージ」。高さわずか13.3cmの小型パッケージ。2台のユニットを積み重ねれば、標準のベンチ・オシロスコープ1台と同じスペースで使用することができる。

図2

図2 テクトロニクス社の競合測定器ベンダが採用している従来の周波数インタリーブ技術。問題点として、各ADCが半分のスペクトラムをデジタイズしていること、加算による信号再構築でSNRが劣化することがある。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/05/LFWS201505_wn3.pdf