陽子とガンマ線照射下で良好パフォーマンスを示した宇宙用途QCL

中赤外(mid-IR)域の多くの分光アプリケーションや他の光学アプリケーション向けでは、量子カスケードレーザ(QCL)を凌駕するコヒレント光源は存在しない。実際、プリンストン大学の著名な、健康と環境のための中赤外技術工学研究センターは、完全にQCLにフォーカスしているわけではないが、同センターはこの技術から大きな恩恵を受けており、クレア・グメイヒルディレクターは、QCLの研究で知られている。
 先頃、米パシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)、航空宇宙工学研究所、ユタ州立大の研究グループが、QCLに放射線照射を行い、その後のパフォーマンスを調べ、QCLの宇宙適正評価研究を行った。その結果は、将来の宇宙科学ミッションに役立つものであるが、それによると、異なるベンダー 2社のファブリベロ(FP) QCLは、宇宙レベルの放射線照射を受けた後の出力、しきい値電流、スロープ効率に計測できるほどの変化は見られなかった。
 研究グループは、7個のQCLと1個のコントロールをテストした。2つは浜松ホトニクス製で、波長5.3μm、銅マウントに、劈開面、エピサイドアップマウントされている。研究者には、これら2つのレーザの設計詳細はあまり知らされていない。他の5 QCLおよび実験コントロールはソーラボ社が買収したマキシオンテクノロジーズ製だった。これらはAlInAs/GaInAsヘテロ構造で、4つの量子井戸活性領域を持つ。2つのマキシオン製QCLレーザは、それぞれ8.2μmと5.4μm、その他の3個は7.3μm〜7.8μm域で発振する。全QCLは、実験のために少なくとも100時間バーンインした。

陽子照射とガンマ線照射

これらのQCLは、2タイプのイオン化放射、1.17MeVと1.33MeVエネルギーのコバルト60ガンマ線と64MeV陽子線を受ける。QCLが受ける総線量は20〜46.3 krad(SI)(国際単位系SIに対するkrad単位)となる。比較すると、高度700km、傾斜60°、0.2g/cm2アルミシールドの典型的な人工衛星なら、7年間に累積33.3krad(SI)の累積線量を受けることになる。陽子照射テストはカリフォルニア大デービス校のクロッカ核研究所で行われた。各照射線量は、7.46×1010protons/cm2陽子フルエンスで供給される10krad(SI)。この値選択の理由は宇宙の関連する条件で予想される陽子フルエンスよりも遙かに高いからである(例えば、上述の人工衛星なら1日に約3×104protons/cm2が照射されることになる)。

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出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/05/LFWS201505_wn1.pdf