2014年度国内光産業調査結果太陽光発電分野に大きな変化

井上 憲人

光産業技術振興協会は光産業動向調査委員会を設置して調査を実施し、2014年度の調査結果をまとめた。

調査の方法と調査結果の要点

光協会は、調査に当たって、7つの製品分野別調査専門委員会を設けて調査を実施した。7分野は、情報通信、情報記録、入出力、ディスプレイ・個体照明、太陽光発電、レーザ加工・光加工装置、センシング・計測。情報通信には、光伝送機器・装置、光ファイバ融着機、発光素子、受光素子、光ファイバ、光コネクタ、光受動部品などが含まれる。非通信用個別受光素子、複合光素子などは、「その他」に分類されている。
 アンケート調査は2013年10月に313社に対してアンケート調査票を発送し2013年12月から2014年2月に回収することで実施。回答を得たのは113社。
 まず、生産と出荷の実績、見込み、予測について概要を見ておこう。2013年度国内生産額(実績)は8兆4672億円(成長率18.0%)、2013年度全出荷額(実績)は16兆9311億円(12.0%)。2014年度国内生産額(見込み)は8兆5916億円(1.5%)、2014年度全出荷額(見込み)は16兆8742億円(-0.3%)。2015年度国内生産(予測)はやや増加、2015年度全出荷(予測)はやや増加。
 次に全出荷額だが、こちらは生産額の約2倍の数字になっている。この増加分は、情報記録分野、入出力分野、ディスプレイ・固体照明分野の海外生産分を国内で出荷したものと見てよい。
 2013年度の光産業全出荷額(実績)は16兆9311億円 (成長率12.0%)。その内、光機器・装置は12兆177億円 (成長率9.8%、構成比71.0%)、光部品は4兆9135億円 (17.8%、同29.0%)。2014年度の光産業全出荷額(見込み)は16兆8742億円(▲0.3%)と横ばい傾向が見込まれている。内、光機器・装置は11兆8946億円 (成長率▲1.0%、構成比70.5%)、光部品は4兆9796億円 (1.3%、同29.5%)が見込まれている。2015年度の光産業全出荷額は、やや増加と予測。光機器・装置、光部品ともにやや増加と予測している。表1から明らかなように、国内光産業は「太陽光発電分野」依存となっている。2013年度の実績が健全成長に見えるのは、太陽光発電分野が激増しているためであり、2014年度見込みが一転して低迷と見えるのは、太陽光発電分野の成長が、光協会の言葉では「前年度の反動で」一ケタ成長に止まるからである。さらに、2015年度の予測を「やや増加」と表現せざるを得ないのは、太陽光発電分野が「横ばい」と予測されるからである。
 今回の調査では、2014年度に2ケタ成長が見込めるのはレーザ加工分野、それに情報通信分野の送受光部品のみということが明らかになった。それ以外のほとんどは、横ばいかマイナス成長と見込まれている。
 以下では、全出荷額を中心に調査結果を見ていく(表1)。

表1

表1 光産業の全出荷額。国内生産額は、トータルで全出荷額の1/2程度。全出荷額の数字を押し上げているのは、情報記録分野、入出力分野、ディスプレイ・固体照明分野。各分野の集計値は、灰色:光機器・装置と、オレンジ:光部品とを単純合計したもの。 (単位:百万円、%)

太陽光発電バブル崩壊か

太陽光発電分野は、システムについては国内生産額と全出荷額との差はあまり大きくないが、太陽電池セル・モジュールは、2013年度実績で2.3倍、2014年度見込額で2.8倍全出荷額が大きい。この数字は、海外生産または部品の海外調達が進んでいることを示している。
 しかし問題はここではなく、この分野の成長率が激減していることにある。2013年度実績を見ると、国内生産額では太陽光発電分野全体の成長率は71.4%、システムの成長率は104.1%だった。全出荷額では、この分野全体の成長率は88.3%、システムは113.7%。モジュールの成長率も55.9%と高い。ただし、2013年度国内生産額実績では部品の成長率は4.4%。これは、部品が国内生産よりも海外調達依存になっていることを示している。
 とは言え、太陽光発電分野の力強い成長が光産業の発展を支える大きな柱となっている。構成比を見ると、2013年度国内生産額実績でこの分野の構成比は39.5%、2014年度見込額でも39.7%、国内光産業生産額の約4割が太陽光発電分野となっている。全出荷額を見ると、2013年度実績で、この分野の構成比は25.0%、2014年度見込額で27.0%となっている。
 今回の調査結果では、2014年度の太陽光発電分野の成長率が衝撃的であった。国内生産額の成長率は、わずか1.9%に急落すると見込まれている。それでもシステムの成長率は8.1%だが、部品は22.8%減。この傾向は全出荷額でも変わらず、この分野全体の全出荷額成長率は7.7%、システムは14.1%、部品の成長率は3.5%減と見込んでいる。この急激な落ち込みを光協会は、「前年度の高成長の反動」と説明しているが、2015年度予測でもこの分野は「横ばい」となっており、言うところの「反動」がいつ解消されるか、見通しは立っていない。横ばいとなる背景を光協会は「FIT制度変更の影響」と見ている。「変更」とは、固定価格買取制度の買取価格が、2012年で42円/kWh、2013年38円/kWh、2014年37円/kWhと変わることを指している。太陽光発電は、最初の設備投資さえすれば、後は金の卵を産む鶏のように言われていたが、事は言うほど簡単ではないことが明らかになってきている。

(もっと読む場合は出典元へ)
出典元
https://ex-press.jp/wp-content/uploads/2015/05/LFWS201505_marketwatch.pdf